斬り首村の巫女編1
皆の注目が大久保容疑者に集まり。それまで沈黙していた彼がコーヒーを飲み干すと、下を向いたまま話し始めた。
「私が何故野口を殺したのか、その理由は今から46年前にさかのぼります。当時11歳だった私は宮崎県西都市の山間部にクワガタ採りに親と一緒に行きました。しかし夢中になって気づいた時には道に迷っていました。それで泣きながら彷徨っていたら、首斬り村の巫女様と出会い保護してもらえました」
「なにっ!」
大久保容疑者が話し始めた過去は鷹村警部も初耳だったらしく『何故そんな大事な話黙っていた?』と怒鳴った。
すると彼は苦笑いを浮かべて『へい』と答えた。
「あっハイッ、え〜と、ちょっちょっとお待ちください」
大久保が話の続けようとすると、焦った長谷川がメモ帳を開いてペンを取った。
それに対し、犯人の供述を遮った部下に鷹村警部が舌打ちした。
「で、話を続けろ」
「……いえ……私が覚えているのはこの位で……」
急に大久保容疑者は口をつぐんだ。
「チッ、長谷川ぁっ! 奴の代わりに事件について時空師に説明してやれ」
「えっハイッ! え、えーっとですね……被害者の出身地が容疑者が訪れたと言う村の名が首斬り村ですねハイ。由来に関しては、昔村に逃げて来た平家の落武者を村人が惨殺して首をさらしたとか、密かに子供を拐ってから首を刈って神へのお供え物にしていたとか、退治した鬼の首を神社で祀っていたとか諸説様々ですね」
どれも信憑性のある由来だけど、全て血生臭く怖い理由だった。
もし私が村人だったら、こんな不吉な名前の村怖過ぎて逃げ出すよ。
ましてや実際村人ほぼ全員が惨殺される事件があったのだからね。
「おいっ長谷川っ首斬り村惨殺事件について刻道に詳しく教えてやれ」
「あっはいっ鷹村警部っち、ちょっとお待ちをっ!」
慌ててメモ帳をめくって該当ページを探す長谷川。ちなみにまだアナログかと思われがちだけど、実はメモの方がすぐにペンをとって記録出来るから優れているね。
ちなみに私の場合もメモ帳持ち歩いていてます。
「あっ、あったあったこれだ!」
長谷川警部が該当ページを見つけて指差した。
「え〜と46年前、首斬り村に39名もの村人が生活していました。でえ〜ご存じの通り、野口以外37名の村人が殺害されました。え〜唯一の生存者であり容疑者だった野口は姿をくらまし45年間逃亡生活を続けていたみたいですねぇハイ」
今の解説を聞いてなにかおかしな点があると私は気づいた。
「ちょっと待て長谷川ぁ!」
鷹村警部が長谷川を呼び止めた。
「あっハイ、なんでしょう……?」
「お前今犠牲になった村人が37名と言ったな?」
「はあ、えっと死亡者数は38名で村人が37名……あっ!」
「村人以外のもう一人の犠牲者は何者だ?」
鷹村警部が感じた違和感は村人の人数だった。殺された人数が39人なら野口容疑者も死んでなくちゃおかしいけど、彼は逃げ伸び一年前、最近大久保に殺された。
だから野口はもう一人の犠牲者ではない。部外者だとしたら一体なに者でしょうか……謎が深まる。
それについて長谷川警部補が調べた情報を述べた。
「その通り殺された村人は38人でもう一人の犠牲者の身元は未だ不明。年齢は五十代後半の男性で死因は、自ら持った包丁で喉元を切っての自殺。恐らく野口の共犯者と思われます。あとですね……包丁には当時首斬り神社に仕えていた巫女の桜花麗美奈35歳の血痕が検出されてます。恐らく彼女が最後の犠牲者と思われます」
まさか野口容疑者の共犯者で身元不明で自殺とは闇が深い事実ね。しかし何故大久保容疑者は野口容疑者を捕まえて監禁して殺したのかしら……謎が深まる。
やはり46年前に大久保容疑者が首斬り村で保護された話に秘密がある気がする。
なんだか真相がグッと近づいて来た気がする。それについては大久保自ら話し始めた。
「当時迷子だった私がら首斬り村にさまよい保護してくれたのが、首斬り神社の巫女様です。本当に優しく美しい彼女の姿は今でも忘れません……」
大久保は巫女さんの思い出を熱く語った。保護してくれた恩人だろうけど、それ以上の感情が入り混じってると私は感じた。
そして巫女さんの淡い思い出話から、犯人に対する憎しみを込めた思いを話し始めた。
「村人が一人を除いて惨殺されたのはご存じの通りです。残念ながら巫女様も犠牲者リストに入ってました。そして唯一リストから外れていたのが神主の野口。奴は事件後忽然と姿を消しました。当然疑われ容疑者として全国指名手配されました。私もあいつが犯人だと思って死に物狂いで探しついに見つけ捕まえました」
長谷川警部補が長々と説明してくれた。なるほどと思った。首斬り村にお世話になった大久保容疑者が野口容疑者を見つけ出し、その後すぐに警察に連れて行かず拉致監禁したのち殺してしまったと、そんな感じかな?
それで目標を失った大久保容疑者が自主して来た。しかし一年ほど黙秘を続け警察を困らせたらしい。
それで警察もサジを投げかけたところで、大久保は時空師に合わせろと交渉した。それが狙いだったらしく今日願いが叶ったと言う訳。
ずいぶんワガママな犯人の要求だけど、一年も手こずったら警察も要求を呑んだ話。
「で、大久保さんは首斬り村事件前日に行きたいわけですね?」
今度は刻道が大久保に話し掛けた。何故か時空師の右眼が赤く光っていた。
まぁ、気になるけど事件とは関係ないから気にしないことにした。
「はい。私は巫女さんを殺した犯人が憎くていや、事件の数日前の過去に行って犯人を突き止め巫女さんを救いたい。それが私が時空師さんに依頼した理由です」
「そうですか……では今すぐ現場に行きましょう」
帽子を被った刻道が立ちあがった。するとリオンを連れて喫茶店から出て行った。
本当にマイペースな人たちですね。