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@Program=S.V.R.  作者: 鴉羽柳煙
3/5

Ep_δυο「@Loop=Rondo Replica」

未来(あす)は来ず、(きょう)過去(きのう)に成らず、飽くる事無く再度、繰り返される……星の観測者(Stargazer)達は、回帰する世界を彷徨する。

中指を額に当て……



Atah(アテー)……」



次に鳩尾(みぞおち)に其の指を下ろし……



Malkuth(マル・クート)……」



更に指を右肩に移し……



ve(ヴェ)Geburah(ゲブラー)……」



次は左肩……



ve(ヴェ)Gedulah(ゲドゥラー)……」



最後に手を胸の前で組み……



Le() Olam(オラーム) Amen(アーメン)……」



儀式はまだ続く。東に進み、眼前に五芒星を描き、中心を指して唱える。



YHVH(ヨド・ヘー・ヴァウ・ヘー)……」



円を書くように南に向かい、再び五芒星を描く。星の中心を指し唱える。



ADNI(アードーナーイー)……」



同じ様に西へ。五芒星を描き中心を指す。()して唱える。



AHIH(エーヘーイーエー)……」



更に北。描き、指し、唱える。



AGLA(アーグァラー)……」



東を経由して、部屋の中央に戻る。振り返る様に東に向き直し、両腕を広げ、唱える。



「我が前にラファエル、我が後ろにガブリエル、我が右手にミカエル、我が左手にアウリエル……我が回りに五芒星燃え上がり、我が頭上に六芒星輝かん……」



再び額に中指を当て……



「Atah……」



鳩尾……



「Malkuth……」



右肩……



「ve−Geburah……」



左肩……



「ve−Gedulah……」



手を組み……



「Le Olam Amen……」



(しば)しの沈黙。気を落ち着かせた後、カーテンを開ける。部屋に満ちる眩しい朝の陽射しに目を細める。……直後、扉を叩く音がした。



如何(どう)した?」


「御来賓でございます、お嬢様。」


「判った。今行く。」



儀式用の礼装を片付けて、扉の外に出る。



「ま〜た悪趣味な(まじな)いでもやってたのか?」


「ふっ、お前も人の事は言えないだろう。」



扉の右脇から投げ掛けられた声の方を向く。其処(そこ)には十数年来の親友で、飽く迄“父曰く”だが、私の許婚である黒尽めの神主、紫苑玲慈が立っていた。



「今日は月曜日だな。講義を入れてるんじゃなかったのか?」


「厭、お前と是非話したい事があってね。今日は休みにした。」



何か話すことはあったかと考えていると、玲慈はワタシの執事であるジョルジュ・フランソワ・佐々木と何やら話し込んでいる。かなり真剣な事情のようだ。(つい)でなのでワタシのことを軽く説明しておこう。


ワタシの名前は蘇芳之宮綾嶺(すおうのみやあやね)()の蘇芳之宮家の次期当主だ。……などと大袈裟にひけらかすつもりは無いが。因みに言うが、さっきのは趣味だ。飽く迄も趣味である。



