1話 魔王は聞いていた話とはかなり違うようで……
新作出来やした。
最後まで読んでくれたらうれしいです。
ひんやりとした空気が肌に絡みつく。
どこまでも続いているのではないかと錯覚してしまうほど長い通路に、コツコツと自分の足音だけが響いていた。
俺は今から、魔王を倒す。
その思いだけが、俺がここに居られる気力を保っているのだと思った。
早く家に帰りたい。そして、俺は憧れの……いや、そんなことは後にしよう。
今はただ、やらなければならないことに集中する。
気が付くと、俺の目の前に大きく禍々しい扉があった。
一度足を止め深呼吸をする。-
いくら旅の道中があんなに楽だったとしても、魔王が簡単に倒されるなんて思ってもいない。
それに、魔王側近の3従士も見かけていない。
……おそらく、この扉の向こうで待ち構えているのだろう。
相手は4人、俺は1人。この圧倒的不利な状況でも、俺は絶対に帰らなければならない。
俺は意を決して重い扉に手を掛けた。
ゆっくり、ゆっくりと扉が開く。予想以上に重かった扉を開けたまま、俺は前に歩みを進める。
「……誰も……居ない?」
そう呟いた時、俺の見ている壇上に、音もなく影が4つ現れる。
あまりのことに一瞬たじろいでしまう。ついさっきまで影も形も、気配すらもなかったのだ。瞬きをしたと思った瞬間に現れたその4人分の影に、俺は背筋が凍るような気分を感じた。
「……勇者よ、立ち去れ」
俺が黙って眺めていると、影から口々に呟いてくる。
「……あなたは~、ここに来るべきではないの~……」
「……お前に……私たちの考えなど……到底理解できない……」
あまりの殺気に、俺は反射的に身構え大声を出す。
「う、うるさい!!魔物共め!!お前たちを消さなければ……」
「ひっ!?」
……は?
俺の聞き間違いだろうか……今絶対誰か怯えた声を上げたような気がするのだが……。
「ちょ、ちょっと魔王様……もうちょっと我慢してください……」
「だ、だって……あの人、私たちを消すって……」
「とりあえずビビらせて帰ってもらおうって作戦だったじゃないですか!もっとビシッと!魔王らしく!」
「そうですよ魔王様~、勇者様もいい感じに驚いていたようですし……」
「……この影の演出は私のおかげ……感謝してみんな……」
「もう分かったから!ほら魔王様、あと一押しですよ!!」
「……う、うん」
いや、まてまて……。影の連中がコソコソと話している声がしっかり俺のところにまで聞こえているんだが……聞こえてないと思ってる?
「……ゴ、ゴホン!!……勇者よ……」
「あ、はい」
3人分の影が跪くような動作をしたかと思うと、玉座に座っていた影がゆっくりと俺に歩み寄ってくる。
マントを翻し、月明かりに照らされた赤い瞳が、俺をギロリと睨みつける。
「私は、弱い者いじめなど好きではない……勇者が無様に死ぬ姿など、我らが見たとて、何も面白くないのだ……分かったら大人しくおまえの故郷に……」
「勇者チョーーーーーップ!!」
俺は目の前に来た魔王に飛び掛かった!!
「ひゃあああああああ!!!???」
「「「魔王様―――――――!!!???」」」
魔王(?)は俺の攻撃に泣きながらうずくまると、3従士と思われる影が俺に向かって飛んでくる。
次の瞬間俺は、
「魔王様を泣かすなああああああ!!!」
「ぶおおおおお!!??」
3従士の一人に飛び蹴りをくらった。
勇者の俺に3のダメージ!!
吹っ飛ばされた俺は、チカチカとする視界の中で、ゆっくりと立ち上がる。
「も、も、もう、もう無理です!!怖いです!!明かりをつけてくださいいいい!!!」
魔王(?)はめそめそと泣き出してしまった。
「わ、分かりましたから!泣かないでください!」
慌てて3従士の一人が指を鳴らす。
すると、闇で染められていた空間が、優しい明りで灯される。
そして俺の視界の先に居たのは、真っ白な髪に、俺より頭一つ小さく華奢な身体つきで、未だに泣きじゃくる魔王(?)の姿と、それを慰める3従士の魔物たちの姿だった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
そんなあなたが大好きです。
内容は短めですが、とりあえず話の冒頭だけでも早く上げたいと思い出させてもらいました。
可能な限り短い期間でどんどん続きを上げていけたらいいなあと思ってはいますが……努力をしていきたいと思います。
ぜひ次も見てください!