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影雄譚  作者: 今日仰日ゞ
僕は『僕』へと離脱しもどき(?)と出会う。
10/15

1

ここからシリアス。

 シリアスシリアスドシリアス。

 僕があのクソどうでもいい闘いを終え、やっと家に帰って着替えようとした時である。

「…ちょっといいですか?」

「おぉぉ!」

 半裸。

 僕半裸。

 イミメランがいきなり僕の前に現れたのである。

 しかし何というか、僕の空想の中に入るときとは少し違う感じの半透明で、まるで映像のようだ。

 あ、これが書店の時に使っていた、『空想としてこの世界に表示されている』というやつか。

 これ、よくよく見たら表示って分かってしまうな。

「どうしたんだ?」

「…その…一つお願いがあるんですけど…その……」

 何だかいつも以上に煮え切らない。

「…何だよ。言ってみろよ」

「その…おいら…その…もうそろそろ空想世界へ戻らないと…その…色々大変なんです」

 そうだ、こいつにだって用事はある。イミメランも色々大変なんだよなぁ。

 でも、それは…。

「まさか…世界の中心に行かなきゃいけないのか…?」

「…はい…」

 あの場所には『ゾンビもどき』が出たのだ。

 アンデットもどき。

 はっきり言うと、僕はあの化物が怖い。

 恐怖。

 トラウマなのだ。

「…ぐ…で、でもいつかは何としなければならないよな…」

 何とかしなければならないのだ。

 何の為?

 自分の為に。

「よし、分かった。ちょっと待っててくれ。ブリッチするから」

「ブリッチなんて要らないですよね…」

「てへっ」

 たまには僕だってボケたいのだ。


 幽霊苗字というものをご存知だろうか。

 幽霊苗字とは、実際に存在するかどうか怪しい苗字で、明らかに可笑しいものが幾つか存在する。

一宮暴。

 何と読むでしょう?

 正解は『いくぜ』

 いかねぇよ。

 こんなものは逆に答えられる方が奇跡である。

 他にも、

 谷谷谷谷

たにかべやつや

や、百千万億

つもい

や、子子子子

ねこじし

や、東西南北

よもひろ

や、十二月一日

しわすだ

 実際に存在する方には大変失礼なことなのだが、これを何も無しに読める人は、引くくらいの天才か、超能力者くらいのものだと思う。

 まぁ多分、僕も人のことは言えないと思うが…。

 目野前。

 珍しすぎる。

 珍品である。

 だが、何故こんな苗字が生まれたのか、僕にはよく分からない。

 しかし、少なくとも『何もしないで』このような苗字が誕生するとは思えない。

 誰かが何かしているのだ。

 誰かが必ず。

 たまに僕は思ってしまう。

 僕が悟った『何とかすれば何とかなる。何とかなるのは何とかした者だけだ』というのはよくよく考えて、ことわざの『成せば成る 成さねば成らぬ何事も』の事をただただ言い方を変えて言ってしまっているのではないか?と。

 このことわざは、できないと思うことでも、強い志を持ってやってみれば、できるものという意味の、やる気の大切さをと説いたことわざで、上杉鷹山の言葉である。

 僕個人としては分けた使い方なのだが、それが何だと言われてしまうと僕ははたして答えられるだろうか?

 結局僕の悟った事も、幽霊苗字のようにあやふやなのではないか…?

 それを答えられるようになるのはもう少し先である。

「そういえばさぁイミメラン、お前に何か特殊能力のようなものは無いのか?」

 僕が黒いTシャツにチェック柄のトレーナーを羽織るような簡単な格好に着替え、少し歩いたときに僕は言った。

「あー、…その…一つありますね」

「何だ?教えてくれよ」

「…その…創造魔法です」

 想像魔法?

