表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕天【 FREEDOM’S CROWN 】 ~生きる為、怪物と契約した男~  作者: イチジク浣腸
聖桜教団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/68

絶望の合一者

男が動く。

速い。

ヒカリが反応する前に、男の拳が顔面にめり込んだ。

プチュッ。

頬骨の奥で何かが潰れ、血が霧になって飛ぶ。

ヒカリは吹っ飛び、壁に叩きつけられた。

ドガンッ。

崩れたコンクリ片が雨のように降る。

立ち上がる間もなく、男がすでに目の前にいた。

腹に蹴り。

グチュッ――鈍い破裂音。

内臓が悲鳴をあげる。

「がはッ!カヒュ...」

喉の奥から血泡が弾ける。

ヒカリは地面を転がり、アスファルトに赤を塗りつけた。

「ヒカリ! 無事か!」

斎藤が叫び、銃が三つの声を吐いた。

タンッ、タンッ、タンッ――。

しかし男の体は、その”声”がまだ空気に溶ける以前にひねられていた。骨が軋むような角度。人にできる所業じゃない。

銃弾は頬を撫でるように通り過ぎ、鎧のような皮膚に熱い摩擦痕を刻んだ。火薬の匂いが鼻腔を刺し、時間は遅れて世界に追いついてきた。

轟音が落ち、振動が遅れて身体を揺らすとき、紙一重の線だけが残されていた。

男はもう、疾風の如く、別の位置に立っていた。まるで因縁が折り畳まれ、次のページがめくられたかのように──静かに、しかし確かに事は終わっていた...

「残念...」

男は斎藤へ向き直る。足取りは静かだが確実だ。

「ッ、させねェ!」

ヒカリが立ち上がり突進する。拳を振るう。

だが男は沈み込むように距離を詰め、ヒカリの右腕を捉えて懐に入った。片手で襟元、もう片手で袖を引き、腰を深く入れる。重心が一瞬で移り、ヒカリの体重が男の腰へ乗る。

「全力か?」──男の声が耳元を撫でる。

そのまま、力を一点に集めて大外刈りを放った。男の刈足がヒカリの脚を払う。ヒカリの体が滑るように宙を描く──がっちりと密着したまま、男は投げきる。

ドガァン!

