6 結婚式、ですか。
……
結局、その日は髪を染めずに上がった。
この髪を「綺麗」と言ってくれる人がいるという事実に、少しはこの身体を労っても良いのかもしれないと思ったからだ。
レイチェルがエルサといっしょに俺の着替えを持ってくる。
「…!髪を染めなくてよろしいので?」エルサが驚きつつ、恐る恐る言う。
「ああ…この髪を褒められたのは初めてでな、少し気持ちが舞い上がっているのかもしれん。」
これまで胸のどこかにつかえていた何かが、ストンと落ちるようだった。
着替えながら、レイチェルがふと思い出したように言った。
「…確か、ご友人のランドルフ様が先程いらっしゃいましたが?」
「そうだな…一つこの髪について話さねばと思っていたのだ。会うとしよう。お前も行くか?」
「…よろしいので?」
「…元々、お前に対する態度を改めろと言ったのはあいつだしな。紹介するのも悪くないだろう。」
◇◆◇◆◇◆
俺はランドルフが待っている部屋のドアを開く。
「スチュアート…って、お前、その髪…なんで言ってくれなかったんだよ。」ランドルフは全て察した様子で呆れ顔だ。
「すまんな。だがこれからは、もう染め粉で染めはしない。『呪われた人間』なんて迷信だしな。」
「いいんじゃないか?見目麗しい顔が女みたいだな」脇腹を肘でつつかれた。女っぽいって言ったのは許せんが、友というのも悪くないな。
「ところで、そちらの姫君は…?」俺はレイチェルの肩に手を置き言った。
「我が妻、レイチェルだ。」
「レイチェル・クローディア・アンダーソンです。以後お見知り置きを。」
「ランドルフ・グラントリー・マットンです。お前の奥さん綺麗だ「やらんぞ」
レイチェルが振り向いて俺の眉間に手を伸ばし広げる。
「旦那様、眉間にしわが」
「ああ、すまんな。」
(ラブラブじゃねえか)
「そういえば、用というのは?」
「ああ、俺も近頃縁談が決まってな。それで、式を挙げるんだが…ていうかお前ら式挙げたか?」
「あ…」
「挙げて無いですね…」
忘 れ て た 。
「そんなこったろうと思ってたけどな…話し合っとけよ、お前ら。」つくづく口うるさいなこいつ。
「分かっている。」
「よし、そうと決まればトランプでもするか。」
「何でd「あ、奥さんもどうですか?」
「…!喜んで」
その後、仕方なくレイチェルたちとトランプをした。
レイチェルに負けたのは別に良いが、ランドルフに最後の最後で負けたのは不愉快だ。猛烈に。
◆◇◆◇◆◇
ランドルフが帰った後、二人で夕食を食べる。
レイチェルが気まずそうに口を開く。
「その…旦那様は式を挙げたいのですか?」
「お前はやりたいのか?」レイチェルは顔を真っ赤にしてボソリと言った。
「やりたいです…」…そういうところだレイチェル。
「…良いぞ。休みの日にドレスでも選びに行こう。」
「あ、ありがとうございます…」
…元々は食事中に喋るのなんか嫌いだったのにいつの間にか今日あったこと、面白い話なんかをするようになっている。
「好きな人ができると変わる、か…」
「えっ?」
「…!ひとりごとだ、忘れろ。」
ネタが決まらん