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僕は宛とメールアドレスを交換し、家に帰った。
時計を見ると九時を回っていた。
外は真っ暗。
僕はテレビでも見ようかと、テレビの前にあるソファーに座り、リモコンのボタンを押した。
「こ…こんな物がここにあったんですか…」
後ろから聞き覚えのある細く高い声が聞こえた。
僕は後ろを向く。
「………………わはゎあ!!」
イミメランが僕の携帯ゲームで遊んでいた。
「…何やってんの?」
「あわ!すいませんすいません!!つい面白そうな物があって…」
慌てて電源を切り、そっと僕の前にゲーム機を置く。
「…ちゃんと説明してくれないか?君のこと」
「あ、はい…その…分かりました!」
イミメランは立ち上がり、僕の前に来た。
何故か僕も姿勢を正して綺麗に座る。
「おいら達は空想人といって、人々の空想が生み出した空想世界に暮らす種族なんです。…その…何故かおいらはこの世界に来てしまったのですが…おいら達はこの姿では空想の中でしか生きられないんです。…その…少しだけなら現実に居られるのですが、ほんの少しです。…だからおいらはあなたの空想の中に避難したんです。でも『あの場所』なら心配無かったんですけどね」
「何となくは分かった。じゃあその…『あの場所』とは、何なんだ?」
「…その…あの場所は…“世界の中心”です」
「…世界の中心……?」
「はい、どうやら…その…おいらがここにたどり着いて、…その…おいらが何ともなかったのは、多分あれが中心だったからだと思います…はい」
「じゃあ、僕の空想に避難した意味は…」
「はい、はっきり言ってありません」
…その…とか言ってくれないんだ。
「理由は…その…世界の中心はいくつかあるんですけど…その…その一つで、ある意味空想の一種だからです」
「ん?どうゆう意味だ?」
「あなたはあの場所に何が見えましたか?」
僕はすぐに彼女が何を言っているのかを理解した。
「…僕には…神社に見えた…」
「おいらには小さな可愛らしい赤屋根の小屋に見えました」
どうやら僕の疑問は解決したようだった。
僕が願ったのは『世界の中心』
それは見る人によって姿を変える。
僕はその世界の中心しよって何らかの理由で『僕』になる事を許された。
「…そうゆうことか…」
完全に謎が解けた、とは言えない。だが今、僕の目の前にいる“非人類”を見る限り、それを信じないとも、
言えない。
言えないのだ。
「…てことは、一つ矛盾が出たんだが、何故イミメランはここにずっといられるんだ?」
空想人が現実に居られる時間はほんのわずかならば、十五分以上居るイミメランは何故存在していられるのだ。
「それは…その…簡単ですよ…その…あなたが普通じゃないからです」
「普通じゃない?」
そりゃあ確かに僕は人間から離脱できる新生物だけども、今僕は人間…じゃない…?
気が付くと僕は人間から離脱していて、『僕』と言う名の固有生物になっていた。
「あなたの『表現能力』を…その…使わせて貰いました」
「それは不可能だ」
仮に今、イミメランは僕の僕自身の表現方法、通称『カタチ』を使ってここに立っているとして、それはイミメランが僕そのものということになる。
「おいらはまだ現時点で…その…あなたの空想の中に住んでいることになっています。…その…つまり今おいらはあなたの…その…空想なのです」
「むむ、そうなのか?」
「ええ、そうなのです」
僕の空想、それは僕自身だ。
僕自身であればカタチになれる。
「誰か個人の空想の中に入ると…その…その人に多少影響されて…その…しまうのですが、この際仕方がないです。…その…しばらくあなたの空想の中に住ませていただきます」
「分かった、僕の名前は目野前 現だ」
「はい、おいらの名前はイラメラ・ソノ・イミメランです」
それにしても性格にしては似合わない一人称だなぁ。何か『おいら』ってもっと元気のある人が使うものだと思ってたけども…。
「と、いうことでよろしくっス!!目野前先輩!!」
そうそう、こうゆうタイプの人が、
って、え?
「いやぁぁ~もしオイラが目野前先輩に追い出されてでもしたら即死っスよぉ」
「…どちら様?」
「おおっと、申し遅れました!!オイラはイミメランのもう一つの人格、つまりは多重人格っスね!!」
多重人格なんですか、イミメランさん。
「やっと(優)の方のオイラが緊張をといてくれてやっと出てこれました!!ほほぅ、オイラ現実へ来たの初めてっス!!」
仲成と気が合いそうなテンションである。
「何で僕のことを先輩って呼ぶんだよ」
「そりゃあ、まぁ、現実の先行者って事で!」
僕は現実の先行者なのか?
「というかそろそろ僕も人間に戻りたいんだけどさぁ、僕、『僕』の時何も触れないんだ。力が強すぎて、僕もう寝たい時間なんだけど、戻ってくれる?」
「え?まだ二時じゃないスかぁ!おやつの時間もまだっスよ!!」
午前二時だけどな。
「頼む、僕を寝かせてくれ…」
「しゃーないっスねぇ、分かりましたよ」
イミメランは半透明になりさっきと同じように僕の中へ入っていった。
「…………………………………………………………眠い………………………………」
眠かった。




