時空師の証明
「依頼内容を喋る前にっそことっ、そこの娘は刻道との関係はなんなんだいっ!」
鷹村警部がヒステリック気味にリオンさんと私を指差して聞いた。彼の答え方一つで、青少年保護育成条例違反の疑いで逮捕されかねないからなぁ。
しかし刑事さんは気の利かない刻道にイラついてるのかな。そんな彼女の気持ちも知らず彼はで話の途中店員さんに水追加してるし……。
「済みません。僕の連れのご紹介を忘れました。まずは右端に座っているのが助手の鐘崎友海」
「ちょっ!」
ついて来いと言われてついて来たけどいつの間に助手扱いかよ。それに名前だけ紹介して女子高生とか新聞部とか説明して欲しいよね。
『うん』良くよく考えたら、目の前に刑事さんがいるんだから、今の内に仲良くなって将来の人脈に繋げるのも手よね。
『決めたっ私は将来ジャーナリストになるっ!』なにを血迷ったか、私は立ち上がって夢を宣言した。
「おい君っどうした?」
「あっ、アハハハ……いえ、なんでもありません……」
振りあげた拳を降ろし座り直した私は苦いコーヒーを啜った。
『あー恥ずかし……』
「でっ、そっちの子は……金髪にエメラルドグリーンの瞳……外国人か……」
ピンポン!
「わっ! ビックリした」
鷹村警部がビクッとして音がした発信源を見て怪訝な顔を浮かべた。それはリオンが持ちあるく例の杖。そこからクイズ番組で聞くような電子音がした。
「え〜と、彼女の名はリオン。僕が太古の昔にタイムスリップした時に出会ったムー大陸最後のお姫様です。ま、経緯は割愛させてもらいますが、ご存じの通りムー大陸が沈む前に僕が現代に連れて帰っちゃいました」
こんな頭の悪い言い訳を刑事の前でする人初めて見た。
『しかもそれって人さらいじゃないの?』良く刑事さんの前で言えますね。あーあ、私のアシスタントの旅終わりかなぁ……。
「なんだってお前っ外国人の子をっ誘拐したのかっ!?」
『ほら考えていることは同じだ』身を乗り出した鷹村警部がテーブルを叩いて刻道に指差した。
捕まっても知〜らない。
『なにを言うか妾は誘拐などされておらぬ。自分の意志でトッキーについて来たのじゃ』
「なんだって……」
リオンが電子音声で反論した。それにしても彼女喋れないのかな?
まぁ、人には深い事情があるだろうし、その秘密はいずれ分かるでしょう。
「まぁ、お前らが頭がおかしいのは分かった」
『ちょっと私も入ってるの刑事さん?』刑事を含めこの中で一番まともだと思うけどやだなぁ……。
「それじゃあ単刀直入に聞く。お前は本当に依頼人を過去へ連れて行ける力があるのか今ここで正面してみろ!」
「そうですか……信じませんか僕の話……」
「当たり前だっ! タイムスリップなど馬鹿馬鹿しい与太話に付き合う気にもなれっての……」
首を横に振った鷹村警部が苦いコーヒーを一気に飲み干した。しかし無理したのか舌を出した。
「分かりました。ちょっと失礼」
「おっ、なんだ?」
席を外した刻道が通路側に立った。
「僕がタイムスリップ出来る証拠として今から江戸時代に飛んで岡っ引でも連れて来ますよ」
「お前っそんなこと言って外に出て役者呼んで来る気じゃなかろうな?」
「そんな陳腐なトリックなんて使いませんよ。今ここで江戸時代に飛んで行きますよ。では……」
刻道がグローブをはめた右手を握ると甲の部分が発光して一瞬で姿を消した。
「なっ! ば、馬鹿なっや、奴はどこに消えた? ちょっと長谷川っ隠し階段がないか探せっ!」
「わっ、分かりましたっ!」
慌てて二人の刑事が床を念入りに探るが異常が見つからず右往左往していた。それに呆れ顔のマスターが来て『この喫茶店にはなにも仕掛けなとありませんよ』否定する始末。
「ううむ……奴はどこに消えた……いや必ず仕掛けがあるハズだ。長谷川っ死ぬ気で探せ」
「え〜〜っ鷹村警部っもう散々探しました。これ以上証拠は出ませんよ〜それに、彼が消えたのがたったの一秒ですよ。いくらなんでもマジシャンでも無理ですよ〜」
「馬鹿もんっ!」
「ひいっ済みませんっ!」
「チッ、刑事がそんなに早く諦めてどうする。まぁとにかく過去へ飛ぶなど不可能だ。きっと奴は我々に催眠術を使って……」
その線はあり得るけど、彼が催眠術を使用した仕草は見られなかったけど……。
「催眠術ですか……色々考えますね鷹村警部」
「ああそうだ…………んっ、その声はっ!」
腕組みしてうなづく鷹村警部の左横から刻道が姿を現した。しかも場違いな和服姿のマゲ頭の侍っぽい人連れて来た。
まさか岡っ引?
「いつの間にっお前っどこ行ってた?」
「だから江戸時代ですよ。ほら、彼は岡っ引の矢次郎です。言うなれば鷹村警部の大大先輩ですよ」
岡っ引は江戸の秩序を取り締まる警察みたいな存在だよね。
彼は岡っ引が武器に使用していた右手に十手と呼ばれるカギ状の鉄の棒を握り。左手に御用と書かれた提灯を持って店内を不思議そうにキョロキョロしてた。
多分夜から急に昼の世界に連れて行かれて戸惑っているのかな?
て言うか私信じちゃっている……。
まぁここまで凄いモノ見せられたら信じるしかないよね。
「おいっ! 仮に本当だとしたら江戸時代の人間連れて来るなっ!」
「確かにそうですね。では返しに行って参ります。二秒ほどお待ちを」
「なにっ!」
刻道は手土産に喫茶店蛸八なコーヒーカップを矢次郎に渡すと二人の姿が忽然と消え、そのあとたった二秒で一人帰って来た。
矢次郎さんを江戸時代に帰したんだ。そうなるとお土産に渡した蛸八印のコーヒーカップはのちに発掘されてオーパーツ扱いされるかも……。
「馬鹿な……」
「身を隠すにしてもたった一秒では不可能ですよね鷹村警部。これで僕の能力を信じてもらえましたか?」
「ぐ……こんな非科学的なことし、信じてたまるか……」
「へっ……」
鷹村警部がテーブルを思いっきり拳で叩いた。が、そのあと咳払いしてからマスター呼んで一礼してから、一万円札をエプロンの胸ポケットにそっと入れた。
「貴様におかしな能力があると肯定しよう。だがそれは置いといて、今回依頼した経緯は大久保が中々容疑について自供しなくてな。で、つい最近お前に合わせたら全て話すと言ってきたから、警視庁長官の許可を得て連れて来たのだ!」
また熱くなった鷹村警部がテーブルを叩いた。するとコーヒーカップが揺れて中身が溢れた。まぁすぐに警部は紙ナプキンで拭いてからマスターに謝った。
「あとは依頼内容については直接コイツに聞けっ!」
鷹村警部はクシャクシャに丸めた紙ナプキンを大久保容疑者の頭に当てた。