「空想人だからなぁ」

「あ、違います…その…そういう意味じゃなくてですね…その…創る方の創造です」

 あ、そっちね。

「どうゆう能力なんだ?」

「今この状態に無い物を創れる能力ですね。…その…空想の中でたまにいる欲求不満な人を慰めるようなものです」

 きっと僕の『カタチ』とは少し違うんだろうな。

「そうか、じゃあエロ本創ってくれ」

 カタチで作れないわけでもないのだが、エロ本が僕自身ってのはねぇ。

「……………」

 黙っちゃった!?失敗だったか!?

 もしこれが(後輩)だったら素直に創ってくれるんだろうなぁとしみじみ思った。

 どっちの人格も素直なことには変わらないんだけどね。

「冗談冗談!冗談の冗談だから!!」

「あ、そうですよね!やっぱりそうですよね!というか現実で使えるかどうか分からないですけど!」

 何だ、使えないのか。

「おおそうだ!そういうことだ!そういうことだ!」

「それじゃ少しペース上げるぞ!」

「はい!」

 僕は足を早めた。


 東土龍。

 謎の手紙に書かれていた謎のモノ。

 手紙によると、独裁者になろうとしている悪からできた人間と書いてあった。

 悪。

 その者が、今、独裁しようとしている世界がここ。

 それを防ごうとする世界の中心。

 その世界の中心によってよく分からない事をされた僕達。

 恐らくイミメランもそうなのだろう。

 僕が人間離脱を出来るようになったのは多分中ニ。

 その頃にも実は何か、世界の中心が仲間を作らないとならない出来事があったということなのか。

 はたまた今の現状を予測しての出来事なのか。

 僕はまだ知らない。

 まだというのは、これから知っていくだろうという予測である。

 僕達は世界の中心へ着いた。

 やはり崩壊寸前なのは変わらない。

「…ボロボロです…」

 イミメランもこの異常を見ているらしい。

「ん、ま、まぁこれでも世界の中心は世界の中心だ。多分戻れるよ。多分。ところで、どうやって戻ろうとしているんだ?」

「おいらがここに来た痕跡を調べれば、…その…戻れると思います。多分」

「多分」

「多分」

「「多分」」

 うん多分。

 イミメランはボロボロの世界の中心の中へ入っていった。

 僕もそれに続く。

「あ、この辺で少し…その…待っててください。一緒に…その…転送されちゃいますよ?」

「分かった」

 イミメランは前へと進み、僕の三メートルくらい先で立ち止まった。

 そしてしゃがんで床を摩る。

 僕から見れば腐った木の地面をいじっているように見えるが、彼女にはどのように見えるのだろうか。

「………」

 イミメランはじっと地面を見て、眉間にしわを寄せている。

「…どうしたんだ」

「…戻れません…」

「え?」

「転送というものは、…その…たまに空想世界でもすることなんですけど、それにはちゃんとした…その…道具が必要で、おいらはそれを現状持っていません。それに…その…転送できるのはあくまでも…その…空想世界内だけで、現実には来れませんし、何より転送された場合、…その…走ると地面が削れるように何らかの痕跡が残るんです。それが…その…一切無いんです…」

「痕跡があればそれを調べて帰れると言ったな」

 だが痕跡そのものが無い。存在していないのなら変えることはできない。

 さすが世界の中心。

 やるところまではやってくれる。

 つまり僕達には戦え、いや守れと言っているのだろう。

 そこまで言うならやってやる。僕は『僕』だ。それ以前に自分は自分だ。誰も手に触れることすらできない『何か』を僕が何とか出来ると言うのなら、他に誰がいる。

 それがいくら気の進まないことでも、

 それがいくら面倒臭いことでも、

 それがいくら大変なことでも、

 それがいくら辛いことでも、

 それがいくらやる気の出ないことだとしても、

―何とかすれば何とかなる。何とかなるのは何とかした者だけだ―

何かするにはそれなりのリスクはあるのだ。

 それを覚悟しなければならない。

 しかし彼女、イミメランはどうなのだろうか?

