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第7話 新生活のはじまり


 ちょうど僕の背後から登った朝日が、目の前に広がる大草原を美しく照らしあげる。

 季節は、これから初夏に差し掛かろうという頃だが、それでもまだ早朝は冷える。吐く息は白かった。

 だけど、とても気持ちいい。思わず深呼吸すると、まさしく透き通った空気が僕の全身を駆け巡り、一気に脳を覚醒させた。


「しかし……昨日は大変だったな」


 慣れない寝床で少々固まってしまった体をほぐしながら、僕はつぶやいた。

 結局、ガストンたちに僕の「正体」がバレてしまったのをちょうどいい機会だと思った僕は、覚悟を決めてその場のみんなに自分の身の上と現在の状況を説明したのである。


「あり得ねぇだろ……そんなの……」


 ガストンたちは唖然呆然といった感じであんぐりと口を開けた。

 いや、彼らはまだいい。元々似たような身の上、すぐに事情を飲み込んで、僕にあつ〜い同情の眼差しを送ってくれた。


 問題は、シオだ。


「で、では……ソウガ様は本当に、この辺境にその……左遷……」

「そうそう」

「中将ではなく、上等兵として?」

「うん」

「極秘任務でもなんでもなく?」

「なんでもなく」


 矢継ぎ早の質問に答えて、次はなんだ? と身構えていた僕の目の前で、


「はふぅ……」


 どうも脳の処理が限界を超えてしまったようで、倒れてしまったのである。

 それからはもうてんやわんや。

 すぐさまガストンたちの縄をほどいて(もう二度と酔ってシオに絡んだりしないと約束させた)、散らかり放題だった部屋を片付け、シオをソファに寝かせて介抱し、男四人は床に雑魚寝。

 で、明け方のこの寒さで目を覚まして今に至るというわけだ。

 そろそろ、他のみんなも起きただろうか? と、僕が振り返ると、


「お、おはようございます! き、昨日は失礼しました!」

「英雄殿は朝もお早いですなあ」


 シオとガストンがふたり並んで立っていた。


「昨日も言ったけど、英雄とか中将とか、そういうのは一切やめてくれ。……シオは、もう大丈夫?」

「そうでしたな。失礼しました」

「わ、わちはもう全然元気です!」

「よろしい。じゃ、朝食にしようか」


 軽くふたりの肩を叩いて、僕は言った。

 と、シオとガストンが何やら微妙な空気を出して顔を見合わせる。


「どうしたの? ……ふたりとも、朝は食べない派?」

「い、いえ。そうじゃなくてですね……」

「食いもんが無いんですわ。なんにも」

「す、す、すみません〜! 本当は、昨日買い出しに行く予定だったんですぅ!」


 僕の目が点になった。

 着任初日から一騒動あって、やれやれと思っていたところに……これか。

 どうやら、二日目もまだまだ波乱がありそうな予感がするね。



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