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影雄譚  作者: 今日仰日ゞ
エピローグ
15/15

2--END--

やっと終わりますよε-(´∀`; )

 黙考してしまうと時間というのは早く進むもので、一週間ぶりの学校はすぐ終わってしまった。

 くそっ。学力が無いから出席日数で稼ごうと思ったのに…。

 ところでイミメランはその後どうなったのだろうか?

 夢魔は消えたと思っていたが、もうそっちも用済み、になってしまったのだろうか?

 そんな事を考えながらの帰宅。

 当然気分がいい訳がない。

 僕はリビングでボーっとしていた。

「とりあえずは部屋にいくか…」

 僕は自室へ。

 すると僕の机に一枚の紙が置かれていた。

 手紙ではない。

 それは、ある番号だった。

 電話番号。

 携帯の電話番号だった。

 僕はイスに座り、その番号を携帯に打ち込み電話を掛けてみる。

 プルルルル。プルルルル。カチャ。

「もしもし、運河流です」

「フルネームまでキッチリ言うのは運河らしいな」

「どちら様ですか…?」

「ああ、ごめん、こちら目野前」

「ふふふ。知ってましたよ。しかし名を名乗らないのは感心しないですね」

「…すいません」

正論だった。

「運河さんと韜鏖さんの件ですね」

「いや、それ以外にも色々聞きたいことがある」

「端から聞きますよ」

 じゃあまずは記憶についてだ。

「記憶…失ってるんだよな」

「はい。世界の中心が行ったのです」

「それはあれか?『もうこいつらは役に立たん。能力と記憶は消しとこう』みたいなやつか?」

「いいえ。まず能力は消えません」

「え、なんで」

「それは分かりませんね…。でもまぁ、世界の中心にも出来ないことはあるってことですね。あと、役に立たないから記憶を消したのではありませんよ」

「そうなのか?」

「実は私は世界の中心から『幽霊』以外の能力も植え付けられたのです」

 二つ?

 幽霊の他に何か持っているのか?

「私、“世界の中心との交信”が出来るんです」

「交信…まさかお前…手紙の……」

「はい、私が手紙の主です」

そうだったのか。

 じゃあ幽霊になるのはそれを伝える手段としてのものなのかな。

 ほら、すり抜けたりできるから。

「じゃあどうして僕達が手紙で、甘噛がメールだったのは、単にメアドを交換していないからっていう理由で…」

「はい、そうですよ」

 雑!

 雑よ!!

