その3 出迎え(Part. H)
「先輩、私、髪とか大丈夫ですかっ?くさくないですかっ(๑°ㅁ°๑)!?」
「大丈夫、むしろシャンプーくさいまであるから…(ˉ ˘ ˉ; )」
勇者様がやってくるという夕方。
第5支部の受付で、できる限りの身支度をして彼の到着を待っていた。
ちなみに支部長は、今日はお休みである。
「先生はっ?私、大丈夫ですかっ―?」
「え、ええ…実にお綺麗ですよ;」
もう一度鏡の前で前髪を整えても、やっぱり心は落ち着かない。
授業中、さっきは悪い態度とってしまって申し訳なかったかな…。
応接椅子に座る先生にの姿に、ふとそんな思いがよぎる。
でも先生は多分、私が落ち込んでいる理由を誤解している。
勇者様は先日、悪い魔物からお姫様を助けるためにここへ来たと言っていた。
お姫様とは、ブラウテューベンで救った第三王女様のことらしい。
キラキラ輝く彼の瞳は情熱を帯びていて、恋の色を秘めていた。
もちろんお姫様に対抗しようだなんて思ってもいない。
でも、憧れの人が他の方のことを楽しそうに話す姿が、単純にショックだった。
うう、頭がぐるぐるする…(৹˃ᗝ˂৹)
「ごめんください。」「…あっ!勇者様っ!」
「こんにちは!」
そうするうちにドアのチャイムがカランコロンして、ルーシェ様が入ってきた。
金髪碧眼の美しいいでたちに、オリヅル先輩もイケメンねえと驚いている。
私達に爽やかに挨拶をすると、彼は先生を見つけて笑顔になる。
「あ!ディアスさんっ!会いたかったです!!」
寝転ぶライ君も飛び起きるような明るい声で、暗い顔の先生に駆け寄った。
その3 終
登場人物・事項
・転送術士協会の人員
王都の第5支部にはエーレンツィアやオリヅルの他にも、数名の転送術士が在籍し、曜日や時間帯ごとに勤務をしている。
・ルーシェ
最近、王国の英雄の一人に数えられることとなった冒険者の青年。ある時、ブラウテューベンの果樹園の夜警任務をしていた折に、街へと向かうアンデッドの群れを発見し、これを撃破した。その際に、攫われていたジルオール第三王女の救出にも成功したことで一躍有名となった。