「…イミメラン、お前はまだ何故この世界に来たかは知らないんだよな」

「…はい、知っているのならば教えてくれませんか…?」

 僕は、一息して彼女に言った。

「僕達は、必然的にこうなった。僕達はどうやら世界を、『色々な何か』から守らなければならないらしい」

「フワフワですね」

「フワフワだな」

 ははは、と僕とイミメランは笑った。

「目野前さん、そういうことならおいらはここにいるしかないんですね。分かりました。世界の中心、おいらも協力しましょう」

 少女はしっかりと、確実に、誠実に、そう言ったのだった。


しばらく、世界の中心にいたあと、僕達は山を降りた。

 山を降りた、と言っても所詮は小山。

 三十分もしないうちに降りられるのだ。

 三十分後。

 山に降りたとき、僕が思ったのは、

「あれ?僕も空想世界に来ちゃったのかな?」

 だった。

 しかしながら、それは僕の妄想であり、それこそ空想だった。

 ここは紛れもない現実で、リアルだった。

 じゃあ何で…。

「何で…こんなにも…言伝腐か…」

 遠くにゾロゾロと化物の大群が見られたのだ。

 つまりは百鬼夜行である。

 そこには僕がボロ負けしたゾンビもどきもいた。それも大勢。

 僕は謎の手紙の内容を思い出した。

―恐らくもう少しの時間で、人類に襲い掛かってくるでしょう。

 独裁するために。

 悪のために―

「東土龍…」

 その時が来たのだ。

 何とかしなければならない時が来たのだ。

 『僕』が生まれた存在意義、人間離脱が出来る理由。

 僕はどうやら世界を守らなければならないらしい。

 いや、そんな英雄のような事は僕にはできない。


僕は英雄にはなれない。

 英雄とは周りよりも優れた人、良い才能を持った人のことである。

 不可能なのだ。無理なのだ。

 僕が人、人間ならば冗談と言われてしまうだろう。

 僕が人、人間ではなかった場合、僕には同類がいない。

 周りがそもそも存在しないのだ。

 僕は英雄になりたい。

 なりたいとも。

 しかし僕は英雄としての人生を歩めない。

 正しくは英雄と呼ばれることがない。

 ならば英雄ではなく影雄として生きよう。

 影として生きよう。

 これは僕の予想だが、今までもこのような危機が何度かあったのだろう。

 しかしそれを僕は知らない。

 仮に中ニの頃に何かしら事件が起こっていたとして、そんなものはニュースとしてなどやっていないし、何より話題にすらならない。

 もし、このような事件が起こり、それが無事解決した場合、世界が、世界の中心が修正をかけるのではないか?

 だから僕が東 土龍を殺し、言伝腐も消滅したとしても、英雄として公に現れることもなければ、僕の人間離脱を知られることもない。

 世界はそうして回ってきたのかもしれない。

 地球は環境が回すのかもしれない。

 世界は中心が回すのかもしれない。

 だが世界を動かすのは人間だ。

 新世界を作るのは人なのだ。

 それなら僕は影雄でいい。

 影雄がいい。

 何とかするのに支障はない。


僕は僕だ。

 表現として、それは正しいだろう。

 僕は僕。

 君は君。

 自分は自分。

 しかし、言い方を変えれば、僕は君であり、君は僕でもある。

 自分は僕でもあり、君でもあるわけである。

 じゃあ一体僕とは何だろう?

 こういう哲学的な事を考えるとキリがない。

 だがキリがないからこそ、考える意味があるのではないだろうか。

 一生かかっても答えられないからこそ、人はそれに向かって生きようとするのではないだろうか。

 答えは表現次第である。

 その表現とは何か。

 僕は今まで様々なものを表現してきた。

 それは『翼』だったり、『銃』だったり。

 それ以外にも僕はこれまで本当に色々なものを表現してきた。

 表現とは無数である。

 表現とは無限である。

 表現とは無上な事が無いからである。

 僕はこれから、表現をして戦っていくのだろう。

 僕はこれで、

 何とかするのだ。


―何とかすれば何とかなる。何とかなるのは何とかした者だけだ―

これが僕のモットーだ。

 何もしなかったら、どうにもならない、どうにもならないから、何もしない。

 それはどちらが先なのだろうか?

