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影雄譚  作者: 今日仰日ゞ
僕は『僕』へと離脱し書物(?)と出会う
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ネタです。

くだらない。

 実にくだらない。

ここからの数スクロールは、むさ苦しい男の戦いの話で、アホらしくも全力で挑む伝説の物語である。

いや、伝説もへったくれもないのだが。

「…着いたぜ」

「…到着」

 仲成とカザカザは静かにそう言った。

「これから俺達は、死ぬかもしれない…それでも行く勇気があるか!!悔いは残らないか!!」

「うむ!!」

「…正直言って勇気も悔いもスッカスカなのは僕だけかな…?」

 ノリでついて来てしまった…。

「んだよ、ここまで来てそんなこと言うのかぁ?俺達は男だ!!それでいいだろ!!」

 実は僕がその書物、別に隠す必要も無いな、僕がエロ本を瞬時に買いに行くことは凄く簡単なことなのだ。

 何を隠そう僕は、人間を離脱できるのだから。

 もし僕が『離脱』ではなく宛の『善の後遺症』だったなら、かなり至難の業だっただろう。

 隠れて買う事は少なくとも正しくはないのだから。

 正義ではないのだから。

「もう諦めろよ。一発やっちまおうぜ!!」

「…先輩、見てるっスよ…」

おう、イミメランを忘れていたぜ。今は(後輩)か。

「頑張ってください!!」

 あ、応援してくれんだ…。

「もういつまでたっても始められねぇだろ!?さっさと行くぞ!!」

「出陣!」

 行ってしまった。

 …僕も行くのか…。

 店内に入ると当たり前のようにズラッと本が並べられている。

 こうしてじっくり見てみると、色々な本があるんだな。

 仲成とカザカザは姿勢を低くして、まるで避難訓練をしている様な体制で進んでいる。

 逆に目立たないか…?それ。

 僕は店内をウロウロしていると、いきなり、

「先輩!!ありやしたぜ!!」

 目の前にイミメラン(後輩)が手をかざして立っていた。

 ってことは、僕は今人間から離脱しているのか?

 そう思っていると、

「あ、心配しないでください!今は目野前先輩の空想としてこの世界に表示されているので、先輩にしか見えないっス!!」

 …便利だなぁ、空想人。

「で、何が?」

 僕は一応分かっていたのだが、聞いてみた。

「何って、そりゃあエロ本っスよ」

「そう、ですか…」

 そういうことは全く気にしない性格らしい。

「何処にあるんだ?」

 聞く僕も相当な馬鹿だ。

「この先の本棚を右に曲がってそのまま真っ直ぐっス!!」

「おし」

 何が「おし」だか自分で言っていても分からない。

 僕はイミメランの言った通り、目前の本棚を右に曲がり、そしてそのまま真っ直ぐ進んだ。

 するとそこには既にお二人さんが。

 おお仕事が早い早い。

「どうしたんだよ。買わないのか?」

 仲成とカザカザは姿勢を低くしたまま立ち尽くしていた。

 冷や汗が一筋流れ出る。

「…そういうことかよ」

 何と僕達の目的のコーナーの前にある、ライトノベルのコーナーに甘噛がいたのだ。

「どうする…見つからずにどうやって進む…?」

「無念…」

 回って、反対方向から進むという道もあるが、その場合どうしてもレジを通らなくてはならなくなり、それ以外になると、甘噛の目の先を通ることとなる。

 絶体絶命。

 いや、別に買わなきゃいい話なのだが。

「くそっ!!こんなの予想外だ!!甘噛がライトノベルを読んでいるなんて!!」

 あ、そこ?

