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二人の刑事

 

 喫茶店蛸八(たこはち)は昭和テイストなモダンな雰囲気。落ちついた店内であってか私たち以外客はいなかった。

『まぁ、なんと言うか……』奇をてらったのか知らなけど、魚屋と勘違いして喫茶好きな客が寄りつかないことにマスターは気づいているのだろうか?


 刻道はマスターと軽く会釈すると迷わず一番奥のテーブル席を選び、リオンと正面の席に座った。

 とは言え、大人の彼がリオンを差し置いて窓際の席に座ったのは、正直子供かと思った。


 さて、私が対面のソファーに座ろうとすると『座るな』と刻道に注意された。

 ちょっとむつけた私は『なんでと』聞いたら、そこは依頼人の席らしい。

『それならもうちょっと気を遣った言い方があるじゃないの?』と不満に思ったよ。

 まぁ怒っても仕方ないんで、口を尖らせた私は一番端の通路側に座った。


 するとしばらくすると『カランカラン』とドアベルが鳴った。しかし昭和世代ではない私でも懐かしく感じる音色だ。最近は皆自動ドアだからね。


 それはそうとドアがなったってことは、他のお客さんが入店したっぽいね。

 マスターがいらっしゃいとお客に声を掛けると数名の足音がこちらに向かって来た。

 どうやら依頼人っぽい。


「お前が時空師か?」


 男二人を連れたスーツ姿の女性が刻道に声を掛けた。見た感じ二十代後半位の女性だ。

 外見的特徴は、長い黒髪をうしろに束ね。前髪をセンター分けし眼鏡を掛けた知的そうな美人さん。


 そんな彼女の眼光は鋭く、眉間にシワを寄せ気難しそうな雰囲気から厳しい性格っぽい。


 一方連れの二人はは左から、二十代前半風の紺色のスーツ姿の男性で、右側の男性は眼鏡を掛けハンチング帽を被っている。見た感じ五十代後半で年相応な見た目だ。

 その帽子を目深く被っているせいで目元が隠れ表情が暗い。本当訳ありって感じ。


 良く見ると彼は訳ありみたいで両手を布で隠されていた。それって手錠を隠す布なんじゃ……。

 私は思わず声をあげそうになって慌てて手で口を塞いだ。


「おいっ大久保っ奥に座れっ」

「……」


 ハンチング帽を被った大久保って人が窓際に座らされ、続いてスーツ姿の若い男性が真ん中に座って眼鏡の女性が通路側に座った。

 普通後ろの窓際席は上座だけど、仮におじさんが犯人の場合は逃げられないようにあえて座らせるのね。


 と、なると私の推理が正しければ……おじさんが容疑者で若い男が新米刑事で美人のお姉さんが上司でしかもキャリア刑事かな?

『う〜ん』刑事ドラマの見過ぎか実際違うと思う。


 依頼人が揃い全員分のコーヒーが運ばれて来ると自己紹介が始まった。


「あたしは警視庁捜査一課警部の鷹村涼子たかむらりょうこだ」


 鷹村と名乗った女性が警察手帳を取り出し中身を開いて顔写真を見せた。『やっぱり刑事だった』しかし刑事ドラマで 良く見る場面で感動している。


 そうなると真ん中の男性も……。


「それでコイツが」

「あっ! どもっ」


 長谷川が立ちあがった。


「コイツが警視庁捜査一課警部補の長谷川浩次はせがわこうじ。少し抜けているが、真面目で頼りになる男だ」


 長谷川が名乗る前に鷹村が先に紹介したんで舌を出して引っ込んだ。そのとぼけた感じは刑事の怖いイメージとかけ離れているね。


 最後に鷹村がハンチング帽の男を紹介する。


「コイツの名は大久保淳(おおくぼあつし)五七歳。ここだけの話だが……」


 身を乗り出し潜めた声で鷹村は話し始めた。しかしそんな聞かれた不味い話ってマスターしかいないから気を使わなくても良いのに。


「一年前大久保は指名手配犯だった野口真守(のぐちまもる)六九歳を拉致監禁した挙句絞殺したのち。自主して逮捕された」

「…………」


 大久保が無言でうなづいた。

 やっぱり思った通り彼は犯罪者だった。しかし凄い内容の自己紹介だった。凄く重いし本当私だけ場違いな気がしてきた。

 とりあえずメモメモ……。


「それで警視庁がわざわざ僕に仕事を依頼したのは……」

「ああ、正確にはお前を依頼したのはこの大久保だ」

「……でしょうね」


 大久保を見つめる刻道の右眼が一瞬紅く光った。その目でなにかを見たのか彼は右手をあげた。

『おっ!』なんか名探偵っぽい。早速謎が解けたのか?


「すいません」

「はいっお待ちください」


 手をあげた彼はウエイトレスさんを呼んで、メニュー表を開いて熱心に選んでから指差した。

『なになに?』ツートンスーツだけど結構クールでカッコいいからブラックコーヒーでも注文するのかな?


「じゃあミートソースパスタ大盛りと普通盛りと、クリームソーダ二つと苺のショートケーキ二つとあと……」


 この男依頼人お構いなしに自分たちだけの分注文してる。それにまだなにか選んでいる。


「う〜ん。マリトッツォかぁ……まだ食べたことないんだよね……良し。この機会に注文してみるか……済みません。マリトッツォ二つ追加で」


 マリトッツォは食べようかなと悩んでたら、ブームがとっくに過ぎ去ったので私も食い逃した。だから悔しいから一度は食べた気持ち分かるよ。

 私もあとで頼もう。


 しばらくして頼んだメニューがテーブルに並んだ。もちろん時空師の片側だけ。普通客に気を使うものでしょうがこの男お構いなしに手を合わせてから嬉しそうにフォークを手にした。


「なんなんだお前ら……」


 しかし大の大人が子供っぽいメニュー注文して刑事さんが呆れていた。


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