~悪役令嬢~
私、天舘 桜良はゲーム好きな普通の高校2年生。
1つ他の人と違う所を挙げるなら、恋愛対象が女性ということだ。
外見は普通、成績も普通、運動神経も普通のThe 普通の人間なのに、何故そこだけ普通では無いのか、甚だ疑問である。しかしそういった感情を抱く相手が異性でなければ異常という考え方を持つこと自体、既に異常なのかもしれないが。
なんて小難しいことを考えて歩いていた、その時だった。腹部に熱を感じ、気がついた時にはその熱は激しい痛みへと変わっていた。
「キャー!!人が刺されてるわ!!救急車!!!」
甲高い女性の叫び声が聞こえる。
「五月蝿いなぁ...」
そう呟き、私は意識を失った...
暫く気を失っていたのだろうか、目を覚ますとやたら豪華な装飾品に囲まれたフカフカのベッドの上だった
一体ここはどこなのだろうか。だるい体を何とか起き上がらせる。
『あれ?私こんなに胸でかかったっけか』
微妙な体への違和感を感じつつも、周りを見渡しベッドから降りようとした時だった。部屋の扉が開き、アニメの世界でしか見たことがないようなメイドさんが部屋に入ってきた。
「目覚められたのですね!?良かった...このまま亡くなれてしまうのではないかと...毎日毎日...心配で...」
結構可愛い顔をしたメイドさんが泣きながら私に抱きつきそういった。
「あの...貴方は...??」
「そんなお嬢様、私の事をお忘れですか!?まぁこの屋敷には召使など何人もおりますものね...お嬢様からみれば私なんて召使Dぐらいなんですよね...」
『いや考え方卑屈すぎない!?というか本当に誰だこの人...』
「シエラお嬢様にとっては召使なんてそこら辺の蟻みたいな存在なんですよね...」
「い、いやそんなことないですよ!?ん?待って今なんて言いました!?」
聞き覚えのある名前に、咄嗟に聞き返してしまった。
「召使いなんて...そこら辺の蟻...」
「じゃなくてその前!」
「シエラお嬢様にとっては?」
思い出した。見たことがある部屋の内装にこの服。部屋の隅に置いてあった鏡へ一目散に駆け寄った。
そこに映っていたのは天舘桜良などではなく、自分が熱中してプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢の姿そのものだった
途端に激しい頭痛と目眩に襲われ、私はまた気を失った