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最凶侯爵の好敵手 ~最凶侯爵の逆鱗に触れた者達の末路~  作者: やとぎ


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道化は踊る②

「王女殿下、とりあえずここまで来れば安心です」


 騎士が恭しく一人の少女へと告げると王女殿下と呼ばれた少女は硬い表情のまま頷いた。

 王女と呼ばれた少女の名はソシュア=ミュゼリア=ギルドルク。ギルドルク王国の王女である。年齢は13歳、白皙の美貌を持った美しい少女だ。


「ありがとう。みんなもまずは休みなさい」

「はっ!!」


 ソシュアの言葉に騎士は即答すると退出していく。


(ここまで逃げることはできた……これからどうすればいいのかしら)


 ソシュアは心の中で呟く。


 既に両親、兄二人は処刑されているという事を脱獄する際に聞かされていた。そしてかつて自分に仕えていた侍女達もここにはいない。ジルヴォルに捕まった際の混乱でほとんどが殺されたのだ。

 自分が捕まった時の事を思い出すとソシュアは今もガタガタと震えてくる。あの時、自分を捕まえた兵士達の目にある圧倒的な憎悪の感情は恐ろしくて仕方がないものであった。


 それにジルヴォルが父オルタス2世に言い放った『俺が人であったことなど貴様らのせいで忘れたわ!!』という言葉は特に恐ろしかった。

 大切に守られてきたソシュアにとってあそこまでの憎悪を叩きつけられたことはない。


(ジルヴォル達のあの目……私達に一切の慈悲を与えるつもりはないのは明らかだわ……)


 ソシュアはここで何か引っかかるものを感じた。一旦芽吹いたこの違和感は枯れるどころか急速に成長していくのをソシュアは感じた。


「そうだわ……。あの(・・)ジルヴォルが私を見逃すわけないわ。ええ、ええ!! そうよ!! そうに決まってるわ!!」


 ソシュアは強い口調で言う。それは吐き出してしまわないと不安に押しつぶされてしまう気がしたからであった。


「じゃあ、私がここにいるのはジルヴォルの……計画と言うこと?」


 ソシュアはそう思うと戦慄せざるを得ない。今までは逃げるのに夢中で考える余裕がなかったのだが、一息つけるという状況が自分の状況の異常さを際立たせているのである。

 

(私を助けてくれた者達もジルヴォルの部下かもしれない)


 ソシュアが口を閉じて周囲を見渡した。一度その考えに至れば周囲の人が全てが疑わしく見えてくると言うものである。


(私がここに生きているのはジルヴォルの計画……なら私の利用価値は?)


 ソシュアは思考を深めていく。


(私の価値は王女という身分。これだけよ? しかもギルドルク家は既に滅亡してる……)


 ソシュアは自分の事を過大評価していない。それは自分がやがて政略結婚のためにどこかに嫁がされることを理解していたために、『自分はギルドルク王国繁栄のための道具である』という意識を持っていたためである。


(ここはギルドルク国内……私は()王女……ジルヴォルが欲しいのは中央貴族の旧所領の民達の支配なはずよ。ジルヴォルが民達の支持を得る手っ取り早い方法は共通の敵(・・・・)を作り……その敵を排除する……)


 ソシュアはここで一つの考えに到達する。


「あ……そ、そんな……」


 ソシュアはポツリと呟くとガタガタと震え始めた。


「共通の敵……は()ということ……」


 ソシュアの顔色は青白さを通り越して土気色へと変わっている。家族を殺され、親しい者達を殺され、自分の人生を大きく狂わされた。それ以上に自分がジルヴォルに利用されるという現実が見えてしまったのだ。


「敵となった私をジルヴォルは……殺すのは間違いない」


 ソシュアの体の震えは止まらない。ザーベイルの者達に敵として扱われるのは耐えられる。だが、支配権の確立のために民衆の敵になり、罵声を浴びながら処刑されるというのはどうしても納得できるものではない。


「そして、このことに気づいても私にはどうすることもできない……」


 ソシュアの心を絶望が覆い尽くした。


 ソシュアは自分の立ち位置をほぼ正確に認識し、自分の未来も予測したが、自分がその未来を避けるために何もできないことを理解していた。いくら元王族という立場であっても自分に仕えているものなど皆無であるし、逃げ出したところで生きていけるわけないし、それ以前に逃げ切れるわけもない。


(何とかしなくちゃ……死にたくない)


 ソシュアは心の中でそう呟く。


 そして、この気づきが彼女の運命を変えることになるのである。


 


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