18 他人というのは羨ましいものです
◇◆◇◆◇◆
「レイチェルからの手紙?」
書類を探していると、一つの手紙を見つけた。
「…よくまとめられている」
そこには各村の情報が細かく正確に書かれていて一目でわかる。さすがレイチェル。
『追伸
旦那様もお忙しいでしょうが時折お返事を頂けると嬉しく思います。
9月10日 レイチェル』
「ロレーヌ、」
「ああそれ机のはじに置いといたんですけどね、書類に埋もれてたから忘れてたんじゃないんですか」
「ば、馬鹿な…」俺は膝から崩れ落ちた。ロレーヌはため息をついて言った。
「申し訳なく思うんだったらさっさと返事書いたらどうです」
「書くに決まってんだろ」俺は急いでペンを取る。
「これを速達で」書き終わった手紙を近くにいた伝令兵に渡す。
「そろそろ戦況動いてほしいんですけどねー。」
「もうすぐ主の策が動くころだ。きっと何とかなるだろう。」
……
「久しぶりーレイチェルちゃん」久しぶりにリリーが訪ねてきた。
「最近あまり会わなかったけれど…何かあった?」
よく見ると、肌がいつにも増してツヤがかかっていて、どこか嬉しそうだ。
「そうなの、」リリーは羽織っていたカーディガンの首元をめくる。
「……!」そこにはくっきりと赤い跡がついている。
「…旦那様がこっちへ近況報告しに使者として帰ってきたからね。」
なんでランドルフ様はこっちに戻ってるのに旦那様は手紙の一つもないのだろうか…
そう思いながらも話していると、エルサが部屋に入ってきた。
「奥様、旦那様から文が届きましたよ。」
「見せてちょうだい」その場で受け取って封を切る。中にはびっしりと指示が書かれた複数枚の紙と小さなメモが入っている。
指示が書いてある紙は余す所なく書かれていて、後で書き足したのか追伸が追伸の内容量ではない。いかにも旦那様という感じでちょっと笑ってしまった。
「小さなメモの方にはなんて書いてあるの?」
リリーに言われ小さく畳まれたメモを広げる。
『レイチェルへ
まず始めに、このところ返信できておらず申し訳ない。これから一ヶ月に一度は返信できるようにする。
報告書の件についてだが、詳細は別の紙にまとめておく。分からないことがあれば使者に聞いてほしい。そちらは寒い日が続いているはずだが体調は大丈夫だろうか。冷えやすいから体調管理には気を配るように。
スチュアート』
「……!」視界がにじみ、水滴が手の甲に落ちる。
「よかったね、レイチェルちゃん」
◇◆◇◆◇◆
その日の夜、書庫から持ってきた本をベッドで読んでいると、遠くから物音がした。
どうせ風のいたずらだろう、と思い直すも足音は確実にこちらへと近づいてくる。
「最近はベルーナでも野盗が出ているとか」エルサに言われた言葉が脳内で蘇る。
ドアがゆっくりと開く音がする。私は咄嗟に、持っていた本を構えた。




