風変わりな少女 ①
翌日の朝。
いつもなら、最高レベルの「学校に行きたくない」オーラを纏っている玲子だったが、今日は朝からやる気満々。
いや、学校に行く気満々。
その気合いの度合いを見せつけるように、母親が驚くほどの勢いでいつもの倍の量の朝食を食べて出かける。
「そう。今日の私は違うのです。いわば、ニュー玲子。いや、ネオ玲子」
腰に両手をあて、その気合いの程を誰かに示すように玲子は叫ぶ。
小声で。
そして、いつもよりずっと早く学校に到着。
もちろんいつものようにクラス中の女子から白い目で見られる。
なぜ学校に来たのか。
いや。
まだ生きていたのかと言わんばかりに
玲子は教師が現れるまでのこの時間がたまらく嫌いだった。
そして、早く時間が進めと願っていた。
もちろん今日もその気持ちがある。
だが、今日はいつもとはその意味合いがまったく違う。
なぜなら、玲子は待っていたからだ。
ターゲット、聖護院修代が現れるのを。
そして、教師がやってくるホームルーム時間の数分前に修代は現れる。
すべてがいつもどおり。
「……昨日のアレが嘘のような地味さ加減」
玲子が思わず薄い笑みを浮かべ呟くくらいの、「ザ・校則準拠」の制服姿。
「まあ、これがいつもの服装であって、あれがイレギュラーなのだけど」
そう言いつつも、玲子は想像する。
超ミニスカート仕様の制服で全校男子に注目されながら校内をさっそうと歩く萌え要素満載の修代の姿を。
「……こ、これは後回し」
現実逃避の一環であるこの手の妄想ならいくらでも湧き出る玲子だったが、小声でそう言って仕切り直しをする。
そして……。
「よし。いくぞ」
再度気合いを入れ直した玲子は立ち上がり、修代に近づく。
その間に、いじめグループのメンバーたちからよく聞こえる嫌味が飛んでくるが無視、それどころか、一睨みにして黙らせる。
今までそのようなことをしてこなかった相手の反撃にたじろぐ彼女たちを放置し、玲子は歩を進め、そして修代の前に立った。
「少し話がしたのだけど……」
今日一番の山。
そして、一番の緊張場面。
さすがに見せかけだけの気合いだけでは乗り切れない。
それが如実に現れた硬直しきった玲子のその言葉に修代がこう応える。
「おはよう。玲子さん」