11話 紐パンだな!!
すいませんでした。
最後まで読んでくれたら嬉しいです。
ひんやりとした空気にたまらず目が覚める。
俺はゆっくりと目を開け、体を包んでいたローブから顔を出した。
「……寒すぎる」
俺は立ち上がり、大きく体を伸ばした。眠い目を擦りながら、自分の吐いている息がほんのりと白いという事を把握する。
「季節は春だけど、まだまだ夜は冷えるな……」
俺は左右を見渡す。通路は数本のランタンによって照らされているだけ。というか、なんで未だに俺は通路なんかで眠っているんだろうか。
「そろそろ俺に部屋を与えてくれてもいいんじゃないだろうか……」
そんな小さな愚痴をこぼしつつ、俺はこれ以上眠れる気もしないため、暇つぶしに魔王城を散策でもしてみようと思った。
広すぎる魔王城は、未だに自分が何処にいるのか分からなくなる。いい加減城の構造自体はしっかりと把握しておきたいものだ。
そう思いながらしばらく通路を歩いていると、月明かりに照らされた中庭が見えた。空に綺麗な月が見える。
俺はぼんやりとした思考のままで、何気なく中庭に入る。
空を見上げると、魔王城に居るという事を忘れてしまうほど綺麗な月と星の群れが見えた。
「……俺、何やってんだろ」
別に俺はロマンチストじゃない。綺麗な月を見て、それに心を奪われるなんてことは起こしたことなどない。むしろここに居れば、体が冷えてしまうだけだ。
足早に帰ろうと思った時、視界の端に黒い影が見える。改めて影をじっくりと見ると、そこにはケールの後姿があった。
「こんな時間に何してんだあいつ……」
いや、それは俺も同じか……。そう思いながらも、こんな冷える夜にここに居たのでは、体を壊してしまうだろう。……いや、3従士がそんなことで風邪なんてひくものなんだろうか……。
俺は中庭に座り込んでいるケールに近付きながら声を掛けた。
「おーい、ケール」
彼女は振り向こうとせず、何かを作っている。後ろを向いているため、何をしているのか分からないが、それにしたって異常な集中力だ。
「……おい、ケールってば」
彼女の真後ろまで来て再度声を掛ける。彼女の耳と尻尾が、ぴくりと反応した。
そう思った時、彼女はゆっくりと俺に振り向いた。
「……あら」
俺は彼女の目を見て違和感を覚える。彼女はいつも吊り上がった目尻をしている。常に俺に好戦的で、何かと目が合えば難癖をつけてくるような彼女は、今に限ってはそんな行動をしようとしてこなかった。
「……ケール?」
俺が名前を呼ぶと、彼女は「ああ……」と声を出してクスっと笑った。
「そうね、私ね、私はケール……あなたが勇者様よね」
「あ、ああ、ていうか今更そんな……」
俺は少しだけ動揺しながら答えると、彼女はゆっくりと立ち上がった。手には中庭の花で作られたであろう、花の冠を持っている。
「あら、初対面の人間に対して、確認を取るのは悪い事なの?」
「いや初対面じゃ無い……だろ……」
そう答えながら、俺自身も、彼女と会うのは初めてのような感覚になる。俺は少しだけあとずさった。冷える夜だと思っていたのに、俺は手に汗が滲んでいた。
「……お前は、誰だ?」
「私はあなたに二回ほど会っているけれども、あなたは覚えていない?」
「な、何言ってんだよ、お前とはいつも……」
「……あなたが見た下着は何色だったんでしょうか?」
「……え、えっと……あっ!?」
俺は思い出す。ケールに蹴られた時。俺は彼女が早すぎて残像が見えているだけだと思い込んでいたあの攻撃を。
「い、いや、だとしても下着は俺の願望だと思っていたんだけど……」
「あら、制欲求に対して正直な男は嫌いじゃないわよ。ちなみに、一回目に私を見た時は黒、二回目は紫の~?」
「紐パンだな!!」
「そう、やっぱり会ってるじゃない」
彼女はクスクスと笑う。垂れた目尻に溜まった笑い涙を拭きとりながら、彼女は俺に向き直る。
「……私はね、ケールだけど、ケールじゃないのよ」
「………」
「ケールは本当にケールだけ、私もケールの一部ってだけで、魂が存在しているだけ」
「な、なんか難しいな……」
「理解できなくてもいいわよ。あの子と……ケールと仲よくしてくれていれば、私は問題ないわ……。私の存在なんて、あって無いようなものなの」
そう言った彼女は、目線を逸らして遠い目をしている。俺はまだ半分も理解できていない頭で、なんと声を掛ければいいのか考えていた。
「……お前は、ケールの分身ってことで良いのか?」
「……うーん、みんなも分身っていうけど……ちょっと違うわね、魂も肉体も持っているけれども、それはケールの力の為に存在していると言えばいいのかしら」
「……どういうことだ?」
「まあ、いいじゃないこの話は……」
彼女は小さくあくびをしながら無理矢理話を終わらせる。俺は何も言う事が出来ない。
「さて、そろそろ眠らないと、あの子の肌を悪くしてしまうかもしれないわね……」
彼女はゆっくりと立ち上がると、花の冠を俺に手渡してくる。
「それじゃあお休みなさい、勇者様」
そう言いながら俺に背を向けて城の中に入っていった。
俺は彼女の言葉が頭から離れない。
『あの子と……ケールと仲よくしてくれていれば、私は問題ないわ……。私の存在なんて、あって無いようなものなの』
俺はその時の彼女の表情を思い出す。
「あんなこと言う癖に、なんで寂しそうな顔するんだよ……」
心のモヤモヤを解消できないまま、俺はその場に立ち尽くしてしまった。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
そんなあなたが大好きです。
本当にニートになりたい……。