「でもここ以外にだって僕達みたいな人達はいるだろ?まさかその人達にも伝えてるって事はないよな」

「はい。それはないです。多分私のような人物が沢山いるんでしょう」

「ああ、なるほど」

「それで話を戻すと、甘噛さんと韜鏖さんは自分から申し出たんですよ」

「自分から…?」

「ええ、『もうあっし達、の役目は終わ、りだよ。あっし達二、人分はも、うめのまんとあった、んに任せられ、るよ』って」

「そんな事を言ってたのか…」

 何だよ、共に戦おうとか無いのかよ…。

「つまり、甘噛とカザカザは自ら記憶を運河に消してもらったって事になるのか」

「正確には、私が世界の中心にお願いしたんですけどね」

「で、次なんだが、何で転校なんかしたんだよ」

 運河は突然、忽然と当然のように転校してしまった。

「それは、東土龍の件なんですよ」

「悪いな…僕が逃がさなかったら…」

「だから、ちゃんと東 土龍は死んでますよ」

「いやでも死んでたら逃したりはしねぇよ。人間、死んだら動けねぇだろ」

「東土龍は人間じゃないですよ」

「マジ!?」

「あんな化物みたいな奴が人間な訳ないじゃないですか」

 電話の奥で笑い声が聞こえた。

「いや…それなら僕らも…」

「あ、違います違います。東土龍は世界の中心の力を借りずに『悪の現在進行形』を持っているんです」

「ってことは生まれつき?」

「はい、東土龍はヒト科の悪間といいます」

「マジか…」

「悪間、何だか中ニくさいですよね」

「確かに」

「悪間は悪を失うと死ぬんです」

 ってことは、僕があの時見たシルエットは東土龍の悪の塊ということなのか。

 じゃあ宛は『善』として『悪』を滅殺したってことか。

「でも、悪間は悪を失い、死亡すると、人間が幽霊なにるかのごとく、ダンピールが吸血鬼になるかのごとく、『神奇』になるんです」

 神奇、確か不思議という意味があったはずだが。

「神奇は、少し地底人と似ているところがありましてね。空間を掘るんです」

「空間を…?」

「ええ、悪間は悪を失うと、生命意義がなくなります。するとこの世界を漁りだすんです」

「何でそんなことすんだよ」

 意味が無いだろう。

「それは…分かりません。ほら、人間だっておかしな行動はとるでしょう?おそらく生きる意味を失った植物人間状態なんじゃないですかね」

「ふぅん…」

「生き物じゃないですけどね」

「ああ!?」

 なんだよ!さっきから運河の言っていることがまるで分んねぇよ!チンプンカンプンだよ!!

「生きてるんだろう?」

「はい」

「じゃあ生き物なんだろう?」

「いいえ」

「何故!?」

「そうですね。確かに分かりにくいかもしれません。これからの戦いにも関わるので教えます。目野前さん、『感情』って分かります?」

「ん?ああ、分かるけど…それがどうした?」

「私たちの感情と悪間、これは同じものなんです」

「どういうことだよ!はっきり説明してくれよ」

「目野前さん。感情、たとえば怒り。これ、たまに暴走してしまう事、無いですか?」

「小学生の頃はよくやったな」

「それが感情の“生きる”という事なんです」

「生きるって…。感情は生き物じゃねぇよ」

「それです。生き物じゃない。それを私たちは『非生物』と呼んでいます」

「非生物…あれ?じゃあ僕の表現生物って…」

「気付きましたね。あなたの力は『非生物になる』能力なんです!」

 僕は散々新生物とか言ってきたが、正確には生物ですらなかったんだな。

 人間離脱ってよりは生物離脱ってとこか。

「じゃあ僕、僕そのものが『異状』なのか!?」

「ええ、実は、目野前さんは世界の中心によって作られていないんです」

 ちょっと待てよ。その衝撃告白エピローグでする話か!?

 根本からぶっ壊れるじゃねぇか!?

 じゃあ僕は一体何によって作られたんだよ!?

「あ…」

「もう分かりましたね。あなたの考えている通りです。目野前さん、あなたは…」

-生まれつき人間じゃないのです-

 そんな事を言ったのだ。

「中学二年生…あの時、世界の中心を訪問さえしなければ気付かれることも、自分の力を開花、いや開化することもなかったんですよ」

「洗脳…それは嘘だな?」

「二年前の本当の目的は、『目野前現を殺すこと』だったのです」

「でも僕は生きている」

「私達は、あなたを“こちら側”へ勧誘することにしたんです」

「僕を…騙して…」

 東 土龍は僕の事を『えいゆう』と言っていた。それは僕の名前だと勘違いしていたのか。

 つまり東土龍は知っていたのだ。

 僕が非生物だということを。

 記憶を遡ると、イミメランのあの言葉ももしかしたらそういう意味だったのかもしれない。

-それは…その…簡単ですよ…その…あなたが普通じゃないからです-

「僕は人間を離脱できるんじゃなくて、非生物から人間になれるってことなのか」

「いいえ、あなたは“非生物になれるという非生物”なんです。あ、安心してください。目野前さんの親は普通に人間です。あなたは特殊なんですよ」

 特殊で、異状なんですよ。

 と。

 んんんん…よく分からない。とにかく僕は騙されていたということか。

 中学二年生から今日までの二年間。

 ずっと騙され欺かれていたのか…。

「どうですか?私達の事、憎いですか?」

「今の口調なら少し憎たらしいよ。まるで僕がお前らを憎んでいるように聞こえるからな。安心しろ。僕は逆に感謝している。だって運河達が僕を導いてくれなかったら僕は今頃こんな生活は出来ていないよ」