「何か…作戦は…」

 買うなよ。

 と思いつつも、何度も言うように僕も男だ。

 一般的な変態度は普通に持っているわけであり、報酬と契約している以上、逃げ出すことができないのだ。

「…儂が囮となる…だから逝け!!」

 逝くなよ。せめて行ってくれ。

「か、カザカザァァァァァァァァ!!お、お前が一番欲しいハズなのに…チクショォォォォ!!!」

 仲成の涙と一緒に、カザカザのスキンヘッドが光る。

 たかがエロ本一つでここまで熱くなれるのか、この二人は。

 少し尊敬するぜ。

「では…参る!!」

「俺達も行くぜ!!カザカザの犠牲を無駄にしてはならない!!」

 僕達は遠回りをし、レジではない、甘噛の目の前に来てしまうルートを目指した。

 そこまではほんの数十秒。しかしそこからである。

「お、カザさん、カザさん、も、買、い物ー?」

 やっぱり日本語の区切りの仕方がおかしいよ。

 せめて丁寧語なのかタメ語なのかはっきりしてほしい。

「うむ、そう…だ……」

 僕達の方をチラチラ見てくる。

「早く行け!」という事らしい。

 確かに、いくら本棚で遮られているとしても、本棚が低いならな、背を伸ばせば普通にバレてしまう。

「何、を買いに来、たんです、かー?」

「ああ、ちょっと…」

 ヤバイ、会話がもはや切れそうだ。

「早く行こうぜ」

「ああ、そうだな」

 僕が呼びかけ、仲成が反応する。

 少し姿勢を低めに、ささっと。

 イメージは忍者である。

 まぁそんなに長い道でもないのだから、五秒を待たずに辿り着く。

「ちょっとって、何か、なー」

「その、それは…」

 もうやべぇじゃねえか。早く切り上げろよ。

「んー。カザさんは何、か一人で本、屋さんに来るよう、なイ、メージじゃなかったんだけ、どな、ということは『めのまん』と『なかちゃん』もい、るのかなぁー」

 もうバレてんじゃねぇか。

 キョロキョロと辺りを見回す甘噛。

 今はよく分からないあだ名はそっちのけである。

 僕達は必死で息を殺す。

 …後からよくよく考えてみると、書店は騒がしいのだ。別に息を殺す必要も無い。

「どうする…、このまましゃがんでいても変な奴らと思われて見つかるだろう」

「…奥の手だ」

 と言った瞬間に、

 ズドドドドドドと砂埃を立てて仲成は走っていった。

 仲成の必殺技。

 逃げ足ダッシュ。

 名付け親、僕。

 見つからなかったらしく、甘噛に異変はない。

 僕もそれに続き、走る。

 ついに、ついに城へ辿り着いた!

 僕達の目指した伝説の城。

「ブツは手に入れた!!あとはここからズラかるだけだ!!!」

 んな泥棒みたいな。

「それなら急いで離れるぞ。いつまでもカザカザが耐えられるとは思えないしな」

 あの会話だとあと三十秒といったところである。

 しかし、

「後は…任せた…」

 カザカザは、力尽きたようにバタンとうつ伏せに倒れた。

「南…無三……」

 …何で…?

「おい…カザカザ倒れちゃったよ。どうすんだよ」

 汗が一滴、額から垂れる。

「囮がいないままここを離れるのは厄介だ!!くそぉ!!俺はカザカザの死を無駄にしちまうのかぁぁぁぁぁ!!!!!」

 死んでねぇよ。

「あ、れぇ、カザさんカザさん?おー、い、もしかして気、を失って、る?」

 一つのチャンスが生まれた。

 甘噛がカザカザに目が行ったのだ。

「今だ!今のうちに逃げるぞ!!」

「おう!」

 僕の掛け声で、書物を抱きしめながら僕と仲成は走り出す。

 ダダダダダダダ。

 音を鳴らしすぎたのだ。

「お、なかちゃん、もいるのじゃ、ないで、すかー」

「うぐっ!!!」

 仲成が見つかった!生き残りは僕だけだ!!

 僕はどうやら仲成の影に隠れて見えなかったようだ。

「後は…任せた…」

 カザカザと同じセリフを吐くな。

 すっと、甘噛の死角になっている僕に書物を預け、そして…。

「ぐっ…」

 バタッと仰向けに倒れた。

 うん…だから何で…?

 ていうか倒れたことによって僕が丸見えになるんだけど。

 バレるんだけど。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 僕は滑り込み、地面を滑った。

 傍から見れば僕は相当変なことをやっているんだろう。

 だが気にせん!!

