8 ネックレス
なんだかんだ言ってあの初夜から一カ月がたった。
旦那様の髪と瞳はただの迷信だろう、とほとんどの人は気にせず接してくれたという。
…まあ、中にはそういうのが気に入らない人もいたと聞くが。
私はというと、忙しい時でも何か一品は作れるようにしている。旦那様の笑顔に耐えられる人間なんていない。きっと。
そして今日は、結婚式の衣装と指輪なんかを選ぶ日だ。…楽しみ。
◆◇◆◇◆◇
「主ー。早めに決めてくださいね。
このあと宝石職人来るんですから。」
「分かっている。」俺は着替えたレイチェルを見てかれこれ30分は迷っている。
職人が持ってきた服は3種類ぐらいなのだが、どれも似合っていて選ぶとかできない。
「レイチェル、どれがいいとかあるか?」
「…コルセットはちょっと無理そうなんですが、それ以外なら何でも…」そもそも細いからコルセットいらないだろこれ。
さらに迷った挙句、結局マーメイド式のドレスに決めた。
「旦那様の服はありますか?」レイチェルが職人に問う。
「ございます!」なんかこっちのほうが本気出してないかこれ。
職人が持ってきたのは黒い燕尾服やイブニングなどさまざまだ。
「旦那様、こちらを。」
「ああ、」俺は何種類も試着していく。
「旦那様はどれがよろしいのですか?」
「どれでも良いが…お前が決めたら良い。」
レイチェルは割と悩んで結局紺の燕尾服に前立てのフリルシャツに決めた。
服職人にサイズを測ってもらいその形に変えてもらうように注文する。
「主、宝石職人が到着致しました。」
「ああ、ゆこう。」
宝石職人は指輪と首飾り、懐中時計のチェーンなんかを持ってきた。
「指輪以外にほしいものがあったら言えよ。」
珍しくレイチェルが首飾りに釘付けになっている。普段は服がボロボロになったら切ってぞうきんにしてメイドにあげたり夜食に野菜の端を使ったスープを持ってきてくれたりしている。
俺もどちらかと言うと倹約志向なので別に良いが、今日ぐらい贅沢しても良いんだぞレイチェル。
「あっ、はい。
…この首飾り、なのですが…」
プラチナのチェーンに少し大きめの紫の宝石が一つ通されているシンプルなものだ。
「その…旦那様の色を身近に置いておきたくて…」うちのレイチェル天使。可愛い。
「なら、これをもらおうか。」俺が取ったのは金で深めの水色の宝石が通っている懐中時計のチェーンだ。
「これで、揃いだろう。」なんかちょっとこそばゆい。
「主、別に買ってもいいですけど指輪どうするんですかー。」
「わかったから」
指輪はレイチェルの希望でプラチナのシンプルなものにした。