パン屋は今日も変わらず始まります!
これくらいの長さをこまごまと続けていけたら・・・足りませんよねー
薄っすらと意識が覚醒していく。自分の身体の状況を認識、身動きの出来ない状況だと言う結論になった。
なぜなら。
「むぅ・・・ん」
俺の胸の上で彼女が身動ぎする。小動物のような動きに思わず頬が緩む。頭の撫でてやると、寝ているはずのこの物体から「にひひ」という音が鳴った。
しばらく頭を撫でて遊んでいると彼女の呼吸が変わり、意識が覚醒し始めたのだと当たりが付く。
「おはよう」
まだ焦点も合わず、意識も半ばであろう顔を俺に向けてぼう、としている彼女。頬を手で包んでやると、にへら、という風な顔で挨拶を返してくれる。
「おはよーだんなはまー」
彼女を優しく俺の上から下ろすと、俺はベッドを出て服を見繕う。朝は湯を浴びて仕事をするのが日課だ。
まぁ、朝といっても日はまだ昇っていないが。
ベッドに視線をやると彼女が二度寝を始めるのが見て取れた。崩れたシーツの上で綺麗な肢体が身を捩る様に若干背中がうずくが、構わず風呂場へと足を進めた。本能の向くままは休日のみでいい。
湯から上がり、さっぱりとして一階の仕事場に降りる。
住居が二階、店が一階の一軒家。特に目立たない外観で、治安もそこそこの場所に立つ"それ〟は二十年来の愛着がある。
まずはパンの生地から。
二十年続けてきた作業を、また今日も始める。
フジベーカリーの何気ない始まりの光景だ。