9話 人間っていうのは、本当にくだらない嘘が好きなのね
大変申し訳ございません。ほぼ半年も開けてしまいやした、
何とか暇を作り少しだけ進めることが出来ました。
最後まで読んでくれたら嬉しいです。
「……ねえ、変態……」
「ん?……んん?……うん?」
昼飯もそこそこに、ぼちぼちマオのもとへ向かおうかと思っていた時、ネーマに突然背後から声を掛けられた。
俺は複雑な気持ちで返答をして首を捻っていると、ネーマはため息を吐きながら持っていた杖を通路の先に向ける。
「……マオ様がお待ちだよ。今日は具体的な話し合いがあったんでしょ……案内してあげるから、大人しくついてきて変態……」
「ちょ、ちょっとまて!!」
俺は我慢できずに思わずネーマの肩をつかんだ。ネーマは身体をビクリとさせていたが、俺はそんなことも気にせず発言を続ける。
「いくら何でもひどくないか!?確かに俺は変態だが、ある程度のモラルは守っているつもりだぞ……うん、守っているつもりだ!!」
「……ある程度のモラルを守っている人は、嫌がっているケールに対して何度もパンツの色を報告したりなんてしないのよ……」
「すいませんでした」
ごもっともである。はい。俺は流れるように土下座をする。
ここで俺は一つ疑問が浮かぶ。
「そのセクハラ発言……俺、ネーマの前でしたっけ?」
「……あなたの行動は、この城に来てから逐一確認しているわ……私を誰だと思っているの……?」
「あ、じゃあ……午前中の事とかも……」
俺がそう呟くと、ネーマは首を傾げた。
「……ドーラが殺戮峠に連れて行った事?……玄関を出るところまでは確認したけど、それ以降は見てない……」
「そ、そうか……」
俺は安心していると、ネーマは少しムッとした顔で睨みつけてくる。
「……何か見られたらまずい事でもしていたの……?」
「い、いや、そういうわけじゃないんだけども……」
確かに、見られたらなんと説明していいのかよくわからん。が、しかし、自称勇者がちょっとおっぱいが大きいお姉さんに大人の対応をされて照れていたなんてことが見られていたとなったら、なんとなく恥ずかしいし、馬鹿にされる気がするし……特にケールに……。
「……まあ、どうでもいいわ。いいから大人しく付いてきなさい……」
「お、おう……」
俺がたどたどしく返事を返すと、ネーマはローブを揺らしながら俺に背中を向け歩き出した。
俺は彼女の後ろ姿を見ながら……というよりは、ローブの隙間からフリフリと揺れている二股に別れた尻尾を見ながら歩き出す。
今更ながら彼女はネコマタなのだという事を再確認しながら、ふと城で聞いた昔話を思い出した。
確かネコマタ族は、魔族の中でトップクラスに魔術に優れている種族だと言われていた。ネコマタ族一人に対して、人間が何百人も相手にして戦わなければ勝てる相手では無い……と言われていて、ネコマタ族数百の軍勢が国一つを滅ぼしたという話もあった。それを先代勇者率いる何万の軍勢で、奇襲を用いて全滅させた、なんて言われていたような気がする。
「……つまり、ネーマは唯一の生き残りの子孫?」
「……何?」
「あ、いや……」
思わず口に出してしまった言葉に焦りつつ、俺は苦笑いをする。そんな俺の様子を見たネーマは、また深いため息を吐いた。
「……あなたが今考えていることは手に取るようにわかるわよ……下手にごまかそうとしないで、堂々と言ったらいいじゃない……」
「い、いや……だってさ……」
ネーマが唯一の生き残りなのであれば、ネーマに関係る家族などもとっくに死んでいしまっているという事だ。それも、俺達人間の手によって……。
彼女はまだ俺の事を嫌いみたいだし、この話題は避けるべきだったことなんじゃないかと思ったが、それを思わず口に出してしまったのは迂闊だった。
どんな返答が帰ってくるのか焦っていると、またまたネーマは深いため息を吐く。
「……私はまだあなたの事を本当に信頼はしていない……でも、あなたがマオ様に危害を加えるような心配はしていないわ……」
俺はネーマの瞳をじっと見てしまった。てっきり一番俺の事を殺したがっているような気もしていたため、この発言には意外だった。
なんだかんだで、彼女も俺の事を受け入れてくれているのだろうかと考えてしまい、頬がにやけてしまった。
「そ、そうかそうか。ネーマも俺の事を」
「……まあ、今マオ様に危害を加えようものなら、指一本で殺せるぐらいあなたが弱いのも、心配していない理由の一つではあるけれどもね……」
前言撤回。やっぱこいつが一番怖いわ。
俺は背中に冷や汗を掻くのを感じる。
「……あと、私はあなたが勇者であるかどうかすらも疑っているもの……本当の勇者でないなら、別に脅威でも何でもないものね……」
「ま、まあ……それについては俺も否定できないけど……確かに俺は、光魔法も使えないし、勇者の剣だって……」
「……違うわ、そう言う事を言っているんじゃないの……」
俺は彼女の発言に首を傾ける。俺が勇者の才能が無いって話をしているんじゃないのか?
