表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天【 FREEDOM’S CROWN 】 ~生きる為、怪物と契約した男~  作者: イチジク浣腸
聖桜教団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/65

地獄への片道切符

「ヘリを出せ! 今すぐだ!」

 ヒカリはヘリのハッチを力任せにスライドさせ、強引に飛び乗った。


「富士ヶ嶺、上九一色村まで――最短経路でぶち抜いてくれ! 喉からエンジンが出るまで加速させてさ!」


 ヒカリはヘリの座席を殴りつけた。


「ッ、了解よ!」


 パイロットが操縦桿を叩き込み、機体は悲鳴を上げながら高度を上げる。 だが、計器を睨んだパイロットが絶望の声を上げた。


「……ダメだ、出力が追いつかない! 最短でも1時間半はかかる!」


「90分? ふざけんな! そんなに待てるかよ……!」

 ヒカリは窓の外、遠く霞む山々を睨みつけた。


  (どうすればいい……あそこにはヒルメが……クソッ、これ以上何も浮かばねーよ!)


 その時、脳裏に牛島の声が響く。

『キミなら――できるはずだ』


「……ああ、やってやる。やりゃあいいんだろ!」

 ヒカリは自分の胸に、心臓を鷲掴みにするような勢いで手を当てた。


「ルシファー……おい、聞こえてんだろ。寝てんじゃねえ、力を貸せ!」


『もちろんさ……しかし、間に合うかな?無茶をすれば間に合うかも知れないが、代償はキミの肉体だ。細胞が焼き切れても知らないよ?』


「上等だ、そんな小難しい理屈は後で聞いてやらぁ。ヒルメを助けられるなら、臓腑の一つ、二つ、くれてやるよ!」


 ヒカリの両眼に、ドロリとした漆黒の炎が宿る。 背中から噴出した黒濁の霧が、重厚な**「黒銀の翼」**へと肉を裂いて変貌した。


  「……悪りぃな、おっさん」

 ヒカリは、唖然とするパイロットにぶっきらぼうに吐き捨てた。


  「おい、何を――ッ!?」


「――こっちのが、早いだろ!」

 ヒカリはハッチを蹴破り、高度数千メートルから虚空へと身を投げ出した。


 ドォォォォォン!!


 空中で翼が爆ぜる。

 重力に逆らい、ヒカリは人とは思えぬ速度で「弾丸」と化した。

 断熱圧縮の熱が皮膚を焼くが、ルシファーの力がそれを強引に再生させる。 ソニックブーム。 遅れてやってきた衝撃波が、雲を円環状にブチ抜いた。


(待ってろ、ヒルメ……今さら地獄に落ちるなんて、俺が許さねえ!)


 死を覚悟した加速の最中、耳を劈く風切り音を突き抜け、携帯が狂ったように震えた。 表示された名は「ヴェレス ※ミュート推奨」。


  「もしもし!? ヒカリ様!」


「 今、空飛んでて忙しいんだよ! 用件を3秒で言え!」


  「どこですか!? GPSがマッハを超えて動いてますよ!」


「ああ、今から富士ヶ嶺まで『散歩』に行くところだ!」


「正気ですか!? 公安の特別機を今すぐ向かわせます、合流してください!」


「……特別機?なんだ、そりゃ?」


  「説明は後ですわ! 私も同行します。ヒカリ様、そのままでは目的地に着いた後、身体が消し炭になりますよ! 私を……私を連れて行ってくださいな!」


「お前を連れて何になる……重くなるだけだろ、算数もできねーのか!」


「失礼しちゃいますね! 私の権能があれば、あなたの盾になれますよ。それに――」


 ヴェレスが一拍置く。


「ヒカリ様が一人でボロボロになるのを黙って見てるなんて、死ぬほど『退屈』なんですもの」


 ヒカリは毒づいた。

「……チッ、勝手にしろ! 2分で作戦を合わせる。降りるぞ!」


 2分後。 雲海を突き抜け、漆黒の流星が公安の特殊ヘリへと急降下した。 ハッチに立つのは、金髪のサイドテールをなびかせたヴェレスだ。

  「……遅いですよ、ヒカリ様」


 ヒカリがヘリの床を蹴り、ヴェレスの腰を荒々しく引き寄せる。 「……! ひ、ヒカリ様……っ」


  「おい、しっかり掴まってろ。舌を噛み切りたくなけりゃな!」


「……はい、喜んで!」


「行くぞ、ルシファー!!」


 ヒカリが再び大空へ躍り出る。 黒い翼が最大出力で展開され、周囲の空間が歪む。


「きゃあああああ!」

 ヴェレスはヒカリの首にしがみつき、その胸板に顔を埋めた。

  (……ああ、やっぱり。この人についてきて正解でした。)


 ───20分後。

 上九一色村。

 原生林の奥深く、腐食した樹木が指先のように絡み合うその中心に、灰色の巨大な亡霊が鎮座していた。湿った苔をまとい、黒ずんだコンクリートの要塞は、まるで大地から這い出した異形の腫瘍。

 辺りを支配するのは、生き物の気配が一切絶たれた静謐。

その巨大な開口部は、迷い込む獲物を噛み砕き、魂まで飲み干そうと待ち構える「悪魔のアギト」そのものであった。


「……あそこか。趣味の悪い建物だな。墓石にしちゃあデカすぎんな」 ヒカリが急制動をかける。摩擦熱で翼から黒煙が上がる。


 屋上へ叩きつけられるように着地。衝撃でコンクリートが砕け散る。 ヒカリはヴェレスを降ろすと、拳を固く握りしめた。


  「……おい、ヴェレス。ここからは『害虫駆除』の時間だ」


「ふふ、望むところですわ。私を退屈させないでくださいね?」


「……ああ。連中には、たっぷり後悔させてやる」

 

二人は迷うことなく、血の臭いが漂う施設内部へと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#異能バトル #グロ描写 #ダークファンタジー #現代ファンタジー #サスペンス #群像劇 #裏社会 #犠牲 #ヒーロー #アクション #グロ描写 #男主人公#サイコスリラー #宗教描写 #ローファンタジー #怪物#チート #国家 #戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