3
「おい、おい!!現!」
「……ごぉ!!…ここは?」
気が付くと僕はベッドで寝ていた。
「保健室だ。初めて見たよな、俺もだよ。いやぁいきなり入学二日目で保健室とはな、現もついてねぇなぁ」
どうやらここは保険室のようだ。目の前で呆れ顔をしているのは仲成だった。
「え…僕気絶してたのか?」
「いやぁほんっと!豪快に吹っ飛んだな!ちょっと俺笑っちまったよあはははは!!」
腹立つなぁ、コイツ。
「一体何を言ったんだよ。なんだ?初対面でスリーサイズでも聞いたのか?アイツはしぶといぞぉ、結局俺も聞き出せずに裏回ったかんな」
どうやら僕は、女子生徒のスリーサイズ聞きたさに裏回る奴と仲間になったらしかった。
まさか中二の時じゃないだろうな。
「あん時は全治三ヶ月だったぜ」
やっぱりシバかれてんじゃねぇか!!フルボッコにされてんじゃねぇか!!よく聞いたな仲成さんよぉ!!
もしかすると仲成が高校への進学が危うかった原因はこんなことばっかりやってて病院通いだったからではないだろうか?
「今、何時間目だ?」
「えっとなー、三時間目終了後の準備時間だな。あと五分で終るぜ」
三時間目!?どんだけ気絶してたんだよ僕!?
「そろそろ俺は行くかんな。次は数学だ。急げよ」
「へいへい」
「んじゃなー」
仲成は保健室を出た。
どうしようか、あれじゃあまともに話を聞いてくれる気がしない。もう顔面を殴られるのは御免だ。
「うーんしゃーないなー…」
僕はポケットの中からメモ帳を取り出し、宛を呼び出す魔法の言葉を書いた。
さてその言葉とは!?はっはっは。
僕は教室に戻る。
宛は爆睡していた。ふう、良かった…。
僕は保健室で書いたメモを一枚そっと彼女の机の中に入れる。
これでよし。後は放課後まで待つだけだ。
まさか授業中に僕をぶん殴ることはないだろう。
ちなみに、何故この少女、宛が爆睡していても全く気付かれないのは、カクンカクンと頭が傾き、まるで頷いているような風になっているからだ。
横から丸見えなんだよなぁ。
「現、どうせ一緒に食う奴いないよな!!俺が一緒に食ってやるよ!!がはははは!!」
余計なお世話だ。仲成だっていないだろ。
午前の授業が終わり、昼休みに入った。
中学生の時は給食だったからな。以外とこういうのに憧れてたりするんだ。ムフフ。
つかお前が食ってるやつ、なんだそれは。
「何…それ」
マジで何コレ…、三角柱型で、赤色の…。
「ああ、これ?これはなぁ、家の仕事が食品関係をやっててな!!これ新商品なんだ!!」
「うん、はっきり言っていい?すんげぇ不味そう」
「うお!!はっきり言うなぁ、お前も食ってみろよ!美味いから!!」
ドン!と僕の机に直で置いた。
「いや、うん。仮に美味いとしてもその見た目はないと思う…」
見た目
三角柱
赤
青いツブツブ。
不快ったらありゃしないわ。
「いいから!!美味いんだって!!!絶対!俺が誓うから!!」
「…そこまで言うなら…じゃあ…」
僕はその謎の食べ物を口に入れる。
サクッ、外はサクサクで、中はふわっとしていて正直言って…
「う…美味い!」
「だろ?だから言っただろ?」
「でも…なんだ?この味…?変わった味だな…」
初めて食べる味だな。イチゴ味とかバナナ味とか、そんな感じはしないなぁ。
「ああ、それ石油味」
「ぶえぇえぇぇえぇぇえぇ!!!!!」
僕は嘔吐した。あるいはリバース。
石油!?そりゃ食ったことないわなぁ!!食うものじゃないもん!!いや普通に不味いよ!え?僕味覚おかしくなったのかな!?
「ぐ…ち、ちなみにお前が食ってんのは…?」
「ん?俺?俺はチョコレート味だけど」
仲成…僕の体調が戻ったら絶対殺してやる!!待ってろ!!!
まぁ、チキンな僕だから当然そんなことはできないわけなのだが。
「名前はなんて言うんだ?」
「んーまだ決まってないんだよなぁ、そうだ!現!決めてくんねぇ?」
そういう大事なことを僕が決めて良いのだろうか?