着地の衝撃が床を伝わり、周囲の建物までもがわずかに揺れた。粉塵が空気を霞ませ、ヒカリは息を切らしながら床に崩れ落ちる。喉の奥からかすかな声──

「ごぉぶッ……!」

男は微動だにせず見下ろす。

「痛いか……」

冷たく響く声。

「合一してるくせに、その程度か。」

ヒカリは体を瞬時に再生し、なんとか立ち上がる。だが全身に重さが残り、動きは鈍い。

「くそっ……なぁ! 今の投げ、反則だろ! ルール守れよ!」

顔を歪め、拳を震わせながら続ける。

「ルール破りのクソ野郎め……テメェみたいな違反野郎を逮捕するのが、俺の仕事なんだゼ‼︎」

少し間を置き、息を整えたヒカリが、僅かに笑みを浮かべて呟く。

「ただ、テメェが強いのも確かだな……」

「当然だ」

男が答える。

「俺はなぁ、マガツの力を完全に支配してる。」

「支配だぁ?」

「そうだ。マガツの意思はほとんどない。俺の自我が強かったからな。」

男が続ける。

「...お前は違う。ソイツと対等な関係だろ?」

「…そうなるな」

ヒカリの中で、ルシファーの声が響く。

『ヒカリ──』

「なんだよ」

『私は縛られたくない。”自由”が欲しいんだ。...こんなイかれた集団に捕まって、夢半ばで死ぬのはごめんだ。キミも嫌だろ?』

「そら、そうよ」

『なら、戦え。対話してる暇はないぞ』

「分かってら」

ヒカリの意志とルシファーの声が、瞬間的にひとつに重なる。息が詰まるほどの緊張の中、彼の体は自然と動き始めた。

ヒカリは拳をぎゅっと握り締めた。

掌の奥で、微かに炎が宿る。

ルシファーの力だ──確かな熱を帯びて。

「行くぞォ!」

ヒカリが突進し、拳を振り抜く。

だが男は体をひねり、拳をかわす。素早くヒカリの腕を掴む。

引き手──男の手がヒカリの腕を引き、重心を崩す。

そのまま、背負い投げ。

腰を深く落とし、ヒカリの体を背中に乗せる。男の足がバネのように弾み、力を前方に伝える。宙を描くヒカリの体が、地面へと叩きつけられる。


──ドガァン‼︎‼︎


ヒカリが絶叫する。

「アギャッ!」

「まだだ」

男はヒカリの腕を掴んだまま、関節技へ移行する。

腕挫十字固め──男の両足がヒカリの腕を挟み、腰を持ち上げる。関節は逆方向に曲がり、ミシッミシッと嫌な音が響いた。

「がっ!」

「諦めろ。無駄だ。」

「黙れァ!」

ヒカリは拳に力を込め、体中から光が溢れ出す。

その力で男の拘束を引きちぎる。

バキッ!

逆方向に曲がった腕が元の位置に戻り、空気が震えた。

「...底抜けだな。」

男が静かに離れる。

ヒカリはゆっくりと立ち上がる。腕に激しい痛みが走る。骨が折れている──だが、神と合一した者は、死んでも蘇る。傷は再生し、痛みは次第に薄れる。

男もまた、同じ力を宿していた。

その瞬間──空気が張り詰め、世界が一拍遅れて静止したかのように感じられた。

一瞬の動きで、男は斎藤に迫る。

「楽な方から片付ける。」

瞬間、斎藤の首を掴む。力は凄まじく、逃れる余地はない。

「ぐっ…」

「そうだよ..コレ、コレ」

男が斎藤を壁に叩きつけた。

ドガァァン!

壁が崩れ、粉塵が舞う。

斎藤は動かない。頭から血が流れ、眼鏡は粉々に割れていた。

瞳孔が開き、目は開いたまま──光は失われている。

死んでいる──確かに。

「マジかよ…」

ヒカリは呟く。

斎藤が...死んだ。

...そうか。

「次はお前だ。」

男が一歩詰める。距離が、刃のように鋭くなる。

「お前を殺して、連れて行く。」

「連れて行く? 何だそれ」

ヒカリが冗談混じりに返すが、声は少し震えている。

「...そうだ。研究材料として価値があるらしい。俺は金がいる。」

男の声は平坦で、ぞっとするほど現実的だ。言葉に空白はない。

そのまま、男の掌がヒカリの腕を掴む。冷たく確かな力。

「ッ、やめろ。テメェ。」

だが、力が入らない。体が動かない。

さっきのダメージが大きすぎる。

その時。

路地の入口から、足音。

速い。

そして。

「そこまでだ」

低い声。冷たいが、確かな声。

振り返ると、男が立っていた。

牛島。

スーツ姿。だが、その体から漏れる気配が異常であった。

殺気。

純粋な、研ぎ澄まされた殺気。

「何ンだよ……アンタが来てくれたのか!!」

「ヒカリ、これはどういう状況だ?」

牛島が男を見据える。その瞳は冷たく、氷のように光っていた。

「お前が……殺ったのか?」

「待て待て……誰だ?」

「警視庁公安部、神性事案対策部1課。牛島純一」

一歩、牛島が前に踏み出す。地面が軋む。

「今際の際だ。遺言はあるか?」

沈黙が落ちる──緊張が、次の瞬間を待ち構えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#異能バトル #グロ描写 #ダークファンタジー #現代ファンタジー #サスペンス #群像劇 #裏社会 #犠牲 #ヒーロー #アクション #グロ描写 #男主人公#サイコスリラー #宗教描写 #ローファンタジー #怪物#チート #国家 #戦争
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