俺が何気なく左手の甲を見た時、彼女が言葉を続けた。
「……あなたの魔力には……どこか違和感があるのよ……」
「違和感……?」
俺が聞き返すが、彼女はそれ以上何も話さなかった。これ以上聞いてよいものかもわからず、俺はモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、彼女の後ろを歩いていた。
二人で無言で歩くこと数分。気が付けば、マオの寝室の前に居た。
ネーマは俺に向かって振り向く。
「……それじゃあ、私はここで帰るから、マオ様の部屋で相談してきて……」
「あ、ああ……」
「……マオ様に変なことしないでね……」
「それはどうだろうか」
俺が冗談交じりにそんな発言をすると、彼女は杖を構えて炎の球を作り出す。俺は高速で頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
「……ん、分かればいいのよ……」
彼女が杖を収めると、炎の球は消えていく。そして彼女は俺に背を向け、歩き出した。
「……な、なあ」
思わず俺が声を掛けると、彼女はゆっくりと振り向く。
「……何?」
「そ、その……俺が言ったってしょうがないし……お前を不快にさせるだけかもしれない……でも、言わせてほしいことがあるんだ……」
俺がそう言うと、彼女は俺を見つめたまま、黙って俺に向き直った。
「人間たちの昔話では、ネコマタ族は滅ぼされたことになってる……でも、ネーマがここに居るってことは、そのほかの仲間や、家族なんかは……みんな、人間が殺したって事だろ……だから、俺から言われるのも不快かもしれないけど……本当にすまなかった……」
俺は彼女に頭を下げる。正直、俺が謝ったってしょうがないことは分かってる。それに彼女にとっては嫌な思い出で、この話をすることで嫌な思い出を思い出させてしまうかもしれない。それでも、これから人間と魔族が共存していくのであれば、まずここでケジメをつけておかなければいけない事だと思った。
俺は彼女の返答を待っていると、クスっと彼女は笑った。
「……人間っていうのは、本当にくだらない嘘が好きなのね……」
「……へ?」
予想外の返答に俺が変な声を出してしまった。彼女は構わず続ける。
「……その人間の物語は知っているわ。確か、勇者と何万もの軍勢で憎きネコマタ族を滅ぼしたって話よね……でも、そんなことは無いわ……だって、元々ネコマタ族は魔族の中でも1家族しかいなかったんだもの……」
俺はあまりの事に目を丸くしてしまう。そして、何とか浮かんだ疑問を彼女にぶつける。
「だ、だって、数百のネコマタ族が国一つを滅ぼしたって……」
「……ああ、それは多分、お婆様が得意だったミラーマジックじゃないかしら?……一時的に自分の分身を作り出して、それぞれが意思を持って行動できるっていう魔法……私は出来ないけど、確か魔王城の破壊計画を企てていた国に対してお婆様が使っていたような気がするわ……」
「………」
誰が勝てるんだこの種族に。
「……人間って、愚かだったんだな……」
「……あら、今頃気づいたの?……まあ、愚かではあっても……ひどい人ばかりではないってことが、あなたを見ればわかるわ……」
彼女はまたクスっと笑った。目を細めている姿を見て、そういえば彼女が笑ったのを見たのは今日が初めてだったような気がする、なんて考える。そんな笑顔に見とれながら、もう一つの疑問を彼女にぶつける。
「……お婆様っていうけど……それ、何年前の話?」
「……え?たしか……2百年ぐらい前?」
……そのころからお婆様を知っているってことは、彼女の実年齢って……。
「……あら、今頃気が付いた?あなたは私の事を子供だと思っているみたいだったから、面白くて何も放っておいたけれど、私はあなたの何倍も年上なのよ……?」
俺は彼女の顔を見ながら、よく考えれば気が付きそうな事実に一人で衝撃を受けていた。
そんな俺を嘲笑しながら、彼女は今度こそ俺に背を向ける。
「……まあ、あなたの気持ちは受け取っておくわ……人間と共存なんて、そんなうまくいかないと思うけどね……」
そう言いながら、ゆっくりとその場を離れて行ってしまった。
俺はあまりにたくさんの情報を受け止めすぎたせいか、彼女の笑顔を見たせいなのか、呆けたままその場を動くことが出来なかった。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
そんなあなたが大好きです。
仕事が忙しく、パソコンすら触れる機会が少なくなりつつあります。
ほとんど趣味でやっているとはいえ、やはり少しでも読んでくれる人がいる中で、投稿が遅れてしまうのは良くない事だと思っています。
何とか今後も空き時間を見つけ、小説の作成を頑張りたいと思っています。
……この小説、まだプロローグすら終わっていないような状態です。
少しでも楽しみにしてくれたら嬉しいです。