 どうにもならないのであれば、何も、そんなに頑張る必要は無い、いいじゃないか。別に何とかなるんだから。

 そうして何ともならなかったのが、

 僕だ。

 だから僕はこの先ずっと、一生何とかしなければならないのだ。

 頑張る必要はない?

 確かにそうかもしれない。

 頑張る必要はないかもしれない。

 だが、

 『頑張らない』のと『何もしない』のは全く違う。

 天と地の差がある。

 何もしないのは、何もできないのと同じ事。

 何もできないのは無力な事と同じ事。

 何もしなきゃ何も起きない。

 その代表例が、昔の僕なのだ。

 何もしないで何にもならない、いやそれ以上だったかもしれない。

 何とかするには、

 何とかしようと思い、

 何とかするリスクを把握し、

 何とかする覚悟をし、

 そして何とかする。

 そうなのだ。

 理屈っぽいがそうなのだ。

 僕は何かはしなければならないのだ。

 何とかなるために。


 僕は体を引き締め、人間を離脱した。

刹那、今度は『カタチ』としてイミメランが登場した。

「突然…」

「突然?」

「突然、今…その…帰る事が出来るようになりました…」

「あれ程帰れないと言っていたのにか…」

 それは本当にいきなりの発言だった。

「はい…今、今、専用の道具も無いのに…その…行き来出来るようになりました…」

 …まさか。

「今すぐ戻って確認しろ!!!」

「い、え、な、何を…」

「いいから早く!!」

「はい!」

 イミメランに最初合った時のように周りが虹色に光り、彼女は消えた。

 すぅっと空気を吸い、一度目を瞑り、もう一度ゆっくりと前を見た。

 まだ五キロ程先だろう。だが、音と、煙でここからでも分かる。

 言伝腐はやってきた。

 世界を壊しに、

 やってきた。

「…目野前さん、目野前さん」

 頭の中からイミメランの甲高い声が聞こえた。

「何だ!お前まだ僕の空想にいるのか!?」

「ち、違います!!…その…まだ目野前さんの空想に住んでいるという契約は繋がっているので、通信ができるんです!だから…その…空想世界にいます!」

「で、何かあったか?」

「あったってもんじゃないです!…その…『夢魔』が沢山いるんです!」

 確か夢魔とは、悪魔の子供を産ませる化物だったはずだ。

 そいつはきっと『夢魔もどき』だ。

 いきなり帰れるようになったのは、想定していなかった『空想世界への襲来』があったからだろう。

 空想世界も世界の一つなのだ。

「夢魔かぁ、夢魔っつっても別に夢の中にでで来る魔物じゃなかったはずなんだけどなぁ」

 それも言伝腐なのだろう。

「そいつらはどれくらい強いかは僕には分からない。だけどその怪物は必ず空想世界を滅しに来た」

「え、うそ、え…」

「だからキツいかもしれないけれど、そいつらを殺せ」

 ぶっきらぼうな言い方だったかもしれない。

 それでもそう言うしかなかった。

 そう頼むしかなかった。

「……あ、……はい……はい……」

どうやら向こう側で何か話しているようだ。

「目野前さん、…その…何というか…その…」

「ん、どうした」

「死なないでくださいね」

 うおう。

 こう堂々て言われると少し恥ずかしいな…。

 でもありがたい。

「はっ。当然!」

「………」

 イミメランは戦いに備えたのだろうか。喋らなくなった。

「…さて、僕も…」

 指を鳴らして先へ行く。


「…『カタチ』」

 さぁ、もう一人の僕は一体どんな姿をしているのだろうか?