 これが僕の使命なのだから!

 一体何処の何が僕の使命なのやら…。

「よし!!甘噛を抜ければ後は何とかなる!!いや、何とかする!!」

 ここで、プロローグの大事な伏線を使ってしまった。

 使い回しは聞かないかな?

「…なかちゃんがい、るのな、ら絶対にめのまんもい、るよねー、何処か、なー?」

 女の勘というのは恐ろしい。

 汗で昨日から着ている制服がぐしょぐしょだ。

 臭うだろ。絶対。

「んー何処、ですか、ねー」

 甘噛が周りをさっきよりも念入りに見回す。そんなに僕を見つけたいか?

「何、か今見、つけな、いと変、なことしてる気が、する、んだよ、なー」

 怖いよ。

 このままでは見つかるのは時間の問題だ。

 余計に難解になった。

 ミッション~伝説の書物を手に入れろ!!

条件

・甘噛に見つからない。

・運河が行っている処理場を通過しない。

 …無理ゲーじゃないっすかね…。

「くっ、僕一人じゃ、僕一人じゃ…」

 気のせいか、どんどんこの先使っていくべき言葉を浪費している気がする。

「オイラがいるじゃないっスか!」

「!!」

 頭の中からイミメランの声が聞こえた。

 そうだ、忘れていた…。僕には…こんなにも頼りになる仲間がいる!!!

「もうこれで……∂¶♪〆§∉∴⊆……あれ?…その…目野前さん?」

 嗚呼ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!

 希望が消えた。

 消失した。

 人格が変わってしまった。

 (優)になってしまった。

 絶対エロ本とか許してくれないだろう。

「えっと…その…あのな…えっと…」

 言い訳が思いつかない。

「おーい、まのまんーいるの、は分、かって、いるの、だー何処だー」

 こうしている間にも甘噛は迫る。

 いい加減口調を安定させてくれ。

 絶体絶命。

 カオス。

 \(^ω^)/

「いいか!イミメラン!よく聞け!!」

「はい!」

「今、僕は漫画が買いたい!しかァし!僕の近くには、漫画が嫌いで、存在全てを消し去ってやろうという大悪党がいる!しかもこの前戦ったゾンビ以上の実力だ!僕はその目に見つからずに、その漫画を買わなければならないミッションを受けたんだ!頼む!協力してくれ!」

「はい!」

 素直な子で本当に良かった。

「で、おいらは…その…具体的に何をすればいいんですか?」

「その僕の敵は姿を変える、今は僕の友達の甘噛という女の子に化けている!」

「それは…その…どんな顔ですか?」

「全力で想像するから、僕の空想の世界で見てくれ」

「……………はい!確認出来ました!……でも、何故か周りが…その…ピンク色なんですけど…」

「気のせいだ!」

「はい!」

 素直な子で本当に良かった。

「そんじゃ、そいつが今どこにいるのか教えてくれ」

「……今は、この近くにはいないですね。…その…もう二メートルほどなら動いても安全です」

 正確すぎる情報、ありがとうございます。

 僕はイミメランの言ったことを信じ、前へ進んだ。

 イミメランの言った通り、甘噛は遠くの参考書のコーナーにいた。

 僕がそのコーナーに行く日ははたして来るのだろうか?

 僕は油断していた。

 僕は甘噛に遠いが、一番近い地点に行った瞬間、ピクっと甘噛の耳が反応し、いきなり振り向いたのだ。

「あれ…?あれ、あれあれ?めのまん?」

 バレました。

「ぐぁ!…しゃあねぇ!!このまま走る!!」

 秘技、逃げ足ダッシュ。

 ダダダダダダダダ。

「へ、ちょ、いちょい。めのまーん?」

 無視だ!このままレジへ!!今はおっさんだ!今なら買えるんだ!!!!