「むぅ、ジョルジュには判らない、か……」


「ええ。……お役に立てなかったでしょうか?」


「厭、十分参考になった。有難う。」


「では、私めは此れで。」



向こうの話は終わったようだ。玲慈が此方(こちら)に歩み寄る。



「さて、立ち話もなんだ。……何処(どこ)で話す?」


「面倒だからワタシの部屋で。」


「厭、一寸(ちょっと)待て。もしや()のオカルティクスな部屋でとか言わないよな?」


「言うか。此処(ここ)は“儀式用”だぞ。」



()う言うと玲慈は、ワタシがさっき出て来た扉を向いて……



(おん)阿毘羅吽欠(あびらうんけん)蘇婆訶(そわか)……」



……両手を合わせながら唱えた。



「一つ聞こう。何の真言だ?」


「胎蔵界大日如来真言。此れを唱えると一切が成就すると言われている。」


「まあ、其れは善いから、さっさとワタシの部屋に行くぞ。」



扉の並んだ廊下を抜けると、2階まで吹き抜けのエントランスの2階に出る。1階とは中央の階段で繋がっている。壁際の通路を通り、フロア奥の扉の前に立つ。



「此処だ。」


「お前の部屋、玄関の真上なんだな。」


「入ったこと無かったか?」


「お前と会う時は、大抵、客賓室(ゲストルーム)か、彼のオカルティクスな部屋だったよ。」


「ふむ、然うか。」



然う言えば然うだったな、と考えつつ、扉を開いて中に入る。



「此処がワタシの部屋だ。」


「…………」



玲慈の眼が丸く見開かれている。()のまま周囲を見回す。



「何と言うか……お前凄いな。」


「何がだ?」


「予想はしてたが、()れは他人に見せられるものじゃ無いぞ……」


「何を言う。此れ以上無く綺麗に整理整頓してあるだろうが。」


「……然う言う意味じゃないって。」



厭、言っていることが判らない訳じゃない。何せ部屋の壁の約五割が漫画などを含めた書籍で埋め尽くされ、残りのスペースにはフィギュアやゲームなどが盛大に陳列されている。机にはデスクトップパソコンが鎮座。他の部屋と比べたら其れこそ此処だけ異世界だ。



「お前、服とか如何してるんだよ……」


「本棚の裏だ。」



引き戸型の本棚をスライドさせる。其の中がクローゼットになっている。



「如何だ?」


「如何だ、ってお前、普通の服よりコスプレのコスの方が多いって……」


「単なる趣味だが何か?」


「……厭、異論は無い……」



無理矢理黙らせてクローゼットを閉める。



「さて、ワタシに話があるんじゃ無いのか?」


「ああ、然うだ。……少し長くなるが構わないか?」


「別に問題は無い。」



然う言ってから、玲慈は深呼吸をし、此方を改めて見据える。



「善し。じゃあ、先ず一つ聞くが……今日、朝起きてから今までに、何か違和感みたいなものを感じなかったか?」


「違和感……?」



今朝からの行動を思い返す。何一つ変わり無い、何時も通りの朝……待て、一つだけ変なところがあったような……



「朝起きて、其処のカレンダーを見た時に、変な感じを受けた。確か……『また月曜日か』って呟いた気がする。」


「お前もか。実はオレも然う感じた。」



玲慈も……?此れは如何言うことだろうか。



「次に、何か既視感……とか感じなかったか?」


「既視感?」


「まあ、所謂“デジャヴュ”という奴さ。」



再び思い返す。……一つ思い当たることがあった。



「今朝の朝食、シェフは全く新しいメニューだと言っていたんだが……一度、家の食堂で食べたことがあるような気がした。」


「其れだ。」


「単なる気の所為かと思っていたんだが……其の反応だと、如何やら違うようだな。」


「ああ、確実に何かが起きている。同じ現象を認知している人間が二人もいるんだからな。」



如何やら意外にも事は大きいらしい。



「で、此れから如何するんだ?」


「取り敢えず、何が起きているのかを調べる必要がある。」


「判った。付き合おう。」


「講義は善いのか?」


「今日は教授が休む気がしてな。」


「……マジかよ……」



溜息を()く玲慈を引き連れ、部屋を出る。さて、何処を如何廻ろうか……



† † †



「ん……ぅ……」



ゆっくりと目を開く。入り込む光に思わず開いた目をまた閉じる。瞼から透過してくる光に目が慣れたところで、再び目を開く。



「……知らない天井だ。」



木製の板張り、中央に電灯が付いている。周囲は何とも庶民的(?)な造りの部屋……



「…………」



こんなの造りは教科書ですら見たことが無い。……一度、歴史博物館で見たかな……兎も角、此処は何処だ?今は何時だ?ボクは……



「ボクは……誰だ……?」



其の単語が頭を埋め尽くす。ボクは誰だ?幾ら考えても答えは見えて来ない。厭、其れ以前に此処は……?



「……考えても仕方ない、か……」



思い出せないのなら、考えるだけ時間の無駄。今は状況確認が先だ。



「ん……?」



此処に来て自分の身体の違和感に気づく。何か斯う……胸の辺りが……柔らかくて……妙にプニプニしてるような……



「え、ええぇ!」



全身を善く確認する。女性特有の曲線的なボディライン、まだ未発達だが幾らか膨らんだ胸……紛れも無く女性の身体だ。其れもまだまだ幼さを残す少女の……



「むぅ、何が何だか……」



善く考えれば斯の声も少女の声だ。状況が全く以て理解できない。


……厭、善く考えると、自分は男であったと推測できるな。少女の身体に違和感を抱くのだ。つまり、ボクは元々男なのである。


なのだが、然うなのは間違いなさそうなのだが……



「…………」



斯の少女の私服らしき女性用の着物と袴を見て、何故ボクはワクワクしているのだろう?



