4話 ……いや、そういうのはちょっと……
ちょっと遅れてしまった。すいやせん。
最後まで見てくれたら嬉しいです。
魔王という存在が何処から来るのか。
答えは単純。分からない、だ。
実際、私が何処から来たのかなんて、自分自身が良く分かってない。
気が付けば、私は玉座に座り、目の前には魔王に使える特別な印を頂いた3従士が跪いていた。
「魔王様、よくお目覚めになりました」
「私達は~、魔王様に仕えし選ばれた3従士~」
「……あなた様の為なら、どのようなご命令にも従います……」
私は、自分の存在を理解する。
頭にすべてが流れ込んでくる。
私は、魔王だ。
私が玉座から立ち上がり、3人の前にゆっくりと歩いていく。
「さあ、魔王様……憎き人間どもを滅亡させましょう!!」
ケールが大きな声でそう言った。
「……いや、そういうのはちょっと……」
私がオドオドしながらそう返答した時の3人の顔は、今後忘れることは無いだろう。
「……誕生した第一声がそれかよ……」
「私達だってびっくりしたんだからね!!てっきり、すぐにでも軍を用意しろとか言われるものだと思ってたから……」
「まあ~、ケルちゃんは気を張ってたから特に驚いたでしょうね~」
「……魔王様誕生前に何回もトイレ行ってたし……」
「ご、ごめんなさい……」
「べ、別に魔王様が謝ることでは……ってコラ!ネーマ!?それ私のお肉!!魔法で持っていかないで!!」
「……悔しかったらケールも魔法で取ればいい……」
「私が魔法使えないの知ってて言ってるでしょう!?」
「まあまあ~、ケルちゃんには私のお肉あげるから~」
「な、なによ……なんか気持ち悪いわね……」
「さすがの私でも同族の肉を食べたいだなんて思わないものね~」
「……なんかごめん……」
今俺たちは、食堂に来ていた。
『魔族との懸け橋になる』
その話をしっかりと聞きたいと思ってはいたが、俺自身長旅で腹が減っていたため、まずは食事をしたいと申し出ると、魔王は快く受け入れてくれた。
まるで子供のようにガヤガヤと食事する3従士を眺めていると、魔王城に居る事を忘れそうになってしまう。
「勇者様、お食事は満足されましたか?」
「ああ、美味かったよ。コックにはお礼を言っておいてくれ……」
「はい!スケヤマさんもスケスギさんも喜ぶと思います!」
スケヤマ……スケスギ……?ああ、料理を運んでくれたスケルトンの事か?
俺がそんなことを考えながら水を飲んでいると、魔王が俺の口に布を寄せてくる。
「な、なんだよ……」
「いえ、勇者様……お口にソースが付いてますよ?」
魔王はクスクスと笑いながら、俺の口元を拭いてくる。見た目はまるで子供なのに、意外と中身は世話好きなのかもしれない。
「勇者様、夢中で食べてましたもんね~」
「ほんとよ、まるで子供みたい」
それはお前だ……と、ケールに言ったらまた怒りだしそうなので黙っておく。
俺は一度咳ばらいをして、魔王に向き直った。魔王は俺の口を拭いた布を畳んでいた。
「な、なあ……」
「なんでしょうか?」
「……魔族との懸け橋ってのは……その、端的に言えば、人間と仲良くしたいって解釈であってるのか?」
俺が率直な質問をぶつける。魔王は何か思いつめるような顔をしたのち、ゆっくりと話し始めた。
「……私が魔王として誕生してから数年間……お恥ずかしながら私……」
少し唇を噛んだかと思うと、魔王は真っ赤な顔で意を決したように叫ぶ。
「ず、ずっと引きこもっていまして!!」
「……は?」
俺がぽかんと口を開けたままにしているが、魔王は構わず話し続ける。
「しょ、正直、ケールに人間を滅ぼしましょうと言われた時、純粋にそういう行為が好きではないという気持ちもあったのですが……そもそも、あまり目立ちたくないと言いますか……」
「……ぷっ」
「へ?」
「はははは!!」
俺は笑ってしまった。魔王にとっては意外な反応だったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「なるほどな……つまり、俺が勇者に選ばれる前……俺が生まれた時からこの十数年間、俺達人間が平和だったのは、お前の優しい性格に合間見合って、お前が人一倍……いや、魔族一倍の恥ずかしがり屋だったからなのか」
「い、今は改善しているんですよ!?こうやって勇者様とも話せていますし!!」
魔王が慌ててそんな事を言う。
「……でも魔王様、勇者より魔族の方が安全で話しやすいはずなのに、私達に初めて会った時より楽しそうにしてる……」
ネーマのその一言で、魔王の顔は更に真っ赤になった。
「おーおー、なんだなんだ?嫉妬か?3従士より勇者様の方が信頼されているってのが気に食わないのか?」
ちょっとした意地悪のつもりでそんな事を言ってみる。すると、ケールは明らかに涙目になり、ネーマは俺に殺気を放ちだす。ドーラは何故か微笑んでいるが。
「べ、別に皆さんを比べているわけでは……、それにネーマはそういいますが、皆さんだって勇者様に危害を与える気はなかったんでしょう!?」
魔王が慌ててそんなことを大声で言った。
「……ま、まあ……」
ケールが冷や汗を流しながらそう返事をする。
「おいケール、俺と目を合わせろ」
「な、なによ!気軽に魔王様に触れようとするから攻撃しただけじゃない!!」
「俺のは悪戯心だ!分からんのか、可愛い子に悪戯したくなる男の気持ちが!!」
「か、かわ……」
魔王が何か呟いたが、俺は気にせず話し続ける。
「俺は魔王が演技に失敗したあたりから感じた!可愛いってな!!そして落ち着いた今、改めて魔王の姿を見た時、それが確信に変わった!!禍々しい角があるのに愛らしい顔付!!華奢でこじんまりとした小動物のような体なのに似合わないマントを翻している姿!!サラサラで一生触っていたいと思わせる美しい白い長髪!!そして何よりその吸い込まれそうなほど綺麗な赤い瞳!!こんな魔王に誰が討伐などしようと考え……」
そこまで話したところで、俺の肩に手が置かれる。
振り向くと、ドーラがニコニコと笑いながら人差し指を口元に付けていた。
「気持ちは分かるけどね~、ちょ~っとやめた方がいいかな~」
そう言いながら、ドーラが指した方向を見る。
魔王が真っ赤な顔で煙を出していた。いや、比喩でもなんでもなく、ホントに。
「お、おい!大丈夫か!?」
「あう……あう……あああ……」
魔王の精神に24のダメージ!!
目をグルグルと回している魔王を抱える。
「今日の会議は中止だ!こいつベットに連れて行くぞ!!」
「ちょ、ちょっとあんたねえ!?」
「ま~ま~ケルちゃん落ち着いて~。勇者様、私がご案内しますね~」
「ああ!頼む!!」
フワフワと漂う居ながらドーラが先行してくれる。俺は魔王を抱えたままドーラに付いて行く。
抱えている魔王は、未だに目をグルグルと回していた。
……この魔王は、大丈夫なんだろうか……。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
そんなあなたが大好きです。
次も頑張るぞい!!