んん、それじゃあ…
「『DANGEROUS PETROLEUM』ってのは?」
「き…危険な石油て、現、トラウマになってんだろ」
お前がこんなもん食わすからだろ。
「てか、これ発売すんのか?石油、原油味って」
「いやまだ正式には決まってないんだけどな」
「これを考えた人は実際に食ったのか?」
「おう、食ったらしいぞ。めっちゃ美味いって叫んでたって父ちゃん言ってた!」
随分と偏った味覚の持ち主らしい。
発狂でないことをせめて祈っておこう。
「で、名前だけど、何がいい?」
「ん、ええと…」
「お?何の、話ー?」
ポニーテイルのやけにフラフラした少女が僕達に話しかけてきた。
日本語の区切りがおかしい。
「ん?お前は確か…甘噛瑠羅ちゃん?」
いきなりちゃん付かよ。
「どうもー、初めましてで、すね、甘噛瑠羅と、言いますよー、えっとー、横にいるーのがー…あれ?」
「ちょっと待ってくださいよ甘噛さん!」
眼鏡をかけた、ストレートパーマの少女が甘噛瑠羅を追いかけて走ってきた。
綺麗に光った髪がふさふさと揺れる。
「そうそう、この、子が運河流ちゃんなん、だー」
「ほんっと凄いですね、いきなり飛び込めて、ほんと凄いですね。あ、初めまして、私は運河流と申します。では、甘噛さんのことをよろしくお願いしますね」
そう言って教室から出てしまった。
「あー行っちゃった、ね、ごめん、ね、あの子ー、真面目すぎ、て多分あっしの邪魔をーしないように、と思ったんだと、思うよー」
一人称、『あっし』なんだ…。
「そうなのか!!真面目キャラ?おお?俺の好みだ!」
しらんがな。
「そうだそうだ、なんで甘噛さんはここに来たんだ?」
と僕が問うと、
「いやぁ楽し、そうたったか、らですよー、邪魔でしたか?」
「いや全然!!いや俺も思ってたんだよ!!こんな無口な奴と飯食うのもなんかなぁって!!」
「そう思ってたのか、じゃあ僕の役目は終わったな。じゃあな」
「ちょっちょっちょい!!待て待て、悪かったよ、ここでいる仲間、現とあと一人しかいねぇんだ!しかも男子!」
「ちなみに誰だ?そいつは」
「ちょうどあそこで座禅してる奴だよ!!ほらあそこ!」
仲成が指を指した方向を見ると、机の上で座禅をしている男子が一人、スキンヘッドの奴だ。
なんだろう、神社とかお寺とかその辺の人なのかな。
「おーい!カザカザー、おーい!」
仲成が何度も言ってもウンともスンとも言わない。なんだ?寝てんのか?
「ちょっと行ってみようぜ、僕も少し気になるし」
「あっしも行き、ますよー」
僕達はそのカザカザという奴に近づき話しかけることにした。
「おい、おい」
やはり何度言っても返事はしない。なんかその仏教的なことをやっているのだろうか?
「…」
カザカザは薄目を少し開け、チラッと甘噛の方を見た。
すると、
「…パンツが…見たい」
「うりゃ!」
ドスの効いたいい声だったが、つかさず僕はそのカザカザという名の変態に飛び膝蹴りを食らわす。宛の時にやられたようにな!
いっや~迷いは全く、全く迷いはなかったよ。
しかしガシッと僕の膝は掴まれてしまった。
「…儂はお前のような男…いや全ての男子になど興味はない!!!」
カッコよく言われても!!目とかキラーンってなったけども!!カッコ悪っ!!!
「え、何コイツ」
「見ての通り変態だ」
「どうやって仲良くなったんだよ」
「エロ本を一つコイツにあげた」
ああ、納得。
僕は自分のカバンの中にあったエロ本を一冊コイツにあげた。
「そもそも何で現のカバンん中にエロ本が入ってるんだよ」
仲成のツッコミは無視と。
取り出したエロ本をすっとカザカザに差し出すと、キランと目が光った。
よく目が光るやつだ。
バサッと奪うように僕の手から離し、それをペラペラとめくる。
「こ…これは…!何と!!おほう!」
どうやら興奮しているようで、一人でニヤニヤしている。
今までのポーカーフェイスは何のことやら。
「し…失礼した!儂の名は韜鏖飌という!!」
ゆぶくろみなごろし…こんな苗字が存在(今ここに存在してんスけどね)するのか、スゲェ名前だな。
韜鏖…さん?ものすんげぇ長いな、よし!僕もカザカザと呼ぼう!
「な?これで友達設定完了だ」
「生まれて初めてだ、エロ本あげて友達になった奴…」
「そうだろうなぁ、流石の俺でも当時手間取ったぜ」
うん、それは分かる。とても分かる。
何故か心なしか仲成のテンションが落ちているのはそのせいか。
と、思っていたら、
「がははは!確かにやっぱ下着とかって干してあるやつ見てもそんなに興奮しないよな!」
「うむ、履いていることに意味があるのだ…」
違いました。
全然違いました。
どうやらバリッバリ話が合うようです。変態的な方で。
「あれ?目野前、は、参加しな、いんです、か?」
「いや、なんか参加しにくい空気があって…」
大声で凄いことをワッショイワッショイと叫んでいる奴の中に飛び込む。おそらくドロッドロのコンクリートの中に飛び込むのと同じくらいの難易度だろうな。
「…ん?あれ?あれって…運河さん?」
ゆっくり、ゆっくりと弁当を持って運河が僕達の方へ来た。
「おお?俺の好み!」
「いや、ええと…あのやっぱり一緒に食べる人がいないのでご一緒しても宜しいですか?」
「はい、良いですよ」
僕が笑顔で言うと、「ありがとう御座います」と言って僕の隣に座る。
「この子ですね、若干寂しがり屋なん、ですよ~」
「マジで!?なおさら俺の好み…」
「うるさい」
また仲成だうるさかったので、途中でシャットアウトした。
「いいじゃねぇかあ、好みくらい言わせてくれよぉぉぉぉ!!!」
このように、僕に友達が三人増えました。友達…だよな?ね。
ちなみにあの食品の名前は『ザ・ピラミッド』になったらしい。