 さぁ、もう一人の僕は一体どのように表現されているのだろうか?

「『剣』だ」

 僕は中二病よろしく、どす黒い剣を表現する。

 別に言伝腐を殺す必要はないだろう。

 ということはさっきイミメランに言ったことは嘘になってしまうが、僕が東土龍とやらのモノを殺せば済む話すだ。

 そのものの中心

コア

をぶっ壊せば全体は簡単に壊れるのだ。

「おし、行くか」

 ミシミシミシと剣が変化する。

 ペキペキペキ。

 まるで木の皮が剥がれるように、剣の表面がめくれる。

「鈍器剣の完成だ」

 とりあえず、宛の安否が気になる。

 アイツは幽霊関係を苦手だと言っていた。

 その話をすると震えるくらいに。

「すぅ…」

 右足を後ろへ下げ、左足を踏み切る。

 僕も自分の本気は知らない。

 油断していると、携帯電話にヒビを入れたりしかねないこの『僕』。

 油断していると、ドアノブを潰しかねないこの『僕』。

 油断していると、地面を凹ませかねないこの『僕』。

 はて、どうなることやら。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 この叫びはエロ本対戦以来。

「うわぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 飛びすぎた。

 吹っ飛びすぎた。

 目標は、言伝腐の近く。

 そこが限界だろうと予想していた。

 だが着いたのは…、

 言伝腐のど真ん中。

「わぁぁぁぅぅぉおりゃぁぁぁあぁぁぁっ!!!!!」

 僕は悲鳴を怒声に変え、墜落する。

 ドッパァァァァァァァン!!!。

 周りにいる言伝腐は衝撃で弾け飛んだ。

 そのままその『鈍器剣』を縦に振り落とした。

 ズドドドドドドドォォ……。

 その縦振りの衝撃は、瞬時に地面を削る。

 「…うお」

 おそらく周りにいるのは、言伝腐の中でも『吸血鬼もどき』だ。

 ダンピールもいるのかな。もし正義のダンピールがいたら、是非とも一緒に吸血鬼を倒してみたいものだ。

 と言ってももどきなんだけど。

「うおりゃ!」

 握っている剣の素材を銀に変え、吸血鬼もどきを切ってみる。

 普通の吸血鬼ならそれが弱点だったはずだが。

 僕を囲んでいる吸血鬼もどき達は、僕の手によって真っ二つになる。

 だが死なない。

 いきなり僕の体に血管が浮き出る。

「う、うぐぅ…」

 血を吸われている!?

 周りを見ると手を僕にかざした吸血鬼が沢山いた。

 触れなくとも血を吸えるらしい。

「こ、ここは危険だ…うらぁ!!」

 人間の血の量はおよそ二リットルと言うが、『僕』の場合はそれを遥か上回る。

 しかし、それでも、それでも死にそうなくらいに血を吸う吸血鬼。

 銀の剣でも死なない吸血鬼。

 触れなくとも血を吸う吸血鬼。

 吸血鬼もどき。

 ほとんど無敵である。

 僕はそれを危険と判断し、全力で上へ飛ぶ。

 ある一定範囲を抜ければ血は吸われないらしい。

 僕はまた新たなる言伝腐の大群に落ちた。

「これは…」

 レヴィアタン。

 実は宛の家にいた日の夜中、手を動かせるようになった僕はこっそり化物について調べていたのだ。

 だからある程度の知識はある。

 この龍のような姿をしているのはレヴィアタンだ。

 だがコイツは海の魔物だったはずだ。

「うおぉぉぉぉ!!」

 突然、僕のいる地面、いやそれ以外の地面も、レヴィアタンもどきのいる一体の地面が渦を巻いたのだ。

「いでぇぇぇ!!」

 その蟻地獄のようになった地面に巻き込まれた僕はギャリギャリと磨り潰されそうになる。

 僕は生き物なのだ。痛覚か感じるし、痛いと思うのだ。

「ヴゥゥゥゥゥゥゥ………」

 レヴィアタンもどきが鳴いていた。

 どうやら自ら手は下さない主義らしい。

「ぎぃぃぃぃ!!!!」

 僕の周りが赤く染まる。

「りゃぁ!!!」

 僕は下に向かって拳を振り落とした。

 土が飛び散り、地面が砕ける。

 僕はかろうじで渦から脱出して、その勢いのまま鈍器剣に戻したカタチを一匹のレヴィアタンもどきに叩き込む!

