45 美しい瞳
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「…それで、スチュアートは無理をして奥方が固有魔法で駆けつけ事なきを得た、と。」
ランドルフ様はにこにことこちらを見る。旦那様のみならずニコル様まで蛇に睨まれた蛙のように縮こまっている。
「あのねえ…?」彼は軽く息を吸い、まるで母親が息子を説き諭すような口ぶりで言う。
「無茶はするなって散々言ってるでしょう!?こんの考えなし!!」彼は今にもベッドから飛び出て旦那様たちを殴りそうな剣幕だ。
「…ランドルフさん、そのくらいで」ラウル様が止めに入る。
「無茶をしちゃいけないんじゃないんとちゃいます?」不敵な笑みを浮かべる二コル様の脳天に、マター様の杖が会心の一撃を繰り出す。
「痛ったぁ…」
「図に乗るな、二コル。笑い事では無いのだぞ。」
「…まあ、俺のために怒ってくれたのはありがたいけど…もう少し慎重に動いても良かった、と思う。」
「確かにスチュアートさん、二コルさんたちが居なかったら死んでた気がします。」
「…うるさい」
「あら旦那様、忠言はしっかりと聞くべきでございましょう?」旦那様は押し黙ってしまい、口をへの字に曲げてそっぽを向いた。
「あらあら」…まあ、そんな所も可愛らしいんですけれど。
「…ところで、スチュアート貴方新しい固有魔法発現してませんでした?」
「ああ、『鉄槌は下される』のことか。あれは確かについさっき追加で発現したやつだな。」
「「「ええっ!?!?」」」皆驚きの声をあげる。
「あの魔法は恐らく…自分の瞬発力が他より速くなるという物だと思う。」
「上から見ていて、敵兵は突然襲い掛かられて驚いた…というよりかは後から攻撃されたことを知った、というような感じでしたね。」
「そして、速くなった分長時間使うと身体に負担が掛かり―レイチェルの固有魔法をもってしても完全な治癒は不可能だった。」
「私の『流星は輝く』は、旦那様が首に下げていたチャームのように私が贈った品を持つ対象の人物の付近に瞬間移動でき、かつその対象に何らかの治癒、あるいは傷を与えることが出来る、というものです。」
「固有魔法における治癒は基本、ほとんどの傷を癒すもの。…まさか、生涯残るような傷になったり…」
「…そのまさかかも知れん、ランドルフ。」マター様が渋い顔で言う。
「…やはり、そうだったか…」
「旦那様、それは如何なることで―?」
「ま、まさか…」ラウル様がぎょっとする。
「目の色が薄くなってきている。」以前は美しい深紫だったのに、白い色水を垂らしたかのようにやや濁っている。
「とにかく…スチュアート、体感だといつぐらいから身体に負荷を感じた。」
「……恐らく、二分ぐらいだ。」
「…気休め程度にしかならんかもしれんが、湯治なりにこまめに行った方がいいな。」
「使い過ぎないようになさってくださいね、旦那様。」
「…分かっている。」
「…あの―、」二コル様が申し訳なさそうに言う。
「こんな時に何なんですけど、主から至急戻るように、との事です。」
「…承知した。皆の者、急ぎ出立の用意をせよ!」
マターがみんなのまとめ役みたいになってる(若干後付けっぽくなってすみません)




