15 悪夢
****
私はベッドからむくりと起き上がり、朝を迎えたはず…だった。
「ここは…?」
辺りは一面真っ暗で、火を灯さないと歩けない。
しかしいくら歩いても何も無く、起き上がったベッドも消えていた。
ふと、目の前にドアのようなものが出てくる。
ここにいても何も変わらないだろうからと、ドアを押して外に出る。
外は少し肌寒く、木々の葉は赤く染まり散っている。
ガヤガヤと言う声がしたのでその方向に歩くと、断頭台があるようだった。これから罪人の処刑でもあるのだろうか。
観衆の声が大きくなり、罪人らしき人物が登ってくる。
「旦那様!?」
その白い髪に紫の目はまごうことなく私の旦那様だった。
「『呪われた人間』め!」
「あまつさえ 様に逆らって!」そう言って石を投げつけるものや泣くのをじっとこらえる子供たちもいる。
ん?
この子供たちは心なしか…旦那様に似ている。全員紫の目を持っているのだ。何故だ?
「これより処刑を開始する!」旦那様は木枠に首を固定される。
「やめっ…」そう叫ぼうとしたが声が出ない。
処刑人が紐を引っ張ろうとする。
涙で顔がぐしゃぐしゃになりながら必死に止めようと魔法を使おうとするが発動しない。
なぜ、発動しないの!?これじゃ旦那様が、
◇◆◇◆◇◆
「やめて!」私の声が寝室に響く。
「おいレイチェル、大丈夫か?」
「えっ…旦那様?」
「奥様はかれこれ三日!片時も起きずにいらっしゃったんですよ!」エルサがずいっとこちらに寄ってくる。
「…心配した。」そう言う旦那様の声は心なしか震えている。
「あれは、夢…」
「何の夢を見たんだ」恐ろしすぎて口が動かない。記憶にあるのは、断頭台に連れて行かれた旦那様と旦那様に似た子供たち。
「いえ、何でもありません。」
「そうか…?」旦那様は私を見やり、ため息をついた。
「…何かあったらちゃんと俺に言え」
「はい」
そう答えると旦那様は私にキスを落とし部屋を出ていった。
「起きられましたか、本日の朝食でございます。」入れ替わりで入った料理長にパン粥を渡される。
「実はこれ、旦那様が作られたんですよ。」エルサが耳打ちした。
「起きられないときもずっとタオルを替えたり不寝番をしたりしていましたしね。」
一口食べる。素朴な味はおいしく、思わず涙が出る。
「奥様!?」
旦那様の温かみを感じられて初めて安堵できた瞬間だった。
……
レイチェルが夢の中にいるように眠ったままだと医者から聞いたのは一昨日の朝だった。
息はしているが、話しかけても揺すっても起きないと。
俺はしばらく喉に何も通らなかった。ロレーヌに水を飲めと言われても身体が拒絶するほどだ。
だからレイチェルが起きた時に嬉しくなると同時に、夢の内容が何か影響を与えているなら今後も何かあるかもしれないと不安がよぎった。
「ロレーヌ、夢魔法について詳しい書籍を集めておけ。」
「夢魔法…ですか」
夢魔法は禁じられた魔法の一つだ。もし仮にこれに当てはまるならば早急に対処せねば。