「…………」



辺りを見渡す。人の気配は無い。如何やら一人暮らしのようだ。



「ふぅ…………」



安心すると、急に顔が綻ぶ。立ち上がって着物と袴に近寄る。



「…………」



改めて周囲を見回す。矢張り人の気配は無い。



「……善ぉし…………」



いそいそと寝間着を脱ぐ。朝の空気が冷たく肌に刺さる。下着、着物、袴の順に着て、最後に帯を締める。足袋を履いて終わりだ。



「おぉ……」



姿見に自身を写す。……可愛い……。まあ、正確には“自身”では無いのだが。



「うふふ……」



着物の袖を持ってポーズを取る。ボク的には凄く楽しいのだが、こんな趣味してたのか、ボク……



「…………」



……ま、善いか。楽しいし。



「おっ……」



くぅっ、と腹が鳴る。然う言えば物を食べた記憶も無くなっている。



「何があるかな……」



台所へ向かい、冷蔵庫を漁る。物は比較的揃っている。只……



「一人暮らしにしては、量が多いような……」



取り敢えず鱈の切り身と菠薐草(ほうれんそう)を取り出す。鱈の切り身は焼き魚に、菠薐草はお浸しにした。因みに、御飯は鱈を調理している間に急速炊きで用意した。味噌汁は作る余裕が無かった。



「いただきます。」



うむ、我ながら上手い。朝食を終え、食器を片付ける。一段落した後、椅子に座って息を抜く。



「…………」



此れから如何しよう……自分の正体も判らないし、身体は女の子になってるし……第一、記憶が無いのが一番困る。



「まあ、周囲を憚らず女装できるのは善いんだけど……」



ふと口を吐いて出てきた言葉に少し不安を覚えたが、今は気にする余裕が無い。取り敢えず、状況確認が先なのに変わり無いことは判った。



「さて、何処に行こうか……」



何処、と言っても地理も全く頭の中に無いため、当てが無いことに変わり無いが。……取り敢えず外に出よう。



† † †



綾嶺の屋敷での会話の後、取り敢えず何か調べないと(らち)が明かない……という訳で上野の街に繰り出してきた訳だが……



「……収穫無いなぁ……」


「まあ、仕方あるまい。認知出来ているのが我々だけ、という事だな。」



全く以て収穫無しだ。オレ達以外に斯の状況を理解できる人間がいない。ほぼ日本一の人口密集地である大都会東京なら案外見つかると思ったんだが……



「店長、ΜπλεΒουνο(ブレ・ヴォウンノ)をもう一杯。」


「オゥ、カンヌシサン今日ハ太ッ腹ネィ。」


「もうこっち来て五年になるんだから、そろそろ訛直せよ。聞き辛いったらありゃしない。」


「イヤン、コレガ、μου(モウ)ノΣημει’ο(シメイオ)γοητει’αЕ(ゴイテイアス)デス!」


「英語でCharm pointってか?変にギリシャ語使うから客が入らないんだよ。」


「……“μου”って何だ?」


「英語なら“me”だ。」



とまあ、此れが何時もの展開である。因みに此処はΓΙΑΤΡΟ’ЕΚαφε’Е(ギアトロス・カフェス)という喫茶店だ。店長は斯の怪しいギリシャ人。うちの神社の近くにあるので、比較的利用する方だ。更に言うと「ΜπλεΒουνο」は英語で「Blue Mountain」だ。



「さぁてぇ、此れから如何する?」


「他に判ってそうな知り合いは居ないのか?」


「教授にも悠子にも連絡したが、判らんらしい。」



因みに、オレは一度悠子に、大学の玖廿研究室で会っている気がするのだが、流石に事を知らない奴に下手に言う訳にもいかないので、「お前なら来ると思ってた」って言ったら酷く喜んでたな。


