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転送術士候補生II  作者: よのもり せいう
20/24

その20 餞別(Part. D)

あれから私達は宿に帰り、食堂で一人晩酌に預かっていると、討伐隊の勇者と小鳥がやってきた。


龍特攻の武器を有し、実力的にも成長した勇者。

一族の恨みを晴らすため、再び世に戻ったガイアスタンピード。

あとは、こっそり教えたブロセルニルの弱点。


これだけ揃えば大丈夫でしょうか。


「グ…いや、生命術士よ。」


「私は…」


名前については緘口令を布かせてもらったものの、職名についても死霊術士だと直そうとすれば、小鳥に読まれて返される。


「命に寄り添い、それを復元する奇跡も、それを弄ぶような、よからぬことに使われてしまう。技術は無色、初心は輝きを放っておっても、気づけば変わり果ててしまうものか…。」


その言葉は、自分にはどうにも否定できそうにもなかったので、話題を戻す。


「…もう出発するのですか?」


「はい!いつブロセルニルが姫を襲うか分かりませんので。」


「…世話になった。」


「お互い様ですよ。…勝ってきてくださいね。」


勇者の一行に餞別代りに一袋のアイテムを渡す。

それは夜間警備用に配布されたワープアイテムの内、うちの教え子が作ったもの。


「数は限られていますが、品質は保証します。頑張ってくださいね。」


「あの娘にもよろしく伝えてほしい。夜食、ムカデの口にも合った、とな。」


「ええ、お伝えします。」


討伐隊はアイテムを受け取ると、少女を思い出して幾分緊張を緩める。

それから彼らはテーブルに置き土産を残して、朝日を待つことなく宿を発った。



その20 終

 


ひとこと事項


・夜間警備用のワープアイテム

ディアスは日々の夜間警備でのワープアイテム配布の際にハーミアが納入したものを見抜いて選び、それを使わずにとっておいたようだった。


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