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27 誇りと慈悲

使者は両手を広げて答える。

「そりゃあ、民を守るためですよ。」どの口が言うか。ニコルが言葉を続ける。

「…お前、降伏の条件をもう一度言ってみろ」

「一族の命と所領安堵ですけど」

「よくもぬけぬけと言えるものだな」ニコルはため息をつく。

「我々は城下に放火を行った際に勧告しましたけどね。これ以降降伏を申し入れられても受け付けないと。民を守るならなぜこの時点で降伏しなかった!」ニコルは使者の襟口をつかんで叫ぶ。

「ニコr「よい」はじめからこれが目的だったのか、主は。

「誇りのためだ」

「は?」途端、ニコルが殺気立った。

「誇りのため最後まで戦おうと思ったがそれももはやかなわない。残りの生は皆を弔おうと思う、と殿下は仰せであった。」ニコルの襟口を持つ手に力が入り、首を絞める手になる。咄嗟に二人で止めに入る。

「やめろニコル!」ランドルフがニコルを羽交い締めにして、何とか二人を離した。

「あんたらには分からへんのや!」ニコルの方便を聞いたのは何年ぶりだろうか。おそらく、ニコルがブランと初めて会ったきりだろう。荒い息を整えながらニコルは絞り出すように言った。

「あんたらの中途半端な誇りで何人死んだと思てんねん。挙句の果てに第一優先は一族…ふざけてんのか?そういう生半可な覚悟は民にとって一番害悪なんや!」と、主が突如口を開いた。

「ということだ。こちらとしては、税で民を苦しめ続ける輩の命なぞ助けるつもりはない。」

「へっ…?」

「分かったらさっさと出ていけ。」そう告げて主は部屋を出ていった。

「ニコル、行こうか」

「………ああ。」ランドルフに連れられ、ニコルは無表情でそれに続く。

「それでは、これで。」俺は慌てて二人の後を追った。

◇◆◇◆◇◆

ニコルの話によれば、洪水の後、ニコルのいた町は中途半端な支援のせいで余計に死者が増えたという。

「僕の家は商家だったんですけど、あのあと堤防の工事に参加しなくなってしまって。うちの父がなんでまじめに働かないねんって怒ったらなぜかあっちまで怒り出して。今もう恵まれてるんだからこれ以上することないだろ商家ごときが、って。結局、その後どこからも支援がなくなって皆病気にかかって死にましたけど。中途半端な慈悲というか誇りというか、そういうのって一番迷惑なんですよ。領主は相変わらず重い税取るし、教会は哀れむだけで何もしない。僕思ったんです、人って皆自分の利益だけ考える野郎だって。だから、僕も好きに生きさせてもらおう思うんですわ。」その声はどこかかすれていた。


ここでは関西弁ぽくなってますが架空の方言ってことで

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