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雲の話
全速力で自転車を走らせていた。その場にいたくなくて、何処かに行きたくて、ひたすらに漕いでいた。
けれど体力のない私はすぐに息切れして、足が止まった。
花火大会の終盤みたいに鳴る心臓。情けなさと惨めさに陶酔する自分への嫌悪で更に溢れそうになる涙。抑えようと顔を上げた。空を見上げたら、広がる青空と、輝く太陽。その下で浸食していく大きな入道雲。それに目が浮かんで、地上をしげしげと見下ろしていた。
その視線はやがて自転車に乗る私にまで届いた。そして、目があった。
雲の目はどこかバツが悪そうに細められ。隠れた。
入道雲の形が変わる。人差し指を立てた右手みたいな形を取る。
言われなくとも、何も言わない。
でもそんなんじゃそのうち、私みたいな誰かに見つかるよって呆れた、それは夏、彼氏と別れた日の出来事。