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転送術士候補生II  作者: よのもり せいう
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その5 新しい依頼(Part. H)


「…ゴルトシュタットからの依頼って、ありますか?」


二人が秘密の会議を終えて応接室から出てくると、先生は唐突にそう言った。

受付の近くにいたので、急いで依頼書のリストをめくってみる。

すると一件、該当するものが見つかる。 


「転送アイテム納入の依頼が来ていますけど…」


「それを受けましょう。」「えっ―(๑ºдº๑)!?」


ゴルトシュタットといえば、鉱山の街。どうして急に鉱山の話になったのかな?

もしかして、お姫様を脅かす悪い魔物ってそこにいるのだろうか。


「ハーミアさんはそこで依頼をこなしてください。私は暇を見てルーシェ君と鉱山に行き、そこでガイアスタンピードと戦います。」


「ガ…」「-ガイアっ!?そんな危険なところになんぞ連れていけんわいっ!!」


名前を聞いて驚いたのは、眠りこけていたライ君。

毛を逆立てて、あんまりいきなり怒るから、びっくりしちゃったよ。


ガイア級って、絶対に近づいちゃいけないって学校で習った気がする。

確か、その魔物の種の中でも最大クラスっていう意味を持つ級の名前だったから、ガイアスタンピードは、一番強いスタンピードってことなのかな?

でも、スタンピードってどんな魔物だったっけ…( °-° )?


「大丈夫、彼女は鉱山の中には入りません。ハーミアさんはゴルトシュタットへの行路を覚えることができますし、私は彼女の修行を見る名目で出張ができ、ガイアスタンピードの遺骸の情報を入手することができます。そしてルーシェ君は毒と牙を使った対龍特攻の武器が得られます。」


何だか怖そうな報酬の話だけれど、先生達は、それがほしいということなのだろう。


ライ君は、その後も何度も安全性を確認して、やっとしぶしぶ了承する。

心配してくれてありがとう。


「ディアスさん、ハーミアさん、ライト君、同行お願いします!」


「わわっ!あ!はいっ!!」


ようやく話が落ち着くと、にっこり微笑む眩しい勇者様。

よく考えてみるとこの任務、勇者様と一緒だということが分かって、その途端、胸がギュッと苦しくなるのを感じた。



その5 終



ひとこと事項


・ゴルトシュタット

 ジルオール南部にある、鉱山資源の豊富な街。屈強な鉱夫達の存在や武器生産技術の高さから、ゴルトシュタット領主は国内での発言権が強く、自治の色も強い。


・絶対に近づいてはいけないクラスの魔物

 王国が制定する魔物の等級の1つ。ガイア級は同種の魔物の中でも「世界最大の」種に冠する名称で、軍を上げて戦わなければならない魔物が多く含まれる。


・ガイアスタンピード

 ガイアの名を冠する強大なムカデ。伝承に依れば、古来よりムカデは龍の天敵とみなされることがあり、ゴルトシュタット周辺のスタンピード種は同じ大きさであれば龍種を屠るともいわれている。



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