特別編 もう一人の
ちょっとR15くらいかもしれないので無理な人はブラウザバックでお願いします
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小さい頃から、男として生きていた。
父に髪を伸ばすことを禁じられ、毎日武芸の稽古や勉学に勤しむ日々だった。別に勉強は好きだったから良かったが、父と母の仲はどんどん険悪になっていて、自分は生まれないほうがよかったのだなどと思ったこともある。
「…私は、生まれるべきじゃなかった」
「そんなことを言ってはいけませんよ、姫様。
貴方様の人生は貴方様のもの。誰一人邪魔することは出来ません。姫様は姫様の好きなように生きていいんですよ」仲のいいアリスだけは唯一私のことを「姫様」と呼んでくれて、毎日一緒におしゃべりをする日々だった。
だけど2年前、アリスは父の身の回りに仕えることになった。もちろん屋敷の中ではいつでも会えるし、そんなに変わらないなと思っていたある日。
剣術で指南役に初めて勝ったことがうれしくて、見かけたアリスに報告しようと父の部屋をノックしようとしたとき。
「あり…す…?」ドアの反対側から布製の何かが落ちるような音、水が滴るような音、アリスの悲鳴が立て続けに聞こえた。音はだんだんと大きくなっていって、私は思わず尻もちをついて後ろにのけぞった。
「は、はやくははうえに…」身体が動かない。実の父に親友ともいえるアリスが、、、いやそんなはずはない。きっと何かの聞き間違い。そう、そうよね。そうじゃないと、私は……
ふいにアリスの金切り声のような悲鳴が屋敷中に響く。
「嘘じゃ…ない…」母が来るまで、その場に固定されたように私は動けなかった。
………
「おい、何突っ立ってんだ」誰かに話しかけられる。ああそうか、私はこれから火あぶりで死ぬんだった。何昔のことなんて思い出してんだろ。バカみたい。
「…いくら敵とはいえ、もう少し敬意を持て。」私を拘束した「呪われた人間」が咎める。
…「呪われた人間」だなんて言うくらいだからもっと醜いのかと思ってたけど綺麗ね。確かアンダーソン家の娘が嫁いだと聞くけれど、
「……幸せなんだろうなあ…」涙で前が見えない。心の中につっかえていた何かがあふれだしていく。
「おい、大丈夫か」「呪われた人間」が心配そうにこちらを見やる。人生って思うようにいかないものね。生まれ変わってやり直したいくらい。
十字架に四肢を縛られ、いよいよその時が近づいてくる。
「スチュアートさん…でしたっけ。一つだけ、最期に。…私の本当の名前は、フィリー。」
火がつけられ、だんだんと燃えていく。でも不思議と辛くなくて、暖かい。
「アリス…!迎えに来てくれたのね。」…どこまでもお節介なんだから。
ーフィリー・ピッチ・ハスク。この時僅か8歳であった。




