23 あまり気分のいいものではない
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「よう帰ってきた、早速これを着て一緒に行くぞ!」ロジャー様は帰ってきた俺たちに早速何か渡す。
「これは…敵兵の甲冑!?」ランドルフが声を上ずらせる。
「ああ、これから敵を水攻めにする。せっかくだしついて来い。」
「しかし、主自ら行くほどでは…もし仮に見破られたらどうするので!?」ニコルがいつも以上に焦っている。
「これは命令よ。それに、お前らが負けるような相手ではあるまい。」
「…承知致しました。」
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「貴様ら、何者だ!」門番に早速出くわす。
「ここは俺に」ランドルフが前に出た。
「我々は食料調達班だ。敵の妨害でいささか遅れてしまったこと、お詫びしよう。」
「これは失敬。難儀なお役目、ご苦労だった。お通りあれ。」門番はいとも容易く門を開ける。中身も検分しないとは、ただ突っ立ってるだけだな。門をくぐり目立たないところに荷車を置く。
「ところで、本物の食料調達班は?」
「すでに殺している。ちょうど4人だったから調達する手間が省けたよ。」そう笑っているものの、俺にはその目がまるでつまらないものをみる目にしか見えなかった。
城下町は所々燃えた跡があり、行き交う人々はどこかやつれている。
「そこの兵士さん」杖をついた男が俺に話しかけた。
「教えてくれないか。…儂たちは勝てるのかを」男は悲痛な顔で問いた。俺は必死に感情を隠してまくし立てる。
「何を弱気なことを。今はまだこんな有様ですが、いずれ勝どきをあげる時がきっとやってきましょう。成り上がりの農民になぞ負けてなるものですか。」
「そうじゃ…そうじゃな…済まないなぁ、兵士さんよ。」男はひとり納得した様子で礼を言い去っていった。
「主、先ほどは非礼を…「よい」主が遮った。
「今はそんなことより、櫓に登り事を完遂することのほうが先よ」
気を取り直して、櫓へのはしごに向かう。
「どうした、なんかあったかー?」櫓の上から声がする。
「もう交代の時間ですから、後は我々にお任せください。」ニコルが朗らかに返す。
「そうかー、今降りる。」降りてきた男は俺たちをみてから口を開いた。
「お前ら、見ない顔だな。」
「志願兵でして。」
「そうか、いやあありがたい。では、見張りを続けてくれ。」
難なく突破しはしごを登る。
「さすが櫓だ、城の様子がよく見える。」
「ああ。焼け落ちた教会もよーく見える。」主はトントンと指で板を弾く。
「さあ、よく見ていろ。」主はにやりと笑い、パチンと指を鳴らす。途端、雨雲が突如として城の真上に現れ、雷を伴って雨が降り出す。その雨の量は恐ろしいくらいに大量で、排水が追いつかず道はぬかるんで冠水していく。
「…!」見れば、先ほど話した男はぬかるみに足を取られているではないか。
「た、助けてくれー!!」
「神様、なんでですか…!」
「もう終わりだぁ!!」あちこちから悲鳴や絶望を叫ぶ声が聞こえ、俺はいつの間にか耳をふさいでいた。
「これでも、まだ被害は少ないほう…なのか」苦虫を噛み潰したような顔でニコルが呟く。
「これで、開城するといいのだが…」ランドルフも完全に困惑の色を示している。
「愚かよな」主が呟く。
「先ほどまで儂を散々罵っていた挙句これよ。
人とは何か縋るものがなければ弱いものだな。」
その声は嘲笑とも罵倒とも違う、無機質なものだった。
「さあ、戻るとしよう。」
「ど、どうやって!?」ランドルフが慌てる。まあ、本当に俺たち手ぶらだしな。
「もちろん、ここから飛び降りて。下にアベルいるから大丈夫だろ。」人選間違ってないかそれ!?




