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16ページ目 白魔術師の正体

「峰岸アカリ。きみだったのか……」


 白魔術師は、彼女だった。

 彼女はまだボクが黒魔術士だとは知らない。


「そうか……よりによって」

  

 ――魔術師同士が相対すれば殺るか・殺られるか。その二択のみですよ――

 ボクは、ノミコの言葉を思い出していた。

 この言葉がどこまで本当かわからないが、ボクが黒魔術師だと告白すれば、黒魔術に怒りを燃やすアカリとの衝突は避けられないだろう。

 だがボクもここで終わるわけにはいかない!


 彼女がボクの頭に手を掛けそうになったとき、その手を強く掴んだ。


「お前が白魔術師だったのか!」


「えっ、なに!?」


 彼女も突然のことで驚いたようだ。

 パッチリとした瞳がさらに大きくなった。

 ボクが強く握っているせいか、少し苦悶の表情を浮かべていた。


「なんでっ? なんでキミが“白魔術師”って言葉を知っているの?」


「キミが許せないと言った黒魔術師がボクだからだ」


 ボクの発言でアカリの目つきが変わった。

 ボクを魅了するあの綺麗な瞳は消え、明らかにボクを敵だと認識した殺気立った目をしていた。


「そう。キミだったのね……」


「クラマくん、離れてください!」


 ノミコの声で、とっさに手を離した。

 戦闘態勢に入ったのか、彼女の周りにオーラが見える。


「いいですか。白魔術には当たらないでください。黒魔術師にとって天敵の白魔術を何度も受け続けると大変なことになります」


「大変ってなにがだ?」


「精神を無理やり更生され、どうしようもないクソ真面目になります!」


「それのどこが悪いことなんだよ!」


「悪いに決まってるでしょう。クソ真面目ってのは文字面はいいですが、融通の利かない人間になるということです。人間、どんなものも適量というものがあります。クソ真面目は、何でもかんでも手が抜けず物事の優先順位がわからない。実直すぎてあそびや余裕がない。自分の意思より社会に沿った行動を優先する。極めて無機質な人間になるということです。これが人間の営みですか? ワタシは人の面を被った機械のように見えますがね。アナタはこんな人間になりたいのですか?」


「そっ、それは」


「しかも黒魔術師に白魔術を付与するっていうのは一種の劇薬なんです。さっき白魔術を施されて、ムチャクチャ効いたでしょう」


「あぁ。人生救われた気分になった」


「それそれっ! 外からの力で人生が救われるなんて、ただのまやかし。麻薬や洗脳となんら変わりありませんよ。最悪これまでのアナタでは居られなくなります」


「おしゃべりは済んだ? 二人とも」


 アカリの手がボクの体に触れそうになる。

 危険を感じたボクはとっさに飛び退いた。


「残念。苦しまないように一撃で決めようと思ったのに」


 アカリは、いつの間にか白い穴あきグローブをはめていた。

 グローブの甲には白い魔方陣が描かれており、そこからものすごい魔力を感じる。


「オマエ、ワタシが見えてるんですね」


「当たり前でしょ。私は“白”魔術師。魔術の申し子である以上、白であろうが黒であろうが、あなたの存在ぐらい見えて当然。そして――」


 再度、手を伸ばし掴みかかったアカリだが、ボクはとっさに横に避けた。

 しかし、その行動は無意味だった。

 アカリはどうやらボクを捕まえるわけじゃなかったらしい。


「ねっ? こんなふうにアンタを捕まえることも可能。と」


 ボクを盾に隠れていたノミコを捕まえたアカリ。


「痛い痛い! アイアンクロ―はやめて! 白魔術が流れて染みる!」


「ノミコ、瞬間移動で逃げろ!」


「ムリです! 白魔術で相殺されて魔術を解放することが出来ないんです!」


 ボクはとっさに指示を出したが、ノミコも現状打破できないようだ。


「さぁ、魔術書はこっちの手にあるし、キミもおとなしく観念しなさい! 黒魔術でクラスメイトを苦しめるなんて許せない!」


「何がだ! ボクはただ自分の身を守るためにこの力を手に入れただけだ。黒魔術を使った相手もボクをバカにしてきた奴だけだ!」


「黒魔術なんて外道の力を使ったところで、キミ自身は何も変わらないんだよ? なんで自力で解決しようと思わないの?」


「ボクの力だけでは、どうしようもないことなんて山ほどあるんだよ! あんたのような勝ち組にはわからないんだ!」


 努力で人生が好転するなんて考え方が、そもそも勝ち組目線だ。

 家庭的にも金銭的にも恵まれた者や類い稀なる才能を与えられた者、生まれながらにして運が良い者ほど、自分が()()()()()()()()()という恵まれている環境に居ることに気付かない。だから落ちぶれるのは、その人のせいなどと自己責任論を説く。

 アカリは、ボクのような劣等感だらけの人間の気持ちなんて分かりやしない。


「あんたが普段どれだけ満たされていて、天からどれだけのものを与えらているのか。知らないからそんなことが言えるんだ!」


「あたしが満たされた者や、与えられた者。ですって?」


 ボクの主張に声を震わせるアカリ。


「そんなの、あたしだって! あたしだって満たされない気持ちなんて知ってる! 欲しくても一生得られないものや、二度と与えられないものがあるって、ちゃんと知ってるんだからっ!」

 

 逆ギレをしたかと思ったら、黙り込んで下を向くアカリ。

 すんすんとすすり泣く音が聞こえる。


「なっ、泣いても無駄だからな! どうせ保健室のときと同じ泣きマネだろ!?」


 アカリの沈黙が続く。


「おいっ、何とか」


「うぅ……」


 ボクが声を掛けようとすると、アカリの手から力が抜け、ノミコをズルッと手放した。

 そして膝から崩れ落ちた。

 どうやら演技ではなさそうだ。


「もしかして貧血? こんな緊迫した場面で?」


「うっ、うる……さ……」


 アカリは反論する前に〈バタン〉と倒れ、意識を無くした。

 

 ボクは白魔術師に勝利した。

 こんな勝ち方、あり?


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