 僕は少しもこいつらの事を憎んでなんかない。

 僕に何とかできるチャンスをくれたんだ。憎むわけがないだろう。

「世界の中心はさぞかし焦ったでしょうね。だって自分の知らないところで全くの『新種』が誕生していたんですから」

「やっぱ、何とかできるのは僕だけなんだな」

「はい」

「そんで話が逸れるが」

「何でしょう?」

「さっきからイミメランのことが一切触れられてないんだが…ほら、イラメラ・ソノ・イミメランさんだよ」

「イミメラン…さん?ああ、あの方ですね。そうですね…」

 運河は世界の中心と交信が出来る。だから運河は情報を更新出来るはずだ。

 僕の名前も実は僕に出会う前から知っていたのだろう。

 なので、今の現状を聞いてみる事にした。

「あれ?何でイミメランさん現実にいないんですか?」

「え?」

 どういうことだよ。

 イミメランは、言伝腐が発生していない所に行ったって言うのか…?

 じゃあ…まさか…夢魔は………。

「いやーッスせんぱぁい。やっと全員殺れました!大変でしたよ!三二九〇五匹」

 イミメラン(先輩)の声が頭を貫いた。

「…?どうしました?目野前さん」

「ん?あ…ああ、何でもない。今のは忘れてくれ。色々教えてくれてサンキューな。それじゃ」

「え、あの…」

 プチ。

 僕は半場慌てて携帯の電源ごと切った。

 本当に今までありがとうございました。


「い、イミメラン、無事なのか…?」

「無事なわけないじゃないスか!見て下さいよ!この小指の擦り傷!!」

 どうやら無事なようだ。

「見て下さいと言われても、見えねぇよ。今通信状態なんだから」

「あ、そうでしたね、ではそちらに参ります」

 いや、あの……うそ。

 イミメランは僕の目野前に現れた。

 といっても僕は机に座っていたので机の上に現れた。

「…これんの?」

「実はっつう話なんスけどね先輩。目野前先輩、確かに契約は切ったんスが、それだけじゃあ繋がりは絶てないんスよ」

「何か他にすることがあるってことか?」

「することっていうか、まだ何もしてないんスよね実際。契約ってのは、『私達は繋がりを絶ちます』っていう意志表明みたいなもんで、本当に繋がりを切ってしまうのは、先輩にも協力してもらわなければいけないんス」

「ようするにお前の勘違いってことか」

「てへぺロ☆」

 イミメランはただウインクをした。

 てへってもいないしぺロってもねぇぞ。

「それについては、僕も勘違いしたとこもあったし、不問だな。でもさぁ、何でいきなり帰れたりしたんだろうな」

「それについても解決済みっス!!」

「ほう、そのこたえは?」

「転送装置…ポケットん中にありました」

「せい!!」

 僕はイミメランの脛を目がけて横に切るようにチョップした。

 それをかわそうとジャンプしたイミメランは、僕のチョップの魔の手に足が引っ掛かり、豪快に転んだ。

 すると僕の机に並んであった本がズドドドドと落ちた。

 え!?僕が悪いの!?

「僕の努力ボロボロじゃねぇか。それに転送装置を使ったら足跡のようなものが付くっていってたじゃねぇか」

 確かあの時言ってたはずだ。

「オイラ、ちと失敗しちゃいましてね。転送装置が誤作動を起こしてバグっちゃったんスよ。で、この機械は、本当に大変なことになると自動的に、『すべての物が存在できる』世界の中心に着くようになってるんスよ」

「なるほど、それは分かった。そのバグが一時的だったから戻れるようになんだな。でもそれは跡が残らない理由にはならねぇぞ」

「オイラ一度先輩と確かめに行ったじゃないスか。その時は下ばっかり見てたんスけどね、よくよく後から考えてみると、オイラ、空中に転送されてたんスよね」

 ズドンッという音、あれは地面にあたる衝撃音だったのか。

「えーと。最終的に?」

「全部オイラの勘違いでした!!」

「せい!!」

 僕は先ほどと同じように脛をめがけて横にチョップした。

 今度はよけもしないで当たってしまった。

 イミメランはまた転んだ。

「きゃん!!」

きゃん?そんな可愛い悲鳴を出すようなやつだったっけ?

