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転送術士候補生II  作者: よのもり せいう
17/24

その17 修行を終えて(Part. H)


特訓が始まって一週間。

午後は転送術士協会でお手伝い、夜は先生達との修行と、忙しい日々を送った。

今の私なら怪獣対決のとばっちりを避けながら、夜食だって配れちゃいます。


「ダウゼンっ!!」


「―!!」


絆を深めた大ムカデが龍の懐に飛び込み、口から毒液を噴射する。

同時に全身で龍の足元に巻き付いて動きを封じる。


すかさず勇者様はムカデを蹴って跳ね、龍の翼の付け根を斬る。

飛べなくなった龍は口から火を吐こうとする。

けれどもムカデの顎に首を噛まれて、こっちに噴射してしまう。

嫌な予感がしていたので、それをぴょいっと転移で避ける。


頭を位置を戻そうとする龍の目に、勇者様の剣が刺さる。

回復するとはいえ、相手も生き物だから、やっぱり可哀そう。

痛そうなシーンでは、どうしても目を瞑ってしまう。


「…ここまで!…だいぶ練度が上がりましたね。」


傷ついた目を治しながら、龍の姿の先生が号令する。

それと共にダウゼンさんも小鳥となり、勇者様も剣を納める。


勇者様はこの一週間でもっともっと強くなった。

ダウゼンさんも、一緒に過ごす中で、どこか性格が丸くなった。

連係も、龍の動き対策もばっちりだと思う。


これなら邪龍退治だってきっと大丈夫…!

そう思っていると、小鳥が私の肩にとまってお辞儀した。


「手合わせ感謝するぞ…グリムバース。」


「(๑ºдº๑)!!」


私は小鳥が頭を下げたことに驚いていたのだけれども、勇者様達はその名前に驚いていたようで、それを察すると、ダウゼンさんはやれやれと肩をすくめていた。



その17 終



ひとこと事項


・グリムバース

かつての勇者と共に世界を駆け巡り、人間に仇なす多くの敵を打ち破ったという伝承の残る龍。しかしあるとき、彼の働きで利益を得た国の裏で、そうでなかった国の恨みを買い、討伐されたという逸話が残されている。


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