……一寸待て。“会っている気がする”なんて段階じゃ無い。もう“会っている”んだ。オレは悠子と、玖廿零壱研究室で、“彼の”月曜日、“会っている”。



「おい、綾嶺……」


「ふふっ、如何やら、何か掴んだようだな。」


「流石、勘が鋭くて助かる。」



息を整え、頭の中で考えた事を整理する。



「まだ一つの仮説に過ぎないが……聞くか?」


「無論だ。」


「善し。……オレの仮説は、月曜日が“ループ”している、という説だ。」


「“ループ”?」


「ああ。言うなれば“一日の繰り返し”だ。今日の何時かを区切りに、一日がリセットされ、次の“新しい月曜日”が始まるんだ。」


「……(にわか)には信じ難い…が……」


「現に其れが起きている。オレ達が其の証明だ。」


「ああ。……後、何が如何してかは知らんが、うちの教授が最近然う言うのに凝っててね……つい斯の前、“タキオン粒子”に関する論文を読み漁ってたな。」


「タキオン?」



其れは随分と奇遇だな。然し、タキオンか……



「聞いたこと無いか?」


「厭、ある。確か“常時光より速い速度で振る舞い、光速より遅くはならない粒子”だったか?」


「ああ。理論の上では過去への時間旅行を可能にするとか言われているが、世の中では眉唾ものと思われているようだな。」



……厭、此れはもしかすると確定かも知れないぞ。タキオンという存在の可能性だ。今は理論上と言え、タキオンは一粒子……何らかのエネルギーに干渉される事もある筈だ。後は時間がループする境目が判れば文句なしなんだが……



「綾嶺、少し思い返せ。デジャヴュは何時で途切れてる?」


「…………」



暫く考える綾嶺。



「……夕日だ。」


「夕日?」


「ビルの間に夕日が沈むのを見た後に途切れている。」


「其れだ!」



時計を見る。現在17:00。日暮れまで後、約一時間だ。



「日暮れ迄に、何でも善いから証拠を残す。」


「何をするんだ?」


「兎に角、何でも、だ。思い付く限り全ての事をやるしかない。」



斯の世界は今、日の入りを境にループしている。然う考えると全てが綺麗に繋がる。タキオンに因って時間がループしていると仮説するなら、如何にかして証拠を残す事も出来る筈だ。・・・まあ、飽く迄“可能性”ではあるがな・・・



「ふっ、何時に無く燃えてきたぞ。最後まで付き合ってやる。」


「μουニデキルコトハナイ?」


「「お前は黙ってろ!!」」



† † †



「さて…………」



玲慈と共に、身の回りで出来ることは一通りやったが、日の入り迄はまだ暫く時間がある。ワタシだけでも何かするべきだろう。



「斯のまま家に帰るのも勿体ないしな……さて如何するか……」



取り敢えず考え得る選択肢は……更に聞き込みをする……何か証拠を残してループに備える……取り敢えず周囲をうろつく……の三つだな。


むぅ……聞き込みはやっても意味が薄そうだし……証拠を残すといっても思い付く限りのことはやり終えたし……となると、矢張り三つ目が順当だな。


……と思った直後、推し量った様に携帯から着信音が鳴り響く。



「……っと、電話か。」



携帯を開き、ディスプレイを見る。同級生の西園寺匠(さいおんじたくみ)の表示が見て取れる。



「匠か、如何したんだ?」


『お前、今日講義を休んだらしいな。教授が心配してたぞ。』


「……ああ、然うか。其れは済まない。蘇芳之宮綾嶺は元気そのものです、と教授に言っておいてくれ。ワタシは今忙しいんだから、もう切るぞ?」


『一寸待てよ。お前、民俗学科の紫苑と善く一緒にいるだろ?大学内で話題になってるぜ。』


「気にしてる暇が無い。勝手に騒いでるが善いさ。ワタシと玲慈は幼馴染みなんだからな。一緒にいて当たり前だろう。」


『然うか……』


「もう善いか?切るぞ。」


『あ、ちょ……』



有無を言わせず切る。……周囲が妙に静かだ。



「………?」



人の気配が無い。さっきまでは普通に人が歩いていたのに、今では風の音しか聞こえない。



「何だ……何が起きている……?」



気味が悪い。何処を見ても人がいない。駅も、デパートも、コンビニも……何処に行っても人の姿は無い。完全に一人きりだ。


河童橋の道具街迄歩いたが、人の姿は無い。……何か音が聞こえる。



「ん、何だ……?」



耳を澄ませる。……金属音、か?……まるで鋼のぶつかり合う音だ。言問通りの方から聞こえる。



「行ってみるか……」



道具街を直進すると、大きな通りに出た。此処が言問通りだ。



「なっ……!」



鋭い刀を持った着物の少女……一人ではない。二人……厭、三人……厭、もっとだ。視界に入るだけで十人だ。然も全員……



「同じ顔……!」



全く以て同じ顔……厭、顔だけではない。体格、髪の色……身振りの一つ一つでさえ完全に同じだ。一卵性どころの問題ではない。分身(クローン)でも無ければ、此処まで同じということは、“ほぼ有り得ない”。



