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池之端の桜  作者: 中岡千町
第1章「覚悟」
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18歳

私には秘密がある。


私は今年の4月15日に18歳の誕生日を迎えた。


私はそれをずっと心待ちにしていた。練に練り上げた作戦をやっと決行できるからだ。


本当はマイナンバーカードを作りたくて役所に相談に行ったけれども、特設窓口の使えないクソ男がダメダメ言うから諦めた。実際、私のような環境だと、すぐ作れないのは知っていたけれどもね。


なので作戦変更して、第二弾で考えていた自動車の普通免許を取りに行った。


費用は自立支援機構の助成金を利用した。GWには門限ギリギリまで毎日通いつめて、6月末には取得出来た。スケジュールも作戦イメージ通りだ。


7月のとある日曜日、施設の先生に「役所の図書館で自習してくる」と伝えて家を出た。

そもそも小学生もいる日曜日の施設内は想像に難くなく、もれなくただただ騒がしい。図書館に行ってくると言えば、行っといでとなるのは目に見えている。


奨学金で大学進学を目指していると嘘をつき続けていても、実際には勉強もできたから、施設の先生方は誰も疑わなかった。


私は施設内では優等生の皮を被っている。それどころか、隙を見せないように全身タイツ並に身体も心さえも、全てを覆っている。


陽が照った暑い日だったけれども、久しぶりにワクワクして楽しかった。いつもは気持ち悪い汗も爽やかさすら感じた。そして図書館は清々しいほど涼しかった。


私の母親が住民票異動の許可を出していないので、住所は母親が住んでる実家のままだ。

正確には、許可を出していないと言うより、連絡放棄しているので、許可が取れていないというだけのこと。一応、そこにまだ母が住んでいるというのは施設長から聞いてはいる。


来週の面談はどこに行こうか、図書館でスマホを弄りながらずっと調べていた。図書館の静寂は、自分自身の脈打つ鼓動を私に感じさせた。


私服の時の私の名前は、今日から「ちはや」に決めた。どこか知性も感じられるような響があるし、優しいイメージもある。


私は今日から2人いる。今日からもう1人はちはやだ。

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