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パン屋は今日も平和です!

すこし長くなってしまいましたが、短文をぽつぽつ書いていこうと思います。

「いらっしゃいませ~」


午後の営業時間になりました。でも、人気メニューはすぐにうりきれです。


「リリーちゃん、何も無いよ~」


店内に近所にすむ建築士のルスリさん(32歳)の悲痛なこえが響きます。


「あとしばらくしたらまた焼けますケド・・・」


「あ、あぁ、大丈夫だよまた来るから!」


わたしが少し困ったふうにいうと、ルスリさんは元気になりました。

ちょろいです。


「あ、あのさ、リリーちゃん」


ルスリさんがかしこまってわたしの正面にたちます。わたしの目を真剣にみつめるルスリさん。


「良かったら今日の夜―――「こ、こんにちわです!!」」


いきおいよくドアを開け、はつらつとした挨拶をしてくれるのはこの町の貴族区に住むアルタイくん(17歳)です。


毎日だんなさまが作ったパンを買っていただいている常連さまでもあり、


「リリーさん!今日こそデートしてください!!」「だめですよ~」



ちょっと色気づいている果敢なおとしごろの男の子でもあります。


「リリーさん!」


「どうしたんですかアルタイくん」


「リリーさん!」


「はいはいですよ?」


「どうしてデートしてくれないんでしょうか・・・?」


すてられた子犬のような目でわたしをみるアルタイくん(17歳)。アルタイくん、きみは成人してもう一年になるんだからそういう態度はよくないぞっ。


といろいろ注意してあげたいのですが、さすがに人さまのお子さんをしかることはわたしには出来ないのでわたしも同じ顔で対抗してみることにします。


「わたしにはだんなさまがいるので・・・」(うるうる)(仮)


アルタイくんが「うっ」といっぽ引いてくれました。ふふっ、これもちょろいです。


「でも―――」


「いい加減にしな坊主」


ここでとつじょとしてルスリさん参戦です。なんとなくはらんの予感がします。


「誰だよ、おっさん」


「おっ!?・・・坊主礼儀が出来てねぇな」


「はぁ?」


「目上に対する態度も、女誘う態度もなっちゃいねぇって言うんだよ。綺麗なべべつけてそれじゃ、程度が知れんぞ」


「あ”?」


まずいです。実にまずいです。どこで対応をまちがえたのでしょうか。このままでははらんが爆発してしまいます。


お店の商品棚のわきには通路があり、その通路はカウンターになっています。ここでパンを買われたお客さまがお茶をたしなみつつしたつづみを打てるようにともうけた場所なのですが、今そちらにおられるお客さまの顔がやや渋くなっているのは気のせいじゃないはずです。あぁ、こめんなさいだんなさま、レイヴさん。


「あ、あのっ」


「そもそもおっさん年考えろよ!北区の娼館ででも女あさっとけばいいじゃねぇか!」


「なっ!?貴族区の人間の癖して言うことが下品だな坊ちゃん!?」


「えっとっ」


「誰が坊ちゃんだ平民!」


「おー、おー、いうに事欠いてそれか。そもそもリリーちゃんの種族考えたら坊主の方が年考えろってんだよ、餓鬼」


「うぅ・・・」










「おい」







ピリッと、その場の空気が馴染み深いものに変わります。すこし気立つ肌は心地のいい気配を纏わって店内を埋め尽くすのですが、慣れ親しんだ私ですら若干固まってしまうのですから目の前の御二人は言い合った姿勢のまま固まってしまうのは仕方の無いことでしょう。



「ん」



私の後ろから鋭い気配を纏いつつ現れたのは『私の』旦那様。旦那様は腕を組みながら顎で壁際にかけられている注意事項を指し示します。言い争っていた御二人は錆付いたドアのような動きでその文字を目に入れました。




『店内ではお静かに』




そして御二人はゆっくりと旦那様に視線を向け、青ざめた顔で、



「「申し訳ありませんでした!!」」


と頭を下げるのでした。流石は旦那様です。解決も一瞬ですね。

御二人が肩を落として店内から出ようとした所で、旦那様が「待て」と呼び止めました。


「「は、いっ!!?」」


一瞬で御二人の後ろへ移動した旦那様が、二つの袋をそれぞれ手渡しました。


「焼き立てだ。後で食べるといい」


「「・・・」」


いまだ目を見開いて旦那様を凝視している御二人。そのお顔には冷や汗がびっしりと。


しかし流石は旦那様、私にも見えませんでした。『視覚では』限界がありますから仕方ありませんですが。


「あとな」


何気ないだんな様の一声。ふとさりげなく、と言う風の口調ですが、被せる気配は地獄の戦場のソレとなんら変わりありません。


「人の物に手を出すのはよくない」


「「はいぃぃぃぃ!!!」」


にこやかに言う旦那様、目が笑っていません。そんな旦那様に気押される形で御二人は出て行きました。ふぅ、迷惑をおかけしてしまいました。・・・・ん?




人のもの・・・




ぼっ




ううううう、私のことですね?私は旦那様の物ですね?ええそうです。そうですとも!


顔を真っ赤にして俯く私のそばに、いつの間にか旦那様が来ていました。


「気にするな」


あたまに手を置かれわしゃわしゃ。きもちいい。さいこう。


「抜けたな」


はいぬけたー。なにが?わかりません~


なでられつつだんなさまを見あげると、やさしげにほほ笑んでくれます。わたしも負けずにほほ笑みかえすよー。にひひ。

だんなさまはわたしのほっぺを包むように撫でます。厚い手の皮がごつごつしてて気持ちがいいです。少しばかりくすぐったくてからだを揺すると、「ふひ」とこえが漏れてしまいました。かわいくないこえがー。


「ごほん」


は、とせき払いの聞こえたほうに目を向けると、レイヴさんがすこし居づらそうに、でも顔をすこし赤くしてカップに口をつけていました。


あぁっ、みられていたんですかっ、ぎゃっ、ぐぇっ。


「うー、だんなさま?」


また頭を撫でてくれただんなさま。みられるよー?

だんなさまはいたずら好きのする笑みを浮かべると一言。







「レイヴ、先ほど茶は飲み終えていたはずだが」


「ラーズ貴様!空気を読むことを知らんのかっ!?」









今日もお店はへいわですよ~。










わたし的に。




















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