42 賭け
「『取引をしよう』!!」
辺り一面に光の杭のようなものが打ち込まれ、半球状の膜となって包まれる。
「貴様―」奴がニコルに向かって殴りかかる。
「おやまあ」ニコルが手をかざすと、その拳は空でピタリと止まる。
「オクタ様、」近衛兵がサーベルをニコルに向けて投げるが、サーベルは途中で見えない壁のようなものにあたって地面に落ちる。
「乱暴はお辞めくださいな。」
「…何がしたい」
「オクタ様、賭けはお好きですか?」
「少なくとも、負けたことは一度もないな」奴は自信満々に豪語する。
「それは良うございます」ニコルはにこりと笑って両手を広げる。出てきたのは2脚の椅子とテーブル、そして木のコップと二つのサイコロ。
「せっかくですし、今回は賭けを致しましょう。このサイコロを2個このコップで振り、出た目の合計値をそれぞれ予想していただきます。その後コップを取り、合計値が近い方が勝ち。全部で3ゲーム、ディーラーは私で宜しいですね?」
「条件はどうする」慎重なはずの奴にしてはやけに乗り気だ。
「負けた方は勝った方と魔法なしで戦わなければならない、などはいかがでございましょう?」
「良いだろう」ニコルが俺に目で座れと合図する。流石に魔法なしでこの人数は少し無理があるが、何か勝ち筋でもあるのか?
ニコルはふと真顔になり、声を落とす。
「……これは警告です。この中では、いかなる理由があろうとも賭けの結果に逆らうことは許されない。
両者とも、破ればそれ相応の罰が下ることをゆめゆめお忘れなきよう。」
そう言うと、ニコルはぱっと笑みを取り戻した。
「では、コインで順番を決めましょう。表がオクタ様、裏がスチュアートです」
ピン、とニコルはコインを指で弾き上げる。コインは勢いよく空中に躍り出て、ニコルの手の元に落ちた。
「表にございます」
「ふん。当然だ」こいついちいちうるさいな。
「ファーストゲーム、開始いたします」
ニコルはコップにサイコロを2つ入れ、机にかぶせて星を描くように振った。
「先攻、オクタ様から」
「では…7で」やはり初手は堅実にいくか。
「5でいこう」
「お二方、後悔はございませんね?」
「ああ」
「では…ショーダウン!」
ニコルがコップを持ち上げる。
「4と3…ファーストゲーム、オクタ様の勝利!」奴はハッと笑い、こちらを見やる。
「残念だったな。俺の勝ちだ」
「まだ始まったばかりだろう」
「セカンドゲーム、開始いたします。」
ニコルはコップにサイコロを2つ入れ、机にかぶせてまた星を描くように振った。…もし、そうであるならば。
「先攻、スチュアート殿。」
「そうだな…3で行こう」奴は途端に吹き出して大笑いした。
「馬鹿め!また負けたいのか!?」
「お客様、お静かに願います」
「ふん…8で行こう」
「後悔はございませんね?……ショーダウン!」




