36 次の戦場
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………
数日ほど経ち、出立の日になった。
「では、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ」レイチェルにおんぶされているフィリーも、きゃっきゃっとはしゃいで手を振る。
「はい、名残惜しそうにしてないで。ちゃきちゃき行きますよ」相変わらず鬼だなロバート。
しぶしぶ馬に跨り、城へと赴く。
「次の城は確かファクトリアー城だったか」
「ええ。確かハスク家の従兄弟が治めてるとかで、それなりに大きかったはずですけど」
「前のようには行かない…と。面倒だな…」
「案外、金で釣ったら何とかなりそうですけど」
「その金を工面するのは誰の役目だと思ってる」
勿論俺だけでなく巧みな交渉力を持つ(少し年上の)熟練のマター殿、大抵の計算なら暗算で出来る(年下の)ナウル殿などもいるわけだ。が、何しろ総量が多い上に税の取り方などが一定でないし、おまけに「すぐ終わるから楽だよな」などと軽んじられることだってあるのだ。
「はいはいすいません」
「謝ってる態度じゃないだろう…」
◇◆◇◆◇◆
「スチュアート、久しぶりだな」
「ああ、体調の方は大丈夫か」レイチェル伝いにランドルフの体調があまり良くないと聞いた。
「ただの風邪だ。気にするほどのことじゃない」ランドルフは微笑を浮かべる。
「…本当だろうな?」この男、前科はいくらでもあるからな。油断はできない。
「「スチュアート」さん」後ろから同時に声をかけられる。
「ニコルにブラン…ってだめだこれ」二人はもう睨み合って口論を始めている。
「なんでいっつもいるんだ異端者」
「あんたに言われとうないですっていうかいい加減に異端者言わんといてくれます?」
「一生無理だな」
「…おい、ニコルいつも以上にまずくないか?」
「確かにって…え!?」二人は剣に手をかけて今にも抜こうとしている。
「おい、やめー「何だ、剣術の稽古か?俺も混ぜろよ」アベルが口を出して結果的に割って中に入る形となる。
「…次は覚えておけ」
「負け犬の遠吠え見苦しいんですわ」
「おい、何でやめるんだ?」
「…もうそろそろで軍議が始まる。急ごう」
そういえばもうあと10分で軍議か。廊下を早歩きしながら、ランドルフがニコルに話しかける。
「…何かあったのか」
「せっかく昨日ジュスタとできたっちゅうのに、このザマなんてキレるに決まっとります」
……そういうことか。まあ…俺ももし、これと同じ状況ならブランを叩き切る自信がある。
「アベルのおかげで救われたな」
「馬鹿って言わない」母親かランドルフは。




