風変わりな少女 ⑩
「ところで……」
「玲子ちゃんは今日も来るの?あのポンコツ喫茶店に」
「そのつもりだけど」
「なるほど……」
「でも、あの店のコーヒー高いよね」
「うん。たしかに高い。高校生が毎日通うには厳しい」
「そうだよね」
もちろん修代に尋ねたいことはまだまだある。
だが、唐揚げを口に放り込みながら修代が切り出したその問題は解決しなければならない問題だった。
とりあえず、今日の分は部屋中の小銭をかき集めて調達したが、そのような手段が使えるのは一回かぎり。
後は、親のすねかじりしかない。
「でも、あちらに行きたいでしょう。毎日でも」
「まあ、それはそうだけど……」
「じゃあ、あそこで働いたら?」
修代からやってきたその提案。
それはすべての問題を解決する良案中の良案に思えた。
なにしろ、お金を稼げるわけだから、軍資金の問題は一瞬でクリアになる。
さらに放課後もやっとできた友人である修代と一緒にいられることも重要。
だが、問題もある。
玲子は仕事をした経験がない。
それなのに、最初の仕事が一番苦手な接客業。
これはさすがにハードルが高い。
それに親の同意が得られるかもわからない。
いや。
それ以前の問題がある。
実は玲子の通う高校は原則禁止なのだ。
アルバイトは。
ん?
そこで気づく。
目の前に堂々とアルバイトをやっている女子高生がいることに。
玲子はおずおずと尋ねる。
「修代ちゃん。うちの学校ってアルバイト禁止だよね」
「違う。禁止じゃなくて原則禁止」
「同じだよ」
「全然違う。最低でも犬と猫くらいの差がある」
「全然わからん。その例え」
修代のわかりにくい例えを蹴り飛ばしたところで玲子は考える。
「……敢えて言うのなら、原則と付いているくらいだけど……」
「そう。そこが大事。それで、その意味はわかる?」
そう言って修代は薄ら笑いを浮かべて玲子を眺める。
私は現在あなたを馬鹿にしています。
そう顔に書いている。
当然玲子は頬を膨らます。
「わかるわよ。それくらい。原則ということは例外があるということでしょう」
「すご~い。正解だよ。玲子ちゃん」
表面上は褒めているが、実は盛大に馬鹿にしている。
誰にでもわかるその表情に玲子の頬はさらに膨らむ。
「……それで……」
「だから何?」
感情が駄々洩れするようにトーンが大幅に下がった玲子の問い。
それを面白そうに聞き流した修代が口を開く。
「自分をその例外に当てはめればいいのよ」
「はあ?」
「この校則には穴がある。もしかしたら、柔軟性を持たせるためにそうしたのかもしれないけれど、とにかく大きな穴がある。そして、その穴というのは……」
「具体的にどのようなものがその例外になるかが書いていないの」
「そうなれば学校というか教師が恣意的に決められるわけだけど、逆に言えば、教師に許可さえ取ってしまえばやりたい放題というわけ」
「そして、ここにはその教師がいる」
「これを利用しない手はないでしょう」
「というわけで……」
修代は玲子の意向も確かめずどんどん話を進め、さらにいつのまにか湧き出した、多くの教師たちのひとりに視線を向ける。
むろん先ほど追い払った男である。
「尾上先生。用事があるからこっちに来て」




