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今回は導入編って感じです。

全編通してご都合主義満載なので注意喚起

「シンデレラ……髪」

「はいお姉様っ」


 突然だけど、僕はシンデレラ。え?シンデレラって女の子じゃないの、って?なんでそんなこと知ってるんだか……。

 確かに、シンデレラは女の子ってことになってる。町のみんなや、一応これでも貴族の端くれだから、社交界でもね。けど、実は僕=シンデレラは、男の娘なのだ!え?子の発音が違う?気にしない気にしない☆


 僕が女装して女の子になってる理由は……面倒くさいから飛ばすね!


 え?駄目?


 むー…仕方ないなあ。


 僕が生まれたとき、お母さん――僕の生みの母――は半狂乱になった。「私女の子がほしかったのに!なんで男なの!?」って。それから「まあ顔は可愛いし許されるでしょ☆」と言ってお父様が仕事で忙しいのをいいことに、僕にドレスばかり着せた。お父様が気づいたときにはもう手遅れ。僕が物心ついたころにはドレスに違和感を感じなくなっていたし、むしろフリフリのロリータドレスが大好きだった。

 まぁ……僕が10歳のときに死んだお母さんの最期の言葉が「シンデレラは女の子として生きてね」なんていうふざけたものだったのも、一因かもしれないけど。


 あーダメダメ!暗いのなんて僕には似合わないよ。せっかくこんな美少女なんだからね。


 その後、お父様は自分より10歳下の新しい奥さんを迎えた。正直犯罪だと思うけど、貴族だから仕方ないともいえる。そのお母様には、僕より七ヶ月だけ年上の女の子を連れて家に来た。


 その女の子が、僕がいま髪を整えているお姉様、ナナツ。


 我が家はいちおー貴族の端くれなんだけど、貧乏だから普通の商人の家と全然変わらないレベル。そりゃドレスやアクセサリーはそこそこ多いけど(なんでかって?ご都合主義ってヤツだよ☆)使用人はいない。ナナツお姉様の綺麗な黒髪を整えるのは、僕の仕事なんだ!……まあ、「邪魔」なんて言って、髪をばっさり短く切ってしまうお姉様だから、僕の出番はなかなかないんだけど。


 そう、僕がお姉様を綺麗に整えるのは、こんな舞踏会の日だけなんだ!


「ねえ、僕も舞踏会行きたいよぉ」

「駄目」

「なんで?」

「……駄目」


 あー、お姉様ってば説明が面倒だからって「駄目」のひとことで済まそうとしてる。前はもっとちゃんとした説明をくれたのに。

 本当の女の子じゃない僕が頻繁に舞踏会に顔を出したらバレる危険性があるから、お姉様だけが舞踏会に行くことは割りと多いのだ。それとか、僕がお姉様の髪やドレスを準備していることとかで、僕がお姉様にイジメられてるって噂が多いんだけど、お姉様はあまり気にしていないらしい。


「だから何でってば」

「てめえ口動かす暇あったらさっさと手動かせよコルァ。今回の舞踏会はナルシスト王子の新しい妃を決める役割兼ねてるって言われてんの知ってんだろ。てめえみたいなカマがもし選ばれて男だってばれたらうちは取り潰しだぞそれわかってねんだよな馬鹿が」


 早口でよく聞き取れなかったんだけど、怖いしとりあえず頷いておこう。


「了解しましたー。……お姉様、本当に向こうで素で話しちゃ駄目だからね?」


 お姉様は口が悪い。もともと庶民育ちだからって言い訳もできなくもないんだけど、それを抜きにしても口が悪い。最初に会ったときこの調子でしゃべられて、必死に直そうとしたのはいい思い出だ。……結局無理だったから、無口の仮面をかぶる方向に持っていったんだけど。


「ん」

「よし。ほら、この花をさして……できたよ!」


 生花を髪にさすのが今の流行だ。一輪だけ真紅のバラを髪にさす。ずっと前からこの日のために選んできたドレスは、赤色に白いレースをつけて、クールビューティの中に清楚さを取り入れた。ほら、お姉様はまだ未婚だからね。


「馬車は前に準備してあるから。じゃあ、行ってらっしゃい!」

「ん」


 お姉様は小さく頷いて立ち上がる。ほんと僕を置いていっちゃうだなあと思うとちょっとしんみりした気持ちになった。


「シンデレラ」


「何?」


「行く?……男なら」


 男の格好なら一緒に行ってもいいよ、ってことだ。僕は笑顔で答えた。


「やっぱりいいや☆」


 笑顔の裏で、どうやって舞踏会への足と招待状を準備するかなあ、なんて考えながら。


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