「そうですよね…その…目野前さんには…その…散々迷惑かけましたものね…その…申し訳ありません」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 人格が変わっていた。

 でも何だろう。同じイミメランなのにこっちだと妙に申し訳なくなる。

 罪悪感罪悪感罪悪感罪悪感罪悪感罪悪感罪悪感罪悪感。

「…わ、わりぃ」

 なんか謝ってしまった。

「いえ、いいんですよ。…その…実はおいらが…」

「その話はもう聞いたよ」

「?あ、はい、本当に申し訳ありませんでした!!」

「いやいや…」

 ちなみにだが、運河とイミメラン(優)はどちらも敬語口調だが、運河は謝る時、『申し訳ございません』、イミメラン(優)は『申し訳ありません』の違いがある。

 いや、どうでもいいけど。

 そうだ、もしかすると、そのミス、というかバグを起こしたのが『世界の中心』なのではないか?

 その場合、迂闊にイミメランを責められない。

「ところで夢魔はどうなったんだ?怖かったろうな。黒いし化物だし」

「夢魔は全員倒しましたよ…その…でも、…その…怖くはないですよ。むしろ可愛いくらい」

「え?やっぱ空想人のイミメランと人間の僕とじゃ考えが合わないのかな」

 非生物の僕だけど心は人間のつもりだよ?ホントだよ?

「あ、そうでした!!忘れてました!空想世界での夢魔は、現実でいうバグのようなものなんですよ」

 バグとは、夢を食べる動物だったはずだ。

 えっと要するに。

 言伝腐とは無関係じゃねぇか!!!!

 忠実だよ!全然退化してないよ!!むしろ大群って、進化してんじゃねぇかよ!!

 紛らわしい時に来たものだ。

 じゃあやっぱりイミメランは、勘違いで戻ったんだよ!!

「紛らわすぃ!!!!!」

 僕がいきなり叫んでしまったため、イミメランがビクッと震え、涙目になってしまった。

え!?僕が悪いの!?

「ああ、ごめん…。そしたらもうお前とはお別れだな」

「いえ、おいら…その…今回の件で…その…現実の様子を観察することを命じられて…その…しばらくここにいることになりました。これからも…その…よろしくお願いします!」

 そう言って僕に握手を求めてきたイミメランを突き放す理由は無かった。


「へぇ…」

 僕はイミメランとの握手をすると、宛家を訪ねた。

 そこで僕は今までの運河との会話をすべて話した。

 勿論、僕が人間じゃないことも。

「簡潔にまとめると、甘噛ちゃんと韜鏖くんは逃げたのね」

 そういう解釈!?

「冗談よ。だって甘噛ちゃんと韜鏖くんは『あなたを何とかする』っていう使命を終えているんだから」

「いやでもほんとにすごかったなぁ今まで」

「本当にね、あなたが私のスカートの中を覗かなければこんなことにはならなかったのにね…こんの変態!!」

 この怒りにももう慣れてしまった。

「いや、『こんなこと』にはなったんだろう。それを僕達が何とかするかの違いだよ」

「なるほど」

 宛は納得したようで、腕を組んだ。

「時にあなた。一ついい?」

「なんだよ」

「私達、『異状』と戦う者たちは、一体何と呼ばれているの?」

「…さぁ…」

「じゃあ私達で考えちゃいましょうよ。何がいい?案とかある?」

 僕は心の中では決めていた。

 僕は英雄にはなれないこと。

 英雄になれなくても何とすればそれでいいこと。

 何とかすれば何とかなること。

 それは影でもいいこと。

「影雄とかどう?」


今まで有難う御座いました。

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