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40 罠

◇◆◇◆◇◆

城を辞した後、俺たちは馬車に乗って門外にある農村へと向かった。

「…うまくいきすぎている」周りを見渡してから、ランドルフがぽつりと呟く。

「家臣の話し声も明らかに疑っているものでしたしね。……スチュアート?」

何か、頭がひどく痛い。キーンと耳鳴りがし、視界がぼやける。

「スチュアートさん、どうしたんですか!?」

「おい、早く拠点に戻るぞ!」

周りの声が遠のき、意識が薄らいでいく。

なぜ、気づかなかったのか。思わず己の情けなさに失笑してしまった。

「大丈夫か、スチュアート!?」

「済まない」意識はそこで途切れた。

◇◆◇◆◇◆

「主」殺風景な作戦室にいたロバート―もとい己の主君に、カリストロは話しかける。

「何だ」

「先ほどマターから、上級速達で報告が入りましたが」

上級速達というのは、術者が速やかに情報を伝達する必要があり、伝達者以外に情報を漏らしたくない場合に用いられるものだ。伝達者の脳内に直接伝達されるため、余程の妨害呪文を受けない限り必ず伝達が可能だ。しかしその特性上大量の情報を伝達することは不可能かつ、術者は伝達する内容が多ければ多いほどかなりの精神力―一般には魔力―を必要とするので文書でのやりとりが一般的である。…緊急時を除いて。

「聞こう」

「スチュアートが敵の攻撃と思われるものを受けたとのこと。今後も妨害を受けると思われますが、いかがいたしますか」

「そのままでいい」ロバートは空を見つめたまま答える。

「宜しいので」その声はさもありなんという風であった。

「わざわざ言わせるな、カリストロ。お前も分かってるだろう。」

「……」ロバートの腹心は何も言わない。ロバートはどこか楽しんでいる様子で口を開く。

「奴らは恐らく、我々を罠にはめた気だろう。

……果たして、罠にはまったのはどちらなのだろうな。」

◇◆◇◆◇◆

「ん…?」光がまぶしい。

「ようやく起きましたか、スチュアート。」

「…本当に済まない、迷惑をかけた。…今日は何日だ?」

「今日は15日、お前が気を失ったのは12日だ。この寝ぼすけめ」ランドルフにマグカップで小突かれる。ぬるめのミルクティーを飲み干し、ベットから出て軽く着替える。

「そういえば、作戦の方は上手く行ってるのか」

「金に糸目をつけずにやったらまあお察しの通り、サクサク進みましたよ。今日中には終わる見通しです」

「…俺も行って良いか?」

「勿論。」

シチューとパンを食べ終えて、早速馬車に乗ろうと外に出る。

「…空気が澄んでるな」

「まあまともに景色なんて楽しめてなかったですしね。」

突然、視界の端で何かが光った気がした。

「スチュアート、危な―」

一瞬、何が起こったか分からなかった。

ランドルフが俺の前に庇うような形で飛び出し、肩の辺りに勢いよく矢のようなものが刺さる。

「馬鹿な…」ランドルフはその場に崩れ落ちる。

その瞬間、俺の中で何かが弾けた。

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