「くっ、如何する……?」



其れらが全員、武装しているというのも厄介だ。何も武器を持っていないなら()だしも、相手は日本刀を装備している。一つ間違えば八つ裂きだ。更に言うならば、奴らは既に、一人“()っている”。



「ちぃ……」



十人はいる奴らが取り囲んでいるのは、一人の身体・・・此れも着物を来ている・・・全身に傷を負っているが、まだ生きているようだ。すると……



「うっ……」



奴らの一人は右腕を取り、もう一人は左腕を、もう一人は右足を、もう一人は左足を取る。然して……



「…………!!」



両手両足を刀で切断した。血が激しく噴き出す。取り囲まれた一人は口を開くが、声帯が切り刻まれているのか、声は全く出ない。



「…………」



奴らは刀を逆手に持ち替え、一斉に、高らかと振りかざす。



「…………!!」



一斉に突き刺す。辺りに溢れ返る血。取り囲まれた一人は其れを最後にピクリとも動かなくなった。……連中が一斉に此方を見る。



「くっ、気づかれた……!?」



連中が走り出す一瞬前に走り出す。足には自信があるつもりだが、連中は屋根を飛び越えたりして、とんでもない早さで此方に迫る。・・・彼奴等、人間か?・・・走りつつも玲慈にメールを「HELP」と打って送った。



「っ……囲まれた、か……」



携帯のディスプレイから視線を上げた時には、既に逃げ場が無くなっていた。此方に得物が無い以上、斯の人数を相手するのは、かなりの達人で無ければ不可能だろう。そして・・・生憎ワタシは“ただの人間”だ。



「お前ら、目的は何だ?」



末期を予感し、せめてもの手土産にと聞いてみる。



「…………」


「回答無し、か。ワタシも焼きが回ったかな……」



然う言った直後、十人が一斉に突進。



「がぁっ!!」



十もの刀が位置をずらして突き刺さる。味わった事の無い激痛、血の抜ける感覚。



「ぐほっ……」



刃は引き抜かれ、ワタシは地に臥せる。口の中は食道を上がってきた血の味が満たしている。



「…………」



逆さの刃が振りかざされる。先程と同じ手口。一斉に振り下ろされる十本の刀。一つはワタシの頭目掛けて……



「!!??!!」



全身の痛みと共に、脳髄を抉られる得も言われぬ感覚が襲い来る……ワタシの意識は、削り取られる様に薄れていき、やがて消えた…………

如何も。鴉羽霞柳です。


玲「モノクロ神主、紫苑玲慈だ。」


綾「蘇芳之宮家次期当主、蘇芳之宮綾嶺だ。」


今回から綾嶺がレギュラーに加わります。


玲「然し、恐ろしい殺され方してたな……」


綾「斯の作品は善く人が死ぬな。」


何たってループしてますから。死んでも蘇ります。


玲「あんな殺され方は勘弁だな。」


綾「ああ、尤もだ。」


次回は玲慈君がクローン相手に超人的な戦いを見せます。


玲「…………」


綾「………頑張れ。」


では次回予告。


幾度もの回帰(repeat)を重ね、遂にその全貌を見せる仮想現実(VirtualReality)……星の観測者(Stargazer)達は、現(real)と虚(fantasy)の狭間に、来るべき未来(あす)を見る……@Program=S.V.R. Ep_τρι’α「@Loop_end=Rondo Fine」……偽りの現実は、神しか知らない運命(さだめ)すら捩曲(ねじま)げる……


では次回、またお会いしましょう。










綾嶺嬢のミニ数秘術講義


綾「本編中にワタシが行っていた術式は、“小五芒星術式”といって、カバラ数秘術のほぼ全ての術式の基本で、術の始めに行われる事が多い基本術式だ。では諸君、次回も是非見てくれ。」

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