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最凶侯爵の好敵手 ~最凶侯爵の逆鱗に触れた者達の末路~  作者: やとぎ


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虎の尾を踏む者③

「どうした? そんなに難しい質問をしたわけではないだろう?」


 ジオルグの言葉にアーゼインは滝のような汗をかいている。


「ザーフィング侯…あなたは一体……」


 アーゼインは震える声で先ほど同様の質問を繰り返した。これはアーゼインの受けた衝撃が大きいことを示している。


 ジオルグが机を指で叩いたのは、ザーベイル軍が辺境伯時代から使っている音による信号であり、鏡で光を反射させて行う信号と同じ系統のものである。


 今回ジオルグが伝えた信号は『お前に仕事を頼みたい』である。


 ギルドルク王国軍の使う信号ではなく、ザーベイル軍の使う信号を使ったのは、アーゼインの正体がザーベイル軍関係者であることを知っている(・・・・・)ことを告げているのである。


 そう『お前の正体を知っているぞ』というジオルグからのメッセージであったのだ。


「それで? 私の依頼を受けてくれるのかね?」


 ジオルグはアーゼインの動揺を見てとるとそのまま畳み込んでいく。


「もし……嫌だと言ったら?」


 アーゼインの問いかけにジオルグはニヤリと嗤う。


「この段階でくだらん駆け引きをするな。お前の正体が既に知れている以上、お前は負けたのだ。それともザーベイルの関係者は自身の敗北を認められぬほど愚かで臆病な気質の持ち主なのかな?」

「……そうですね。失礼いたしました」


 アーゼインは観念したかのようにジオルグへ一礼する。


「それでザーフィング侯は私に何をさせようと言うのですか? ジルヴォル様達を裏切れと言うのならばお断りいたします」


 アーゼインは気迫のこもった目でジオルグを見る。返答次第ではジオルグに襲い掛かる強い意志を感じるものである。アーゼインの態度に背後に控えるカインとロイが身構えた。


「二人とも大丈夫だ。この者は私に危害を加えるようなことはしない」


 ジオルグの言葉にカインとロイは表面上は警戒を解いた。


(後ろの二人……これほどの手練れか)


 アーゼインはカインとロイが警戒に入ったことで、その力量を知り戦慄した。これほどまでの技量を持っていながら、今の今までアーゼインはそれに気づくことができなかったのである。

 カインとロイがアーゼインを殺すと判断した瞬間に自分の命が終わることを感じずにいられない。

 そして、目の前にいるジオルグも全く恐れていない。それがジオルグの力量を示しているようでただただ恐怖の念が湧いてくると言うものであった。


「怖がらせてすまないね。私の身に危険が及ぶと考えた故の行動だ。悪く思わないでくれるかな?」

「は、はい……こちらこそご無礼をお許しください」


 アーゼインはジオルグの謝罪を好機などと思わない。そのような駆け引きなどしなくてもアーゼインを潰すなど蟻を潰すよりも容易く行えることを察していた。


「わかってくれて嬉しいよ。さて、お前に頼みたい仕事とは簡単なことだ。ザーベイル王国国王であるジルヴォル王に会いたい。その旨を連絡してほしい」

「ジルヴォル様に会いたい……ですと?」

「ああ、我がガルヴェイト王国はザーベイル王国と友誼を結びたい。そこでお前に前もってその旨を伝えてくれれば話が早い」


 ジオルグの言葉にアーゼインは驚きを隠せない。ジオルグから聞いた決定事項はいくら侯爵であるとは言っても独自にできるものではない。つまり、既にガルヴェイト王国の選択は決まっているのである。


「わ、わかりました……仲間と連絡を取ります」


 アーゼインはこの段階で自分の意見を加えることを放棄した。既に国家レベルの決定に対して自分が握りつぶした結果、ザーベイル王国とガルヴェイト王国の戦端が開かれるようなことになれば目も当てられないと言うものである。


「そうか。わかってくれて嬉しいよ」


 ジオルグはにこやかな表情を浮かべて言う。だが、アーゼインの緊張は全くほぐれない。


「あの……お聞きしたいことが」

「何かな?」

デミトル(・・・・)達はどうなります?」

「無論、私と一緒にザーベイル王国へと連れていくつもりだよ。使い途としてはそれくらいだ」

「使い途……ですか」

「ああ、そちらの方がジルヴォル王にとっても都合が」


 ガシャン!!


 ジオルグが言い終わる前に何かの壊れる音が響いた。


 バタン!! タッタッタッ!!


「待てぇ!!」

「よくもやってくれたな!!」

「思い知らせてやるぞ!!」


 デミトル一行の下卑た声が響き渡る。


 バタン!!


 そして、ジオルグ達のいる部屋が慌ただしく開かれるとアイシャが駆け込んできた。


「アイシャ!!どうした?」


 只事でない様子にジオルグが心配するように声をかける。


「も、申し訳ございません!! ジオルグ様……私、私……」


 アイシャがジオルグに謝罪するとその目に涙が溢れた。


「大丈夫だ。お前が何をしようとお前を見捨てるようなことは絶対にしない」


 ジオルグの言葉にアイシャの目から堪えていた涙がこぼれ出した。


「ここか!!」


 そこにデミトル一行が姿を見せた。


 デミトルの右頬は赤く腫れ上がっており、何があったかをこの段階でジオルグ達は察した。

 意味なくアイシャがデミトルに暴力を振るうことはない。先程のロイの話からアイシャに乱暴しようとしたところに反撃を受けたのだろう。


「おい!! ザーフィング!! そのメイドをこちらに渡せ!!」


 デミトルは怒りの声をジオルグへ叩きつけた。


「あ?」


 ジオルグの返答はただ一言であった。


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