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「んんん?だれ?きみ?」
東土龍はずっとそこに立っていた。周りを言伝腐で囲んだりすることはない。
「つか…子供…?」
子供だ。
小学三年生といったところか。
こんな女の子が東土龍だって?冗談だろ?
黒く艶のある髪は、丸くカットされていて、身長一三〇センチあたりか。
え、僕、この子を殺すの?
はっはー。…マジで…?
「お前が…東土龍か…?」
「ん?ああそうだよ。ぼくが『あずまどりゅう』だ」
「言伝腐を作っているのは…お前か?」
「うん。そのとおり。ぼくが『どくさいしゃ』だ。わるい?」
子供の格好をしているだけで、ぼくは感じた。
こいつは『悪』だ。
「僕はお前を殺しに来た。さぁ、殺すよ」
「あ、きみが『えいゆう』ね。あまりにえいゆうえいゆういってたのはきみかぁ。よく『むきず』でいられたね。なんで?なんで?」
「さあな」
僕は迷わず拳を構える。
イメージは勝手な想像の殺人拳だ。
「あ、ほんとうにやるきなんだ。じゃ、ぼくも。えい!」
「うっ!!……え……?」
一瞬、一瞬だけ衝撃を食らう。
東土龍は動いていない。
全く動かずに僕に攻撃してきたのだ。
しかしダメージを感じない。
そのはずなのに僕は崩れ落ちた。
「ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
今までに感じたことのない激痛。腕が無くなった時よりもきつい痛み。
「な、なななななななななな!!!!!!!」
下半身が消失していた。
周りを見ると肉片が散らばっている。
爆散していた。
立ち上がれない。
「い、いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
「あれ、いがいとよわいね。なんだ、がっかりだよ」
へたに動けば内臓が出てしまう。
このまま死ぬなんてこたぁないだろうな?
僕は抵抗するぞ。
「う、ああああ…」
僕は腕を伸ばして地面に突き刺す。
それで前へ、前へと…。
「しつこいなぁ、なんだよー。さっさとしねよ」
「がはぁ!!」
右肩が爆散した。
東土龍は全く動かない。
もう、痛みとかどうとか言っていられない。
逝くわけにもいかないんだ。
なんで、こいつは何もしていないのに僕を殺せるんだよ。
そんなことが出来るんだよ。
またチート能力か?
「ん…チート能力…だがぁ!!!!」
今度は左肩が散った。
「あれぇ?なに、まだいきてる?なんていうのこういうの、『せいめいりょく』?すごいなぁ。でもじゃね」
そこで初めて動いた。
僕の方へ。
そして僕の額に人差し指をのせ……。
「あ、ああああああ、ああ、あああ、ああ、あ、あ、ああああ…」
僕の顔面は何も抵抗することなく溶けてしまった。
物体を爆散させる能力とかではないんだな。
「あ………あぁ…………………」
僕は死んだ。
僕は死んだ。
そこで主人公補正のように、覚醒したり、蘇生したりすることはなかった。
そう。
僕は死んだんだ。
死んでしまったんだ。
バットエンドなんだ。
じつはちょっとだけ宛が助けに来てくれることを期待してたんだけどなぁ。
やっぱ逃げたか。
しっかりと逃げられたかな?
逃げてくれよ。
あとは、甘噛と運河と、韜鏖…カザカザがやっぱ言いやすいな。
あとは頼んだ。
どうか、この悪を殺してくれ。
さぁ、僕は冥界にでも行くとするかな。
そこはなんだか楽しそうだ。
平和そうだ。
人の死というものは意外と簡単なものなのだな。
人はコロッと突然死ぬし、死んだことにも気付かないときもあるだろう。
それは仕方のない事だ。
世界には仕方のない事が沢山ある。
ならば僕もそれをはっきりと受け止めるべきなのだ。
しっかりと、知るべきなんだ。
走馬灯というのは人間が窮地に追いやられた際、死にたくないと、助かる術を自分の記憶の中から探り出す作業らしい。
だから、昔の思い出を懐かしむとか、そういうことはできないのである。
僕は走馬灯を見なかった。
何もしていないわけじゃない。
僕は走馬灯を見る代わりに東 土龍を見ていた。
そして絶対に目を離さなかった。
まぁ結局、目も溶けてしまったわけだが。
目をつぶり(もう目は無い)、自分が死んだことを確認する時間が少しあった。
その少しの時間に、僕のすべてを語ろうじゃないか。
僕だって痛かった。
辛かった。
苦しかった。
キツかった。
これでおさらばなんだ。
終わりなんだ。
ああ、疲れた。
もう疲れた。
投げ出そうとは思えない。
投げ出すには重すぎる。
投げ出す、というか僕はもうこの件について触れる事は出来ない。
だって死んだんだもん。
もう、ダメなんだ。
もう一度、自分に言い聞かせるように言ってみよう。
僕はもう死んだんだ。
『僕自身』は死んだんだ。
よく頑張ったよな。
よくやったよな。
うん。
BAT END…