 ずぅぅぅぅぅぅぅん…。

 跳ね返された。

 跳ね返されたというより、通じなかった。

 全く手応えを感じないし、レヴィアタンもどきも平気そうだ。

「そうだった、レヴィアタンは…攻撃が通じないんだった…」

 ったく、厄介なとこに落ちたもんだ。

 ではどうしようか…。

「…攻撃が通じないのならば…攻撃をしなければいいんだよな…」

 僕は大量のレヴィアタンもどきをすり抜けながら走り、少しの隙間を見つける。

 そこで僕はくるっと横に半回転。

 そして一匹のレヴィアタンもどきを蹴り『押した』。

 蹴り飛ばしはしない。それは攻撃だからだ。

 僕は蹴り押したのだ。

 押したのだ。

 一見とんちのような行動。しかしそれは通じた。

 押されたレヴィアタンもどきはズザザザザザザと地面を擦りながら周りの仲間もろとも飛んでいく。

 そして自分たちが作った渦の中へダイブ。

「ヴォォォォォォォォォォォ!!!!」

 レヴィアタンもどきは悲鳴を上げる。

 勝った。

「…いや、違う!!」

 渦に沈んだレヴィアタンもどき。

 生きている。

 死んでいないのだ。

 見たときに気付くべきだった。レヴィアタンは硬い鱗を持っていた。

 このレベルの渦じゃあ死なないのだ。

「うぐっ!!!」

 僕の腹に大きな穴が開いた。

 何かが刺さっている。

 それは大きな歯。

 とても大きな歯。

 僕は何者かに食われていたのだ。

「ひ…ヒッポグリフ…」

 あわられたのはヒッポグリフもどき。

 人の肉を好む伝説の生き物。

「…うわぁ……」

 ヒッポグリフが群がってきた。

 僕の血の匂いで来たのだろう。

 僕の脇腹がかじられる。

 そしてそのままボリボリボリと骨を折られながら歯が食い込んでいく。

 血が滲んできた。

「うあ!うあ!うお!!」

 僕に顔を近づけるヒッポグリフもどきを何度か殴ってみてもビクともしない。

 効かないのか。

「ぐ、あ、ああああああああああ!!!!!!!!」

 ブシュウウウウウウウウ!!!

 ついに歯が刺さった。

 思っていた以上の血が吹き出る。

 ぐしゃぐしゃぁと体の中にあるあらゆる器官が崩壊する。

「…い、あ…う…」

 そのとき―

 ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 ものすごい爆風が僕らを襲う。

 僕は必死に耐え、僕に食らいついていたヒップグリフもどきはその大いなる風により吹き飛んだ。

 少しの沈黙…。

「…な…何で…う、運河!?」

 爆風の中心の中にいたのは運河、運河流だったのだ!

 どうしてここにいる!?

 いや、運河だけじゃない!?

「あ、甘噛も…カザカザまで!」

 そこまでいったら仲成は!?

 ねぇ仲成は!?

「遅くなりましたね。すいません」

「ごめんご、めん。ちょっと色々あって、ねー」

「すまぬ、少しばかり遅れてしまった…」

「それより、何でお前達がここにいるんだよ!ここは危険だ!すぐに逃げろ!!」

 僕は叫ぶ。

 危ないんだ、ここは。

「逃げろって、先輩が、逃げ、るのは、ねぇー」

 先輩?

