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最凶侯爵の好敵手 ~最凶侯爵の逆鱗に触れた者達の末路~  作者: やとぎ


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ザーベイル出陣

「父上!! 兄上の奇襲は成功!! 王族を捕虜としたとのことです!!」

「そうか」


 報告を受けた()ザーベイル辺境伯エクトル=ザーベイルは静かにもう一人の息子であるユアンへ嗤いかける。

 ユアンは父の嗤顔にゾクリとしたものを感じた。だがそれは恐怖から来るものではなく。来るべき時が来たという武者震いである。


「父上……ついに来るべき時が来たというわけですね」

「ああ、思い上がった中央の者共め……思い知らせてくれよう。出陣じゃ!!」

「はっ!!」


 エクトルの命令を受けたユアンは一つ返事をすると執務室を駆け出していった。


「オルタス……お前が目覚めさせた怪物(・・)は本当に恐ろしいぞ。まぁ今頃、その恐ろしさを思い知っているだろうがな」


 エクトルの口から苦笑混じりの嘲笑が発せられる。


「第一段階は成功……次は第二段階か……急がねばな」


 エクトルはそう呟くと立ち上がり剣をとって執務室をでた。



 ◇ ◇ ◇


 エクトルが兵達の前に姿を見せた時、歓声が地鳴りとなって響いた。兵たちの士気が最高潮に上がっていることに一つ頷くとそのまま壇上へと上がる。


 ジルヴォルが王都へ出立した時には既に軍備を整えていたのである。そして、連絡が来た時には既に最終段階という状況を整えているのだ。


 エクトルは壇上に上がるが口を開かない。


 エクトルが口を開かないことを見て、自分達がエクトルの話を聞く準備が整うのを待っていることを悟った将兵たちは静かになっていく。完全に静かになり静寂が支配する。だが声がしないだけで、その熱量は物凄いものがあった。


「待たせたな」


 エクトルの第一声がこれであった。


「ついにこの日が来た……」


 次のエクトルの言葉に将兵達から立ち上る熱量がもう一段階上がった。


「中央の貴族どもは我らを食い物にしすぎた。私は何度も何度も国王へ陳情した。だが、傲慢な王家や中央の貴族どもは我らの心からの訴えである公正な裁き、正当な報酬も踏み躙ってきた」


 エクトルは将兵を見渡しながら続ける。


(納得の表情を浮かべているな…怒りの表情が浮かんできた。狙い通り……か)


 エクトルは現段階で予定通りうまく行っていることに心の中で頷くと次への段階へと進む。


「ザーベイルの勇士たちよ!! 答えよ!! 我らの要望は不当なものか!?」

『否!!』

「そう!!決して不当なものではない!!だが奴らは我らの要望を受け入れない!!これは正義か!?」

『否!!』

「もはや交渉の段階は終わった!!ならば剣によって戦う時だ!! 我らが奪われたもの!! 踏み躙られた尊厳を取り戻すためには剣をもって戦うしかない!! そう!!それ以外ないのだ!!」

『ウォォォォォォォォ!!』


 エクトルの言葉が進むたびに将兵達の士気が跳ね上がっていく。


「既に新たな辺境伯となったジルヴォルは王城で国王や貴族共へ宣戦布告を行っておる!!」

『おおおおおおおおおおおおおおお!!』

「我らも若き獅子に続こうではないか!!」

『ウォォォォ!!』

(仕上げだな)


 エクトルは将兵達の士気が最高潮の手前まで来たことを察すると視線を向けた。視線を受けた兵士が頷くと合図を送る。


 すると兵士に引っ立てられた数人の男達が現れた。


 男達を見た将兵達の表情が険しいものへと変わる。連行されてきた男達は中央から派遣されてきた辺境伯領の監視役である。王家の権威を笠に着てやりたい放題してきたために辺境伯領で蛇蝎のように嫌われていた。


 だが、この時の監視役達はいつもの傲岸不遜な態度は微塵も見せずに顔を青くしている。


 自分達がこれからどのような未来が待っているかを察しているのである。


「へ、辺境伯!! お許しください!!」

「助けてください!!」

「お慈悲を!!」


 男達は口々に命乞いを始める。


 エクトルは壇上を降りると剣を抜き放った。


「ヒィ!! お、お待ちくださいぃぃぃ!!」


 命乞いをする男達の一人へ剣を振るうと首が飛んだ。宙を飛んだ首が地面に落ちるのを見て将兵達の盛り上がりはさらに一段階上がった。


「さぁ!! 血に酔おうではないか!!」


 エクトルは男の一人の胸ぐらを掴むと将兵の方へと突き飛ばした。


「ヒィィィィ!!」


 男は将兵達の方を見た瞬間に絶叫を放った。それは自分の人生の終焉を感じたからではなく、膨大な殺意を受けたことによる叫びであった。


「ぎゃああああああああ!!」


 男達は将兵達に滅多刺しにされその生を終えた。転がった死体の表情は苦悶などという言葉ではとうてい表現できないむごたらしいものだ。

 だが、そのことに目を向ける者などいない。エクトルがさらなら言葉を発したからだ。


「足りぬ!! 足りぬ!! ザーベイルの勇士達よ!! 血が足りぬ!! 貴族共の血で心地よく酔おうではないか!! 出陣じゃあ!!」


『ウォォォォォォォォ!!』


 エクトルの言葉に将兵達の興奮は最高潮を振り切った。


(オルタス……お前が軽んじた我らの憎悪……知るが良い)


 エクトルは今までにない士気の高まりに心の中で呟いた。

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