九十九度の青視線
ここで初めて書かせてもらう直公ツグヲです。
純真無垢な奇天烈猫、をスタンスにして書いていきます。
よろしくお願いいたします。
九十九度の熱が出て、私はあやうくのところで蒸発しかけたのだった。
そのとき校庭には誰もいなくて、飛行機雲だけがやけにくっきりと、青空を一閃していた。私は教室から抜け出したことへの罪悪感やら爽快感やらでもう駆け出してやりたい気持ちに襲われ、そして実際走った。頭から湯気が出て、心臓のバクバクはどこか知らない世界から聞こえてくる知らない戦争の連続迫撃砲大爆発! みたいに鳴り響いてた。スカートは乱れて砂にまみれてかわいくもなんともないただの布きれへと変貌した。私は自分の足を見た。可愛くもなんともない、ただ生えてるだけ。でもちゃんと動くんだなあ、と変に感心してしまった。みつを。
とにもかくにも私は学校が嫌いだったわけである。担任の中原の放つ「女性の前髪はいつの時代も空中庭園でなければならないお前の髪形はなんだ云々云々」や、隣の席の低能男子鈴木の雑草のような眉毛や、なにかあると(男子関連)モンキー声を出す女生徒どもの存在が大嫌いだったのである。
しかし私。おんなわたし。とけこめないワタシ。タワシの下は私。まあいいや。しかしもう限界だったのである。なんだってかんだってあんなちんけな担任や、歩く動物園のような同性とつるまなきゃならんのか、納得できなかったのである。
だからもういいや。教室を抜け出して、私は空を仰いだ。首が痛くなるまでじーっと見てた。神様がいたずらで引いちゃった白線を、目がちかちかするまで見た。そしたら飽きた。
飽きたからグラウンドを走った。私の節くれだって醜い足は地面をけり、前へ前へと体を移動させた。何年ぶりに走るんだろう。こんなに早く走れるんだったら、もっと早く逃げ出せばよかったのだ。どこまでもワープして、ここじゃないどこかに飛び出せていけばよかったのだ。
走り終わった後、シューシューいう気管支、血の匂いがする鼻の奥、それよりもなによりも体が熱い。熱くて爆発してしまいそうだ。
現在私の居場所はここしかないけれど、いつかまた走って九十九度くらいの血管が爆発してしまうような熱を蓄えて、青空の白線を渡って行こうどこまでも。
体の熱が空気鵜の中に溶けていき、心の大波も引いてきたとき、担任の中原が汚い顔をして歩いてきた。どうやら私を教室に連れ戻しに来たらしい。
いいだろう。担任中原よ、お前よりも早く教室にもどってやる。
私の体は熱いんだ。
すっきりしました。