「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 運が悪い。

 運が悪かった。

 僕はレジに着いた。レジには着いたのだ。

 しかしそれをまるで知っていたかのようにレジが運河に明け渡される。

 交代したのだ。

「あれ、目野前さん。奇遇ですね、こんなところで会うなんて。実は私、ここでアルバイトをしているのです」

 知ってます。だから避けようとしたんだよ。

「何、で逃、げんの、めのまーん?」

 チェックメイト。

 詰み。

 エンド。

 終わった…。


僕は、気が付いたら生き返っていた仲成とカザカザと共に店内を出た。

僕は適当に言い訳をして、エロ本を見られないように、二人から離れ、そっと棚へ戻し帰ったのだ。

僕達は近くにあるベンチに仲良く並んで座っている。

カザカザは、

「すまない…本当にすまない…」

 と、頭を下げ、

 仲成は

「お前のせいじゃないさ。俺が…もっと頑張っていれば…」

 と、涙を流す。

 僕は、

「…一体僕は何をやっていたんだ…」

 と、頭を抱えた。

 マジで何をやっているんだ僕は。

 空気に飲まれてしまった…。

「やっぱり…ダメなのか………」

 仲成がキャラに合わず、絶望していた。

 甘噛はもう帰っただろう。

 だが、レジをしているのは運河。

 たとえエロ本をゲットすることが出来てもレジで止まってしまうのだ。

「別のレジっつっても見えるしな…」

 仲成がさらに絶望した。

 だから買わなきゃいいのに。

 一度は飲まれてしまったが、吐き出させてきたのだ。

 帰ってきたよ。狂気から正気に。

「じゃ…僕はこれで…」

「おおい!!何さりげなく帰ろうとしてんだよ!まだ俺達の闘いは終わってねぇだろ!!」

 仲成が唾を出しながら叫んだ。

「はぁ、ほい」

 僕は一つため息をして、仲成とカザカザにある物を渡す。

「な!これは…!一体どうやって!」

 カザカザが驚愕していた。

 それもそうだろう。

 僕が二人に渡したのは、手に入るはずだった伝説の書物、即ちエロ本だったからだ。

「どうしてお前がそれを持ってるんだ。まさか万引きか…?」

「んな訳ねぇだろ。実はな―」

 あの後、僕が終わったと確信した後、また奇跡が起こったのだ。

「先輩!作戦はどうでしたか!!」

 イミメラン(後輩)は目覚めたのである。

 だから僕は小声で、

「見つかった…。僕は一度、この本を元の棚に戻すから、その後、僕が動かない内にカタチを使って表現して、この運河という女子ではないレジで買ってくれ」

「ラジャーッス!!」

 という経緯があったわけである。

「―あの店に、たまたま知り合いがいたんだよ」

「何だと!?あの場所には我々以外の仲間がいたのか!?」

 まさか本当の事を言える訳もなく、あやふやに説明した。

「ナイスプレイ!!よくやった!これから現も俺達の変態戦友なかまだ!!」

 今、変態戦友と書いてなかまと読まなかったか…?

「俺達は元々仲間だろ?」

 仲間と書いてなかまと読む方のな。

「ああ、そうだ!しかしこれからは変態戦友と書いて…」

 やっぱ書いてたんかい!!

「有難う。礼を言う」

 何か素直に喜べねぇなぁ。

「そうだ、報酬は…」

「あ、やっぱそれいいや」

 僕は断ったんだ。

「何でだよ。今回一番働いてくれたのは現何だよ。受け取る価値がある」

「いや…何かな…僕…よくよく考えてみたらさぁ、アレなんだよ。それを受け取ってから一体どうすればいいのか分からねぇんだ」

 ぶっちゃけ、イミメラン(優)にバレるのが怖い。

 女の勘は鋭いのだ。

「…?そんなのは読めばいいと思うけど…分かった。いらないなら無理に受け取らなくていいよ」

 どうにも腑に落ちないようだったが何とか納得してくれた。

 

かくして、僕達の闘いは終止符を打ったのだった。

 やっぱりどうでもいい。

 ガチでどうでもいい。

 今回はまぁ、知り合いにはご用心ってことで。

 意外と自分のことは知られているものですよ?


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