その19 できること(Part.H)
ダウゼンさんとの会話に一区切りつけると、先生は大きく呼吸を整えた。
その珍しい行動から、先生の緊張の程が伺えた。
そうして今度は、勇者様に向き直る。
「魔物の生き方は自由です。しかし、ブロセルニルはあまりにやり過ぎました。…本来、龍の始末は龍がつけるべき。ですが、他種族を守るために同族を弑すことは、龍の世界でも憚られるのです。」
どういう意味だろう…。
そう思っていると、多分私に教えてくれるためではなく、勇者様に意味の取り違えがないようにという意味で、ライ君が分かりやすい補足をしてくれた。
「…いくら嗜虐的な理由とはいえ、虫や魚や鳥といった他種を屠りすぎた人間を、同じ人間が手を下して良いかと言えば、同族内で物議を催す、ということじゃな。」
勇者様は二人の発言を聞いて、静かに頷く。
「今回の件は、元々はボクからお願いしたことです。皆さんはそれに応えて、想像以上のことをして下さいました。ですから、後のことはお任せください。」
深々と頭を下げる彼の肩に、小鳥が止まる。
勇者様に本当に心強い味方ができてよかった。
でも、なぜかそこで場が静まり返ってしまったので、せっかくの機会だと、私は意を決して手を挙げた。
「…あのう、ところで先生って、ドラゴンだったんですか( °-° )?」
皆がぽかんと口を開けて、こちらを見てくる…!
分かってます、分かってますとも!話をちゃんと聞いていたか?って顔をしないでください―(৹˃ᗝ˂৹)!!
でもでも、私にとってディアス先生は、初めて会った時の姿、白衣に眼鏡の人間の姿で焼きついていたから、話の流れで知った風にされても困るのだ。
人間と龍、正体はどちらなのか。
はっきり本人の口から聞かせてほしい。
なんて思っていると、皆が笑顔で、私の髪をわしゃわしゃにした。
その19 終




