理由は怖いから
宿舎の食堂で、ヒカリは椅子に寄りかかってため息をついた。
「はぁ…今日も訓練とかマジでめんどくせぇな」
「はぁ...サボろうとしてんの?糞生意気じゃん」
横に座る伊織ヒルメが眉をひそめる。
「うるせぇな!飯食って、寝る方が大事だろ。訓練とかどうでもいいんだよ‼︎」
ヒルメは呆れたように舌打ちをした。
その時、碇誠太が食堂に入ってきた。
無言。足音もせず、ただヒカリを見つめる。
ヒカリは背筋が凍るのを感じた。
(なんだ…この圧…あぁ、やべぇ…あれだ...)
口から思わず出たのは、普段絶対に使わない敬称だった。
「おーい...あ、あの…碇さん…」
「お、おま...マジでビビってる…ぷっ」
ヒルメが横で小さく吹き出す。
碇は黙って座り、視線だけでヒカリを射抜く。
言葉はない。命令もない。ただ圧力だけ。
ヒカリは全身の力を抜けなくなった。
「は、はい…準備、できてます…」
内心では、悔しさと恐怖がぐちゃぐちゃに絡まり合っていた。
(あーもうめちゃくちゃになっちまった。くそ…俺、なんでこんなことで…!)
─────
食堂に入る。
腹が痛い。いや、めちゃくちゃ痛い。
それなのに、ヒカリが床に足を投げ出してでかい声で文句を言っている。
「今日の訓練マジでだりぃ、クソだりぃなぁオイ!」
ああ、うるさい。
でも今は痛い。黙って座るしかない。
だから…無言で近づく。
椅子に腰を下ろす。
視線はヒカリに向ける。
もちろん…殺意はない。ただ腹が痛いだけだ。
ヒカリ、固まる。
「おーい...あ、あの…碇さん…」
ヒルメが横で吹き出すのが見える。
俺は心の中で思う。
(いや、俺、別に怖がらせるつもりないんだけどなぁ…ただ腹が痛いだけなのに…)
ヒカリの完全萎縮っぷりを見て、少しだけ笑いそうになるのを堪える。
(くそ…腹痛ぇ…あの顔、マジでやばい…より痛くなっちまったな。)
伊織ヒルメ
19歳、身長165cm。短い黒髪に鋭い目つき、狼のような雰囲気を持つ。
粗暴な人が苦手で、苦手な食べ物は太りそうなものやトマト(人の食うものじゃないから嫌い)。
大食いだが、氷菓が好きで、嫌いだったが最近あんこも好む。
日光浴を好む。
所属は警視庁公安部・神性事案対策第1課。
碇誠太
二十代前半、身長180cm。眼鏡着用(コンタクトの時もある)。落ち着きがあり合理的。食べ物はザクロ、コーヒー、じゃがいも、タコ、こんにゃくが好み。料理ではカマロネス・ア・ラ・ディアブラやポッロ・アッラ・ディアボラを好む。




