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池之端の桜  作者: 中岡千町
第1章「覚悟」
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東中野のオートロックの2階

一応形だけ。

オートロックのマンションの玄関に鍵を挿した。


一応形だけと言ったのは、なんなんだろう、オートロックの玄関を開けても共用部は建物内じゃなくて、廊下に出たら吹きっさらしな造り。

たかだか25㎡くらいなのにオートロックをうたっているのも、なんだかなあと思うのだけれども、他の部屋の住民と思われる女性しか見たことがないから、ある意味戦略と選択は合っているのだと、かなりメタで思う。

雨が降っている時は、共用部の1~2階の踊り場から、何故か傘を用意しなければいけない。

でも、まあ、一応それでもオートロックだな、今度の会話のネタにしよう。


家で落ち着きたいとも思ってないし、雨宿りで寝る空間があれば、くらいに思っている。


部屋には、ユニットで売っている琉球畳の上に、ニトリで買った敷布団と掛け布団を、カバーもせずにそのまま使っている。枕に関しては座布団が主の生業で、枕は兼業だ。汚れきったらまた買えばいい。サスティナビリティとは無縁の生活だ。


スーツは仕事柄、どうしてもかさばってしまうけれども、20着くらい、一応ハンガーやらなにやらに最低限固定されながら適当にぶら下がっている。


営業のLINEをこちらから送りつつ、歯磨きやらシャワーやらをこなして、太陽が燦燦と登った後に、お客さんからのLINEの返信をしてから寝るのがルーティンだ。


素っ裸でわしゃわしゃと、自分の身体をバスタオルで乱暴になぞった。


バスタオルを適当に腰だけに巻いて、冷蔵庫から、昨日コンビニで買ったジャスミン茶の500mmのペットボトルを取り出した。蓋を開けて、狭いソファーに腰掛けたら、LINEのメッセージを見る。


LINEは「ちはや」となっているれども、来店する時は「瑠美」と言っていたはずだ。


「今日もありがとう」

「あそこのラーメン美味しいよねー」

「書道教室の話意外すぎ!」


会話の内容が間違いなく「瑠美」なのだけれども、身バレしたくないのか、もしくはプライドがとても高い子なのか。


ソファーに腰掛けながら、前かがみに、その何の気なしの「ちはや」からのメッセージをただぼうっと眺た。

俺は覚悟を決めきれねえんだよな、そんな事もふと思った。

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