表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

九十九度の青視線

作者: 直公ツグヲ

ここで初めて書かせてもらう直公ツグヲです。

純真無垢な奇天烈猫、をスタンスにして書いていきます。

よろしくお願いいたします。

 九十九度の熱が出て、私はあやうくのところで蒸発しかけたのだった。

 そのとき校庭には誰もいなくて、飛行機雲だけがやけにくっきりと、青空を一閃していた。私は教室から抜け出したことへの罪悪感やら爽快感やらでもう駆け出してやりたい気持ちに襲われ、そして実際走った。頭から湯気が出て、心臓のバクバクはどこか知らない世界から聞こえてくる知らない戦争の連続迫撃砲大爆発! みたいに鳴り響いてた。スカートは乱れて砂にまみれてかわいくもなんともないただの布きれへと変貌した。私は自分の足を見た。可愛くもなんともない、ただ生えてるだけ。でもちゃんと動くんだなあ、と変に感心してしまった。みつを。

 とにもかくにも私は学校が嫌いだったわけである。担任の中原の放つ「女性の前髪はいつの時代も空中庭園でなければならないお前の髪形はなんだ云々云々」や、隣の席の低能男子鈴木の雑草のような眉毛や、なにかあると(男子関連)モンキー声を出す女生徒どもの存在が大嫌いだったのである。

 しかし私。おんなわたし。とけこめないワタシ。タワシの下は私。まあいいや。しかしもう限界だったのである。なんだってかんだってあんなちんけな担任や、歩く動物園のような同性とつるまなきゃならんのか、納得できなかったのである。

 だからもういいや。教室を抜け出して、私は空を仰いだ。首が痛くなるまでじーっと見てた。神様がいたずらで引いちゃった白線を、目がちかちかするまで見た。そしたら飽きた。

 飽きたからグラウンドを走った。私の節くれだって醜い足は地面をけり、前へ前へと体を移動させた。何年ぶりに走るんだろう。こんなに早く走れるんだったら、もっと早く逃げ出せばよかったのだ。どこまでもワープして、ここじゃないどこかに飛び出せていけばよかったのだ。

 走り終わった後、シューシューいう気管支、血の匂いがする鼻の奥、それよりもなによりも体が熱い。熱くて爆発してしまいそうだ。

 現在私の居場所はここしかないけれど、いつかまた走って九十九度くらいの血管が爆発してしまうような熱を蓄えて、青空の白線を渡って行こうどこまでも。

 体の熱が空気鵜の中に溶けていき、心の大波も引いてきたとき、担任の中原が汚い顔をして歩いてきた。どうやら私を教室に連れ戻しに来たらしい。

 いいだろう。担任中原よ、お前よりも早く教室にもどってやる。

 私の体は熱いんだ。

すっきりしました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