 何を言っているんだ。僕達は同学年だろうが。

「目野前さん。私達はあなたよりも先に『異状』と戦ってきたものです。だから安心してください」

「僕よりも…先に…?」

 僕が驚愕している間、カザカザが説明してくれた。

「お前は空想人に出会った時既にそこから異状は始まっていたのだ」

 そうか、僕がこの人間離脱に目覚めたのが恐らく中学二年生。それはその時の異状対策…。そして今回の異状対策が、イミメランだったんだ。

 よくよく考えてみれば、イミメランに出会ったのは、

 この三人に出会ったすぐ後だ。

「じゃあ僕達が中ニの時に何かがあったんですか?」

「ありました。あの時は確かですね…」

「『洗脳』と戦った、んです、よー」

 洗脳?

「それは今回みたいに、東 土龍のような奴がいたんですか?」

「いや、いなかった。我々は『洗脳そのもの』と戦ったのだ」

 それは少し気になる。どうやって戦ったんだろう。

 でもそんなことを気にしている暇はないのだ。

 ヒッポグリフもどきはまた襲い掛かって来た。

「ちょっと見て、なー、皆すごいか、らー」

 そう言った甘噛の目野前にヒッポグリフが……!

 何と甘噛は素手でヒッポグリフもどきの攻撃を止めた。 

 止めたというのは、飛び込んできたヒッポグリフもどきの顔面を掴んだのだ。

「あっしは世界の中心のせ、いで、『普通の事を普通に出来る』よ、うになっちゃったの、だー」

 そのまま甘噛の手に力が入る。

 すると、

 グシャァァァという音と同時に掴まれていたヒッポグリフもどきの顔面が砕けた。

「『何かを砕く』事、は皆普通にで、きるよねー。名付けて『当たり前な必然ジャスト・スタイル』」

 ヒッポグリフ様を砕く事は普通にできませんよ…。

 すぐ横を見ると何の魔物かは知らないが、とにかく凄い化物が立っていた。

「こんな言伝腐もいるのかよ…」

「待て!儂だ!」

 え?この一人称は…。

「まさか…カザカザなのか?」

「ああ、儂は『生命兵器』になれるのだ」

 恐ろしい。

「む!」

 後ろから渾沌が襲い掛かって来た。

 渾沌は僕が調べたところ、もうすでに死んでいるのだが。

 いや、だからこそ『もどき』なのか。

 ほとんど熊のような顔かたちをしている。

 顔にはしっかりと鼻、口などが存在している。

「ふん!」

 カザカザは襲い掛かって来た無数の渾沌もどき目掛けて、

 目からビーム!

 …うそん。

 混沌もどきは跡形もなく消滅した。奥の方に混ざっていたゾンビもどきは生きていたが。

「韜鏖さんが生命兵器なら、私は『幽霊』ですね」

 半透明の運河は、周りの言伝腐の攻撃を、全て透かしていた。

 そして一匹の言伝腐に取り憑いた。

 するとその混沌もどきの腹が割れた。

 中から運河が出てきたのだ。

 あれ?取り憑いたんじゃないの?

「私は『人間』と『幽霊』を行き来出来るのですよ」

 何?ここにいる三人は皆チート能力なの?

「目野前さん、あなたは宛さんの所に行ってみてください」

「ああ、そうするつもりだった」

「どうやら、ここには不死な奴もいるようだな…」

 カザカザの腕の皮膚がベロンとめくれ、中から大きな銃口出できた。

 生命兵器だ。生き物だから血がドロッと出てきた。

 グロイよ。カザカザ。

「僕は行くぞ!頼んだ!」

「はいー」

「はい!」

「うむ!」

 僕は三人の返事を聞いて、全力を出して、水平に飛んだ。

 周りいた言伝腐が風圧で飛んでいく。

「何というか、多分こ、の中で一番強い、のはめのまんだと思う、んだけ、どねぇ…」

 甘噛がそう言った気がした。

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