29 それは突然に
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年が明け春になったはずなのに、やはりまだ寒い日ばかりが続く。私の腹部はこれまでにないぐらいに膨らみ、今ではほぼ毎日医者が付きっきりになっている。なぜ、こんな良すぎる待遇なのかと言うとー。
「レイチェルさん、具合は大丈夫そう?きつかったら遠慮なく言ってね。」
「レイチェルさん、久しぶり。体調は大丈夫そうかい?」
「お義母様にお義兄様、お久しぶりです。体調は大丈夫そうです。何も心配することでは…」
「そんなことないよ!誰だって身内に子供ができたら気にかけるものだろう?それがあのスチュアートときた。今は領内の仕事を変わるぐらいしかできてないけど、何か手伝って欲しいことあったら言ってね。」このものすんごく優しいお義兄様はセシル・オクト・アンダーソンと言います。
エルサが入れてくれた紅茶をじっくり味わい、二人でお話する。
「私がスチュアートを産んだ時は逆子だったのよ、あの子。だからなのか、出産についての手紙が来たでしょ?」
「ええ…」何かの本かと思うくらい分厚かったけど、端々に体調には気をつけてくれとか何かあったらすぐに知らせてほしい、とかあってちょっと嬉しくなったものだ。…早く会えないかな。
そう思っていた時だ。急に私はこれまで味わったことのない吐き気に襲われ、腹部が痛みだした。
「レイチェルさん!?」
「医者はどこだ!急いで!」まだ予定よりは早かったはずなのに、こんなこともあるのか。
駆けつけた医者と産婆さんたちの指示で産屋のベットにゆっくりと寝かされる。
「これは…逆子!?」医者は驚きを隠せない。
「いくら触診しても、一向に予兆なんて無かったのに!?」ふと、お義母様が口を開いた。
「もし何かあれば、レイチェルさんを優先してくださいね」
「何故ですか、」お義母様はピシャリと言った。
「貴方が死んだら、元も子もないじゃない!
貴方はスチュアートや私を悲しませたいの!?」
「いえ、」私のことを思ってくれているという事実に、涙がでそうだった。
「さあもうひと踏ん張り、頑張りな!」
「はい!」産婆さんの激励に背中を押され、私は無事に子を産むことができた。
◇◆◇◆◇◆
開城の段取りを進めていると、ロレーヌがすごい勢いで走ってきた。
「どうしたロレーヌ」
「どうしたも、こうしたも、ないですよ…」しばらく息を整えてから、一通の手紙を渡す。
「奥様のお子が生まれたとのことです」
「え?」予定ではもう少し後だからもしかしたら立ち会えるとか思っていたのに…
「落胆が顔に出てますよ、さっさと会うために仕事してください」
手紙を読むとかわいい娘だったとのことで、どっちも天使みたいにかわいいんだろうなあとか思いながら嫌々段取りの続きに戻る。あー早く帰りたい。
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