2 なぜ俺が怒られるんだ
初夜の翌日、俺が朝起きると大声で怒鳴られた。
「リヨン、奥様はどうなされたのですか!!!」
「エルサうるさ「怒鳴られて当然のことをしてるんですよリヨン!!」
なぜエルサ…このメイドが俺のことをリヨンと言っているのかといえば、幼いころ神父見習いとして教会に入ったときに身元がばれないよう偽名で呼んでいたからだ。普通に考えてうちの家は一応貴族なので神父見習いとして教会に入るのはおかしいのだが、社会経験と言われ入れられた。そこでいじめられたから2、3年でやめることになったがいまだに教会が好きになれない。それを知ってか知らずか、小さい時からずっと一緒だったエルサは俺を叱る時この名前を使う。正直やめてほしい。
「昨日奥様を置いていったでしょう!?初夜なのに!!」
「いや別に本人もいいって「そういう問題じゃありません!!」
むしろ何が問題なんだろうか。俺はエルサを振り切って書庫に向かおうと着替えを済ませる。
「書庫に行く。朝食は後でいい。」
「せめて朝食は奥様と一緒に食べてくださいね!!」
エルサの怒号を無視しつつ、書庫に向かう。
書庫のカギは日が昇ってからメイドが開けているが、こんな朝早くから使う人間などほぼいない。せいぜい俺ぐらいだ。
ドアを開け、中に入る。奥の棚のほうに、人影が見えた。気のせいだろうか。とりあえずいくつか本を読んで朝食に向かうことにした。
朝食は何の変哲もなく終わった。あっちも何も話しかけてこないし、俺からも話しかけない。なんていいのだろう。実家は割と食事中も喋るのであまり好きではなかった。
「では、行ってくる。」
そういって屋敷を後にし、ロバート様の屋敷へと向かった。
◇◆◇◆◇
「よう、スチュアート」話しかけてきたのは友人のランドルフだ。
「お前、最近結婚してなかったか?」
「したというか昨日初夜だったな」ランドルフの顔が固まった。
「お前何してんだよ!!」
「何をしているといわれても仕事に来ただけだが」
「そうじゃなくてなんで結婚してすぐに新妻放り出すんだ!?」
「別に愛し合っているわけじゃないしいいd「いいわけないだろ!」ランドルフはため息をついて俺に言った。
「愛してなくても他人の目があるだろう、メイドだって主人が気にかけてない奥さんの世話をしようとは思いにくい」
「そのような態度の者を解雇すればいい話だ」
「それは奥さんが傷ついてからになると思うけど。」
「む…」考えてもいなかった。あの感じだと傷つくどころか反撃しそうではあるが一応、万が一も考えなければならない。
「明日休みとって、散歩でも何でもいいから奥さんと一緒に居ろよ」
「……そうする」
◇◆◇◆◇
仕事が終わり屋敷に帰ってから、夕食の時間になった。
勇気を出してあいつ…じゃなくてレイチェルに何か誘おう。
「お、おいレイチェル。
明日俺は休みで暇なんだが…その、どこか行きたい場所でもあるか?」レイチェルは微笑し答えた。
「私のことはお気になさらず、旦那様はお休みをゆっくりとお楽しみくださいませ。」その微笑が怒っているようにしか見えないんだが、俺には。
「その、先日は無礼なことをした。…仮にも妻とあろうあなたを置き去りにしてしまったこと、ひどく反省している。」
「お気になさらず。お話がそれだけでしたら、自室に戻らせていただきます。」
…お願いだからその微笑をやめてくれ。